国土は日本の約26倍で1つの国の中に4つのタイムゾーンが存在するアメリカ。現在50の州から構成され、州によって法律や税率も異なります。

これだけ大きい国なので都市によってそこに暮らす人種や文化、気候、食べ物などもさまざま。本連載ではアメリカ各地に暮らす日本人女性にフォーカスし、異国での挑戦、その土地での暮らしや発見、おすすめスポットなどをインタビューします。

第5回目はミシガン州のグランド・ラピッドです。五大湖とカナダに隣接するミシガン州はデトロイトが最大都市として知られていますが、グランド・ラピッドはミシガン西部に位置する第二の都市。

今月はミシガン州唯一のプロのバレエ団「グランド・ラピッド バレエ」で活躍する日本人バレリーナの大場優香さんへインタビューをしました。

ミシガン州って?


面積:24万493㎢(全米11位)
人口推計:998万6,857人(全米10位)※2019年
人種比率:白人79.2%、アフリカ系14.1%、ヒスパニック系5.3%、アジア系3.4% ※2020年アメリカ国勢調査ミシガン州に住むことになったきっかけは?

今年でグランド・ラピッドに来て10年になりますが、「グランド・ラピッド バレエ」に入団するために移住しました。

ここまでのキャリアとお仕事について教えてください

6歳からバレエを初めて、高校卒業間際にイギリスのロンドンにある「イングリッシュ ナショナル バレエスクール」に人生初めてのバレエ留学をし、2年間過ごしました。

その後、オーディションに受かったので20歳の時にプロとしてスロバキアの「スロバキア国立バレエ団」に入団。スロバキアで2年ほど過ごしていた時に、「グランド・ラピッド バレエ」に翌年から芸術監督として就任することが決まっていた女性が練習を見に来ていて、スカウトをしてもらいました。

若い頃は色々な経験をした方がいいので、みんなだいたい2年ぐらいでバレエ団を移る傾向があるんです。私もちょうど他も探そうかなと思っていたタイミングで、違うカンパニーのスタイルも学び、違った作品にも出演したかったので、アメリカへ行くことを決めました。

海外生活はすでに慣れていましたが、アメリカに来てからは自分の芯は持ちつつも、オープンマインドで、ある程度は周囲の流れに身を任せないとやっていけないなと感じました。

価値観もバラバラなので、自分の意見は持ちながらも他人の価値観も受け入れないといけない。日本人としてのマナーは忘れたくないけれど、人にそれを押し付けないようにする…など、海外生活ならではの葛藤はありました。

ヨーロッパとの公演スケジュールなども違いますし、アメリカは車がないと生活ができないので、勝手も違いました。自分にとってストレスがかからない方法を見つけるまで、生活に慣れるまでに数年はかかりましたね。

ミシガン州の魅力は?

ミシガン州は五大湖に隣接しているので、とにかく自然に恵まれています。ミシガン湖は海のように大きく、初めて来た時は感動しました。

ビーチもいくつもあって、それぞれ違った魅力があります。ビーチの傍にトレイルもたくさんあるので、ハイキングをしたり、湖でウォータースポーツをしたり、自然を満喫できますよ。

一年の中では、ミシガンの夏が一番好きです。湿気もなく過ごしやすいですし、北にあるので22時頃まで暗くならないんです。冬はとにかく寒いですし、雪が降るのでスキーやホッケーなど、ウィンタースポーツが盛ん。私たちバレエ団のダンサーたちは冬がシーズンなので、全然ウィンタースポーツを楽しんでいる暇はないんですが(笑)。

ミシガン州でのおすすめの過ごし方はありますか?

ミシガン州も広いので、各都市魅力が違いますね。私の住んでいるグランド・ラピッドは自然も豊かなのですが、地ビールもたくさんあるんです。60以上のブリューワリーがあり、住んでいる人たちもみんなビールが大好き。レストランも併設されているので何種類もの地ビールが飲めるのでおすすめです。

グランド・ラピッドから北に行ったトライバーズシティはワイナリーが点在していて、チェリーも有名なのでジャムやチェリー酒などもたくさんあります。デトロイトは日本人の方だと、車関係の仕事で転勤してくる人が多い印象ですが、最近はアートも盛んです。

ガイドブックに載っていないようなMYおすすめスポットは?

ミシガン州はドイツ系やオランダ系の移民が多いのですが、フランケンムースという街はドイツ系の建物が多く、クリスマスタウンと呼ばれています。そこにある「ブロナーズ」という世界一大きいクリスマスのお店があるのですが、家族で訪れると楽しいと思います。ツリーの飾りなどもたくさんあって、年中開いているんですよ。

あとはトライバーズシティにある「ミッション ポイント ライトハウス」です。目の前にビーチがあるのですが、湾になっているので波もなく、水も透き通っていて本当にきれい。灯台に行くまでの道の両側にワイナリーが点在しているので、ワイナリー巡りもできます。

ビール好きにすすめたいのはグランド・ラピッドにある「ファウンダーズ」。そこで作られているビールは人気で世界中に輸出されていますし、お店では世界中のビールを楽しむこともできます。

あと、グランド・ラピッドには醸造所も多く、「ロングロード」ではリキュールやジンなども作られていて、レストランも併設されているのでお酒好きには一度は行ってもらいたいです。他にもクロワッサンやシナモンロールが美味しい「フィールド&ファイヤー」や、色々な食事を楽しめるベンダーが一箇所に集まっている「ダウンタウン マーケット グランド・ラピッド 」など、グランド・ラピッドはグルメのレベルも高いです。

ミシガン州ならではの食事や文化はありますか?

州も広いので、都市が散らばっていますが、前述したフランケンムースはドイツ系やオランダ系が多いので、ソーセージやシュニッツェル(仔牛のヒレ肉や赤身肉を叩いて薄く伸ばしたカツレツ)があります。

あとはビールとチェリーですね。チェリーのビールやチェリーのジャム、パンにもチェリーが入っていることも。湖沿いだと、パーチという魚をフライにしてハンバーガーにして食べたりします。

グランド・ラピッドでは毎年秋に「アートプライズ」というお祭りがあります。昨年は新型コロナウイルスの影響で開催されませんでしたが、今年は開催される予定。

街中にアートが飾られ、街中がアートギャラリーのようになるので、世界中から多くのアーティストが集まります。私たちのバレエ団も2〜3年前に参加し、橋の上でダンスを踊ったりしました。審査員がいるのですが、一般の方たちも作品に投票をすることができる、そんなお祭りです。

休日はどんなふうに過ごしていますか?

夏場はシーズンオフなので練習がないので、ダンサーたちはどうにかスタジオを探して自主練をしたり、子どもたちにダンスを教えて、時間を見つけて練習をしたりします。

先日休暇でマイアミに行ってきたのですが、最低週3回は練習しないと体調もキープできないので、ホテルの近くのスタジオを見つけて休暇中も自主練をしていました。練習はずっと続けていないと怪我にも繋がるので。

シーズンに入ると月曜〜金曜までみっちり練習がありますし、シーズン真っ只中の冬になるとみんな週末はぐったり(笑)。

ダンサーたちはこのような生活ですが、ミシガンの人たちは短い夏は外でご飯を食べて日が暮れるまで遊んで、キャンプやハイキングをします。冬はウィンタースポーツやホットヨガも人気ですね。

ミシガン州で一番驚いたエピソードは?

冬の寒さの厳しさですね。気温がマイナス40℃くらいになったことがあり、人生で初めての経験でした。

2年前はアイスストームがきて、木が氷の重さで倒れて停電になり、練習が休みになったことも。白銀の世界は綺麗なのですが、その時は自然の恐ろしさを目の当たりにしました。

今後アメリカで行ってみたい場所、今後住んでみたい場所はありますか?

オレゴン州のポートランドに行ってみたいですね。バレエ団の古い友人がポートランド出身で、美味しいレストランもたくさんあって、醸造所もあると聞いています。グランド・ラピッドに似ているのかなと思いました。