将来的には子どもがほしい……。いつかわからないけれども産むつもり……。先のことだからまだよくわかなくても、妊娠や出産について、正しい知識を身につけておきたいですね。この連載では、認定不妊カウンセラーの笛吹和代さんから、いつか産むかもしれない女性たちへのアドバイスをいただいていますが、今回は番外編として、ホントにあった妊娠に関する驚きの相談事を教えてもらいました。

SNSで寄せられる中高生からの質問の内容とは?

笛吹さんのもとには妊娠中絶の相談が寄せられることもあります。

多くは中高生をはじめ十代の女性からと目されますが、中には20代とおぼしき女性からの相談も。    

根っこには、性の知識不足、正しい情報を持っていない現状があるようです。今回は笛吹和代さんにインタビュー形式でうかがいました。

-----たとえばどんな相談事が?

少し極端な例を示します。夏休みの時期やその後に増える傾向がありますが、「性交はしていませんが妊娠したみたいです」という相談。詳しく聞くと、「彼氏がいます、性交はしていないがキスはしました、妊娠しますか?」という内容でした。似たケースで「彼といっしょに温泉に入りました。妊娠しますか?」などなど。SNS等でこのような質問をいただくことがあります。おそらく中高生からの質問ではないかと。

------どういうお応えをしているのですか?

基本的に、性交しなければ妊娠しませんよとお答えしています。

-----中高生でも知識がまったく無い子もいるんですね 。

おそらく、彼女たちは生理が予定日を過ぎてもこないことで、さまざまに不安に感じて相談してくるのだと思います。ですから、あまり長く生理が来ないようであれば、それは別の原因が考えられるので、一度婦人科を受診するようアドバイスしています。

私が問題だと思うのは、性交しなければ妊娠しないということすら知らないことに加え、性交の定義の認識すらバラバラなことです。上に挙げた例は驚くような内容ではありますが、決してレアケースというわけでもありません。

------いまどき、インターネットでちょっと調べればわかることがなぜ?

もちろん、彼女たちはすぐさまインターネットで調べます。LINEやインスタなどのSNSも駆使しして調べるのです。そこであまりに雑多な情報に触れてしまっている可能性があります。

SNSで情報のつまみ食いが起きている

たとえばGoogleなど検索サイトで検索することに慣れている人であれば、ある程度、上がってくる情報が玉石混淆であることは知っているでしょうし、どういうスジのサイトなら信用できるという勘みたいなものが働くと思います。

上の例でいうと、生理が来なくて不安になった人が、検索サイトで「生理来ない 妊娠」と検索すると、産婦人科クリニックや医師、体温計メーカーなどの情報サイトが上位に並びます。これを読めばおおよそのことはわかります。正しい情報が書かれています。

ただし、全体に説明が長いのです。ていねいに基礎的知識から説明されているため、何スクロールもしないと自分の求めている答えにたどりつかない、という事態が想像されます。

もしかしたら問題はココかな、と思っています。つまり、長い文章を読む習慣のない人にとっては、婦人科先生の説明は長すぎると。結果、回答までたどりつけない。そして次に頼るのが、個人のブログだったり、SNS上の個人の発信です。これらにはそれこそいろんなレベルの情報があふれています。長さも、書き方もバラバラ。中にはごく短く、読みやすく書かれたサイトもあります。「キス 性交」「生理ない 妊娠」といった言葉がまぎれていてもおかしくありません。そうしたブツ切れの言葉を目に入れていくうちに、「キス 妊娠」という本来結びつかないものが結ばれてしまうのではないか……と、想像しています。

-----情報があふれていることで、逆に必要な情報に手が届かない。考えされられますね…。

そもそも論になってしまいますが、まず日本の性教育がとても遅れている問題が根底にあります。ここ30年ぐらい変わっていないのではないでしょうか? もちろん、問題意識を持っている先生は増えているのですが……。中学、高校、あるいは小学校で受けるべき性教育を受けていないので、性の知識が断片的なのです。生理の知識、妊娠、出産の知識も体系的に学べず、それぞれが必要になったときにネットで調べる……という状況になっています。私は認定不妊カウンセラーの仕事を始めてからずっと、性教育のレベルを引き揚げることが急務だと感じています。

-----多少なりともネットやSNS上の情報をつまみ食いしてわかったつもりになっていることはありますね…。

SNS上から入る情報も膨大なだけにリテラシーが求められる。

■プロフィール

妊活の賢人 笛吹和代

働く女性の健康と妊活・不妊に関する学びの場「女性の身体塾」を主宰する「Woman Lifestage Support」代表。日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー。臨床検査技師でもある。化粧品メーカーの開発部に勤務中、29歳で結婚。30代で不妊治療を経て出産。治療のために退職した経験から、現在は不妊や妊活に悩む女性のための講座やカウンセリングを行なっている。著書に『あきらめない妊活〜キャリアと不妊治療を両立させる方法』がある。