あなたのお米の炊き方、時代遅れかも!新常識をマスターしよう【象印監修】

新常識はコレ!令和の炊飯事情

古くから日本人に親しまれているごはん。お米づくりをしている農家、精米機や炊飯器を販売しているメーカーなど、あらゆる職人の努力によって年々お米のおいしさは向上しています。そんな米業界の発展により、じつは長年伝えられてきた “ごはんの炊き方” にも変化があるそう。

この記事では、大手メーカー 象印マホービン株式会社で、炊飯器の商品企画を担当する三嶋一徳さんに下準備方法から炊き方まで、令和の炊飯事情を教えてもらいました。

ーー最近の炊飯器って機能性がとにかくすごいですよね。ここまで発展したのにはどんな理由がありますか?

三嶋一徳さん(以下、三嶋) 2006年頃に10万円を超えるような高級炊飯器が普及して話題になり、そこから年々炊飯器のクオリティが上がっています。メーカーの強みを生かしたり、新しい技術に挑戦したりしているので、最近の炊飯器で炊くごはんの味は、土鍋やかまどで炊いたごはんに引けを取らない仕上がりです。

炊飯器の進歩だけでなく、お米も進歩しています。常識的な炊き方は、何十年も前からある生活の知恵なので、変わっていないものもあれば、不要な工程が結構あるかもしれませんね!ちなみに最近の炊飯器は、2万円前後のものでもかなり高性能です。

ーーたしかに、性能が良いうえに低価格なものも増えましたね。せっかくなら炊飯器の機能をしっかり使っておいしいごはんが炊きたいです!

さっそく、下準備から炊き上がりまでで気になることをお聞きしたいと思います。

1. お米はギュッギュとしっかり研ぐべき?正しい下準備方法は?

三嶋 米をギュッギュと研ぐのはNGです!押すようにしっかり研いだり、ザル研ぎをしたりするのはひと昔前の方法。お米の精米技術が十分発達する前は、精米の精度が低くしっかりとぬかを取る必要がありましたが、最近のお米は精米技術が高まっているので、強く研ぐ必要はなく、やさしく研ぐことが大切です。

画像のように、やさしく研ぐのが重要。画像のように指をたててシャカシャカと音がでるくらい、やさしく混ぜましょう。

研ぎ方としては、「すすぎ」と「洗い」に工程が分けられます。ちなみに、ここの工程はおいしく仕上げるためにとっても大切な作業です。

すすぎ~洗いの工程

〈すすぎ〉
1. たっぷりの水をお米の入った内釜(またはボウル)に入れ、大きく2~3回かき混ぜる
2. 水を素早く捨てる

〈洗い〉
3. すすぎの水を捨てて、お米だけの状態でシャカシャカと30回ほどかき混ぜる
4. 3にたっぷりの水を入れ、2~3回ほど大きく混ぜたら水をすぐに捨てる
5. 洗いの工程 3~4を何セットか繰り返す ※

※ 洗いの工程 繰り返し目安:4カップ未満……2セット、4カップ以上~8カップ未満……3セット、8カップ以上……4セット

〈仕上げ〉
6. 仕上げに1~2でおこなったすすぎを2セット繰り返す

手早く、やさしくが一番のポイント

三嶋 とにかくスピード感が大切です。1~6の工程を10分以内でおこなうとおいしく炊けますよ。とくに最初に入れる水は吸水されやすく、ぬか臭が戻ってしまうので、手早く混ぜて捨てましょう。

ーー水の温度はどのくらいがベストですか?

三嶋 ベストな温度があるわけではないため、35℃以上のお湯を使用しないようにすれば大丈夫です。高い温度の水で洗うと、本来吸水するべき最適なタイミングの前にお米が水を吸い、お米本来のおいしさを引き出すことができなくなってしまいます。

最近の炊飯器なら内釜で研いでも大丈夫!

ーーザル研ぎがNGということは、ボウルを使うべきですか?

三嶋 ボウルでも良いですが、内釜で混ぜてしまって問題ないです。昔は、「内釜で研ぐとコーティングを傷つけて米がくっつきやすくなる」という常識がありましたが、ここ10年くらいで内釜のコーティング技術も進歩しました。やさしく研げば、かき混ぜたくらいでは傷つかないので大丈夫です。(※)

内釜で研ぐことより、フォークや小皿などを内釜に入れてシンクに置いておくほうがNG。小さな傷がつき、これが原因で炊飯器をダメにしてしまっている方がじつは多いんですよ。

(※)メーカーや商品によって異なる場合がございます。お持ちの商品の説明書に従い、使用してください。

2. ザル上げや浸水など、手間をかけるべき?

三嶋 お米が洗えたら、洗いに使った水を捨てます。お米がこぼれないように水切りをしましょう。

ーーザルに上げてしっかり水を切ったほうが良いですか?

三嶋 しっかり水切りしなくても、ある程度水切りできればいいので、ザルを使う必要はありません。どうしてもそのまま水が切りにくいという方は、洗水器を使うと楽ですよ。

浸水で仕上がりは変わる?

ーーあとは水を入れて炊くだけですね!研いだお米を一定時間水に浸たし、水を吸収させる「浸水」もおいしいお米を炊く方法として知られていますが、浸水で仕上がりは変わりますか?

三嶋 まず答えからお伝えすると……、炊飯器でごはんを炊くなら浸水は必要ないんです!最近の炊飯器は、浸水の工程が組み込まれています。逆に浸水をしてしまうと、水分量が多くなりベチャベチャになることも。

また、浸水と同様、炊飯後の「蒸らし」も炊飯器が自動でおこなうため、炊けたらすぐに混ぜてお米に空気を含ませてあげましょう。

3. 水の種類によって仕上がりは変わる?

ーー使う水の種類によっておいしさは変わりますか?

三嶋 やはりお米は吸水する食材なので、水にこだわるとおいしさがアップします。おすすめは弱アルカリ性の水ですね。弱アルカリ性の水は、お米表面のタンパク質を細かく分解するため、お米の中心まで水が浸透しやすくなります。炊飯時に熱がよく伝わり、ごはんのα化が促進されることで、甘みのあるごはんに仕上がりますよ。

弱アルカリ性の水がない場合は、浄水器があるようでしたら、水道水より浄水器を使ったほうが絶対に良いです。もちろん水道水でも問題はありません。

氷を入れるとおいしく炊けるって本当?

ーー「炊くときに氷を入れるともちもちになる!」って聞いたことあるんですけど、本当ですか?

三嶋 現在の炊飯器ですと、氷を入れても炊き上がりに違いは出ません。ごはんをおいしく炊く秘訣として「はじめちょろちょろ中ぱっぱ…」というわらべ歌がありますが、炊飯器がなかった時代はこの歌のように最初は温度を低く、そこから徐々に沸騰工程へ移行させることがむずかしかったので、氷を入れていたようです。

ただ、現代の炊飯器ならその辺りの温度調整は自動でやってくれるため、氷を入れてもあまり意味がありません。大体30年以上前からです。

4. お米の種類によって水分量調整は必要?

ーー新米は水分量が少し多い、一方で古米は水分量が少し少ないと聞いたことがあります。水の量は調整したほうが良いのでしょうか?

三嶋 仰るとおり、新米と古米によって水分量は少し違います。ただ基本的にはメモリ通りでOK。最近の炊飯器は硬め、やわらかめなどが選べるので、そのあたりの調整は炊飯器に任せてしまいましょう。

象印の炊飯器を例にあげると、 “ややしゃっきり” 、“もちもち” といった細かい炊き分けや、好みの硬さや粘り気を学習する“わが家炊き” という機能を搭載した商品もあります。

おいしく炊く方法は炊飯器が知っているので、一度炊いてみて「新米をもう少しやわらかく食べたい」なら、メモリよりほんの少し多めに水の量を増やすなど、ちょっとだけ手を加える程度が良いと思います。

5. ほかにおいしく炊くポイントはある?

三嶋 これは令和版というより、今までと変わらない方法ですが「計り方」「保存方法」「ほぐし方」にもポイントがあります。念のためおさらいしてみてくださいね。

浸水→炊く→蒸らしの工程が炊飯器任せな分、ちょっとしたひと手間がおいしさにつながります。

意外とシビアな「計り方」

三嶋 米と水分の関係はとてもシビア。少し分量がズレるだけで仕上がりに影響がでます。手ですり切りをするとどうしても力が入ってしまい、1カップにつきお米の量が5~10g変わってしまうことも。カップ山盛りにお米を入れ、棒や箸などの道具を使ってすり切りをしましょう。

品質を保つ「保存方法」

三嶋 品質を保つためには、密閉容器に入れ、冷蔵庫で保存するのがおすすめです。お米は高温多湿が大敵で、白米は精米直後から空気に触れると酸化が進み、風味が落ちていきます。米袋には空気穴が開いているため、購入したらすぐ密閉容器に移し替えましょう。

また、1カ月で食べきれる量を毎月購入すると、品質を損なわずに食べ続けることができますよ。

仕上がりを左右する「ほぐし方」

三嶋 正しいほぐし方をしないとお米が潰れてしまいます。お米をほぐすときは、十字に切り込みを入れて4等分にしたら、ブロックごとに底からごはんを持ち上げ、かたまりを切るようにほぐします。

こうすることで、混ぜる回数を最小限にしながら全体が均等に混ざるんです。余分な水分もしっかり飛びますよ。

手作業のポイントさえ覚えればおいしいごはんが炊ける

「計り方、研ぎ方、水の種類、ほぐし方、保存方法をマスターすれば失敗知らずです!塩梅がむずかしい硬さや粘り気の調整は、炊飯器にお任せしましょう。これぞ技術が発達した、この時代ならではの炊き方ですね」と三嶋さん。

年々進化している炊飯器や米業界。今後も最適な炊き方が徐々に変わる可能性もありますが、まずは令和版の炊き方として情報をアップデートしてみてください。

取材・文/内山 栞(macaroni 編集部)