独特のルールがまかり通る家族経営の小さな会社は、労働法無視の「ブラック企業」になりがちだ。今回はキャリコネニュース編集部に届いた声の中から、地方のブライダル企業でアルバイトする30代男性の声を紹介する。(文:コティマム)

※キャリコネニュースではブラック企業に関するアンケートを実施しています。回答はこちらから。https://questant.jp/q/G42CZUHP

「大卒勤続約10年でも、高校生アルバイトと同じ時給」


男性によると、この会社は休憩時間がおかしい。

「うちの会社の休憩時間はどれだけの労働時間でも15分が基本です。私はアルバイトですが12時間労働で休憩15分が当然、忙しいときには14時間労働で休憩ゼロ分ということも多々あります」

「休憩=昼食・まかないなのですが、社員は5分かからず立ち食いして業務に戻ります。社員は16時間労働とかなのに」

時給で働くアルバイトの男性は「休憩を減らせば給料も減りますし、違法ですが目をつぶるしかありません」と語っている。

結婚式当日などに余裕がないのはわかるが、法律では「労働時間が6時間〜8時間の場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は、少なくとも1時間の休憩を与えなければならない」(労働基準法34条)と決まっている。ここは経営者が人員を調整し、休憩時間を確保しなければいけないところだ。

また、同じく違法な「サービス残業」も横行しているという。

「(社長の親戚で、会社ではナンバー3のゼネラルマネージャーの)経理が『残業が多い』と会議や電話で一言でも発言すれば、社員は経理に怒られるからと休憩もせずに仕事して、結果サービス残業をして経理の顔色うかがい」をすることになるそうだ。

男性は、こんなエピソードも綴った。

「厨房の新入社員が入社後から手荒れするようになってそれがかなり酷い状態になったため、上司にも掛け合って労災申請をしようとすると、(経理は)『私そういう労災申請とかやったことないから分からんのよー笑。でも社長には言ったらあかんよ。それなら職業病いうことで会社辞めてもらわんと』などと意味不明な、労災隠しともとれる発言を平気でする」

「労災隠し」は労働安全衛生法違反で違法だ。

男性によると、アルバイトの給与は最低賃金スレスレの時給800円。大卒で勤続10年の男性は、上司から「君がいないと現場が回らない」と言われるが、高校生のアルバイトと全く同じだという。

男性も交渉はしているが、

「現状の時給に納得できずに社長に直接相談して、時給を上げることにはOKしてくれましたが、(社長は)『ワシが決めることじゃないからなーまあ経理に伝えておくよ』と言うだけ」

で終わったそうだ。それから半年以上が経つが、経理は無反応で、いまだに時給は800円だという。

ちなみに、正社員の待遇は「さらに悲惨」で、男性は「どんなキャリアの人でも30時間の固定残業代込で手取り12万からスタート。20年近く働いても20万そこそこ。ホールから音響関係、サービスやアルバイトの取りまとめ、接客や料理の出し下げや会計、アルバイトや派遣の労働管理などをたった一人で背負う事実上の店長職の人でさえ給料は15万」と明かした。

こういう状況なので、男性も正社員登用の話があったときも「お茶を濁している」そうだ。

「役員はすべて同じ社長一家」で「散財しまくり」とのことで、男性は「その外車を国産車にしたら何百万浮くんだろう? 社長の家にある露天風呂にはどれだけの金額をかけたのかな?などと常々思っています」と綴っている。

男性は「転職できるほどのスキルもなく、特に新型コロナの影響で転職自体が今は極めて難しいですし、悩ましい」と語る。しかし、2021年6月の有効求人倍率は1.13倍で、2020年秋冬よりもわずかではあるが改善している。ブライダル会社なら平日が休みのはず、仕事がない日に転職活動をしてみたらいいかもしれない。

※アンケート概要
■実施期間
2019年12月19日〜
■回答数
764 ※8月11日時点
■アンケート対象
キャリコネメルマガ会員(63万人)やキャリコネニュース読者、キャリコネニュースSNSフォロワー
■実施方法
アンケート集計ツール「クエスタント」を使用
回答ページ https://questant.jp/q/G42CZUHP
■質問項目
・体験した「ブラック企業」エピソードを教えてください。