山本千尋

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 LINE NEWS の動画プロジェクト「VISION」にて配信中の縦型アクションムービー「EXTREME ACTION」。縦型という限られた画角のなかで、さまざまなジャンルのアクションを披露しているのが、主演を務める女優の山本千尋だ。映画『太秦ライムライト』(2013)でスクリーンデビュー以来、ストイックにアクションに取り組んできた山本が、本作を経験したことで改めて感じた思いなどを語った。

縦型アクションで新感覚!「わたしの背後の人を守ろうという感覚」

 新たな映像表現を目指したLINE NEWS アプリの縦型動画コンテンツ「VISION」で展開されている「EXTREME ACTION」。劇中では、激しいアクションシーンが展開されるが、山本は「全編アクションの作品が初めてだったので、いよいよ来たか」と期待に胸を膨らませた。

 映画やドラマは、いわゆる横長の画角でアクションが展開されるが、本作はスマートフォンで見慣れた縦型で物語が進む。「初めての試みで、アクション稽古で動いてみたのですが、想像以上に可動域が狭いんです」と困惑した部分も。しかし、逆に言えばより一層、演者の目線での映像を撮ることができるメリットもある。山本はアクションチームと共に、細かく打ち合わせをしながら、視聴者が作品の世界観に入り込めるような新しい映像を目指した。

 山本は「一番意識したのは、背中でちゃんとお芝居ができること」とその理由について、「横の動きに制約があるぶん、常にアクションをするとき、わたしの背後に誰かがついてきていて、その人を守ろうという意識でやっていました。最初は縦型であることに苦戦していたのですが、意識し過ぎて、動きが小さくなるのではなく、思い切り動いていくなかで、そこをカメラマンさんに切り撮ってもらうことが大切だと気づきました。そこから撮影がグッと面白くなっていきました」と振り返った。

 同時に課題も見つかった。「わたしは結構回転技が好きなのですが、縦型ではなかなかうまく表現ができないんですよね。まだまだ自分のなかにはできないことがたくさんあるんだと気づけたこともありました」と有意義な現場だったことを明かす。

体育会系のノリは好き!

 本作で山本が演じたのは、かつて公安警察特殊部隊員だった兄を殺されたユウナ。犯人に復讐するために組織に潜入するものの窮地に陥り、追い込まれたところを、ZENふんする謎の男・シュウに助けられる。

 タッグを組んだZENは、フランスの軍事訓練から発展したスポーツ・パルクールで全米チャンピオンにもなったアスリートだ。山本は「わたしにとってZENさんとの出会いは、とても大きかったです」と語ると「ZENさんは本当に魂がアスリートなので、どんなに厳しいオーダーでも、絶対に『できません』と言わないんです」と羨望の眼差しを向ける。

 山本自身、幼少期から中国武術を習い、世界ジュニア大会で金メダルを2度獲得するなど、アスリートとしても活躍した経験を持っているが「わたしもしっかり準備をして臨んだつもりでしたが、ZENさんを見ていると、まだまだだなと思いました」と気を引き締め直した。

 今回の撮影は、ZENをはじめ共演者、スタッフみな活力がみなぎった撮影現場だった。「本当に体育会系のノリを持った集団だったので、皆さん本当にガッツがあるんです。そんな人たちとご一緒して、自分もメンタルが強くなり、どんなに大変なシーンでも、ネガティブになる瞬間がまったくありませんでした。体育会系のノリって好きなんですよね(笑)」

三谷幸喜の現場で得られた「遊び心」を持つことの大切さ

 思う存分、アクションを極めた本作の撮影現場だったが、近年山本は、アクション以外の作品でも活躍の場を広げている。2020年に Amazon Prime Video で配信された三谷幸喜脚本・演出のシットコム「誰かが、見ている」では、香取慎吾、佐藤二朗ら個性的な面々のなか、コメディエンヌ開眼と思わせるような弾けた演技を披露した。

 「『誰かが、見ている』はわたしにとってターニングポイントになった作品です。三谷さんと出会ってコメディーの楽しさをたくさん教えていただきましたし、これまでもお芝居って楽しいと思っていましたが、誰かとお芝居をすることがこんなにも魅力的なんだと実感できた作品でした」

 歴戦の強者俳優たちとの瞬発力を活かしたお芝居は、アクションにも大きく活用できる部分が多かった。「三谷さんの現場は、皆さん遊び心いっぱいで、真面目にふざけるんです。これまでわたしは性格的にも教科書通りみたいなタイプだったのですが、『誰かが、見ている』の現場を経験して、肩の力が抜け、リラックスして遊び心を持ってアクションにも取り組むことができました」

中国武術と太秦の伝統を胸に女優活動を邁進!

 山本と言えば、「5万回斬られた男」の異名を持つ福本清三さんが主演を務める映画『太秦ライムライト』でスクリーンデビューを果たした。共演には福本さんをはじめ、松方弘樹さん、栗塚旭、木下通博さんら時代劇俳優たちが顔をそろえる。「『太秦ライムライト』のときは、右も左もわからない状況でした。初めて台本をもらい、初めてのお芝居。カメラに映る経験も初めてでしたが、太秦でデビューさせていただいたことは、大きな縁だと思っています」と当時を振り返る。

 そこから現在まで、さまざまな経験をしてきたが、山本の思いは揺らぐことがない。「わたしは3歳から中国武術をやってきたのですが、いまのわたしがあるのは中国武術のおかげ。だからこそ、中国武術をお芝居やアクションを通じて多くの人に知ってもらいたいという思いがありました。そのなかで、太秦でデビューさせていただいたことも、運命だと思っていて、わたしが言うのもおこがましいのかもしれませんが、その伝統を引き継いでいきたいとも思っているんです」

 こうした2つの思いは、山本の女優活動の大きなモチベーションになっている。「中国武術と太秦の伝統……。どちらも現代のアクションに投影して、しっかりと継承していくことが、自分の役目だなと思っているので、これからも地道に一生懸命頑張っていきたいです」と強い視線で語る。

 役柄の幅を広げていく一方、本作との出会いで「やっぱりアクションが好き」という原点に立ち戻れた。「やっと自分のスタイルが少しずつわかってきたところなので、さらにアクションを磨いていきたいです」と語った山本。

 この言葉通り、本作では限られた画角のなか、これまで観たことがないような独特のアクションが展開される。「1話3分で、アクションという表現を使って、芝居以上に熱いものを語りかけているので、ぜひ楽しみにしてください」と見どころをアピールしていた。(取材・文・撮影:磯部正和)