マニアと味わう「ご当地カップ麺」の世界

第六十三回 ファミリーマート限定「麺屋 極鶏 赤だく」 文・写真:オサーン

カップ麺ブロガーのオサーンです。「ご当地カップ麺」連載の第六十三回目となる今回は、ファミリーマート限定で発売された東洋水産のカップ麺、「麺屋 極鶏 赤だく」を食べてレビューしていきます。

ラーメン激戦区である京都・一乗寺の大人気ラーメン店、「麺屋 極鶏」の人気メニュー「赤だく」を再現したカップ麺です。

京都・一乗寺「麺屋 極鶏」のカップ麺

京都のラーメンと言えば、京都ラーメンの源流とされる「新福菜館」や「第一旭」の醤油ラーメン、「ますたに」などの背脂醤油ラーメン、「天天有」や「天下一品」などの濃厚鶏白湯ラーメン、そして「横綱」などの豚骨醤油ラーメンなど、その種類は多岐にわたり、一概にひとまとめにはできません。

西日本はうどん文化だと言われ、あの博多ラーメンを擁する福岡ですら地元の人はうどんを食べているというのに、和のイメージで最もうどんが似合いそうな京都が実はラーメン文化が強いのは面白いですよね。

しかも、京風とか京懐石の繊細な薄味のイメージとはまるで真逆の濃厚こってり系のお店が多いのも不思議です。普段我慢している反動とかですかね。

今回のカップ麺が再現している「麺屋 極鶏」は、京都・一乗寺にある濃厚鶏白湯ラーメンの人気店です。

一乗寺と言えばラーメン激戦区として知られ、関西随一どころか西日本一、いや日本一の激戦区といっても過言ではありません。名店が軒を連ねる中でも「極鶏」は最も人気のあるお店のひとつで、グーグルマップのストリートビューでも大行列ができているくらいです(2015年)。

「麺屋 極鶏 赤だく」の内容物を確認

お店の看板メニューは世界一濃厚な鶏白湯とも称される「鶏だく」。あまりにどろどろで、れんげがスープの中で立つほど。写真を見たことある方もいらっしゃるでしょう。

れんげが立つなんて、クララやハイジもびっくりですよね。今回のカップ麺では、その「鶏だく」の辛いバージョンである「赤だく」が再現されています。

別添袋は「後入れ特製スープ」1つで、カップには麺の他にかやく類と大量のスープ粉末が入っています。

お店のどろどろ濃厚鶏白湯を再現するには、相当な量のスープ粉末が必要なのでしょうね。

スープ粉末は赤みを帯びていて、チップ状の唐辛子もたくさん入っています。鶏白湯の濃度だけでなく、どれほど辛いのかも気になるところです。

カップの形状や麺量など、東洋水産の定番タテ型カップ麺「本気盛」シリーズと共通しており、「本気盛」の「極鶏」味と見ることもできそうです。

甘みを感じる鶏白湯スープ

濃厚な鶏白湯スープが、唐辛子でピリ辛に仕上げられています。

鶏白湯は醤油味で、鶏系のスープでよく見られる鶏油のクセのある風味はありません。また、鶏白湯の甘みを強調するためのクリーミングパウダーも入っていません。

味にクセや強調がない分、鶏肉由来と思われる旨みがきちんと感じられ、鶏白湯って甘いんだとちょっと実感できる味でした。

お店のスープほどではないですが、今回のスープにも自然なとろみがつけられており、鶏白湯スープの濃厚感を高めています。

カップ麺でお店のスープのとろみを忠実に再現しようとすると、かなり不自然な感じになってしまいそう。実際に以前、とろみをつけすぎておかしなことになっていたカップ麺もいくつか存在していました。

スープは結構赤いですが、辛さはそれほど強くありませんでした。ピリ辛程度かそれ以下くらいで、強い辛さを期待すると肩透かしを食らいますが、辛味が鶏白湯の甘みの対比になることで、甘さをより引き立てているように感じられました。名脇役です。

お店の再現性はあまり高くない縮れ麺

麺は、緩やかに縮れのついた角麺形状の中太油揚げ麺。「本気盛」シリーズでも見たことのある麺が使用されています。

お店の麺は丸麺形状でストレートなので雰囲気は違っており、麺についてはしっかり再現するつもりはないようです。

スープにとろみがついているため、麺がスープをよく拾い、両者の一体感がかなり高くなっています。スープを飲もうとしなくても、麺を食べ切る頃にはスープも一緒になくなってしまっています。

具として入っているのは豚肉チップ、ねぎ、唐辛子。いずれも細かくカットされていて大物感はまったくありませんが、量はたっぷり入っていてボリュームがあります。細かい具それぞれの食感がきちんと立っており、口の中が賑やか。

そして具を細かくすることで、スープのとろみが増幅したように感じられました。この具の細かさはおそらく計算づくだろうと思われます。唐辛子が口の中に張り付く印象で、その時に感じる唐辛子の風味が、辛さとはまた違う魅力がありました。

京都の食文化の多彩さに脱帽

京都の人気ラーメン店「麺屋 極鶏」の「赤だく」を再現したカップ麺。さすがにお店のまるで固形物のようなとろみのスープは再現できていませんが、鶏の自然な旨みが感じられ、唐辛子の辛味によってその甘さがさらに際立っていました。

真っ赤でとろみのついたスープは見た目こそ派手ですが、むしろ素直な鶏の旨みが大きな魅力となっています。

粋な京料理、京懐石がありながら、今回の「極鶏」や「餃子の王将」のようなパワフルな食も生み出してしまう、京都の食文化の多彩さ、レンジの広さに脱帽です。

カップ麺を通してその食文化の一端に触れてみるのも面白いのではないでしょうか。