新型コロナウイルス感染が、サッカー界にも拡大している。高校や大学、Jリーグなどから、全国大会の中止、チームの出場辞退、選手や審判の感染が、8月に入って相次いで報告されているのだ。
Jリーグはもちろん高校や大学のチームも、一度しかない全国大会やリーグ戦に、ありったけの熱量を注いでいる。感染対策に真剣に取り組んでいるのは、想像に難くない。それでも防ぎきれないのだから、変異株の感染力は相当なものなのだろう。

 J2リーグでは試合が中止された。8月14日開催予定のザスパクサツ群馬対栃木SC戦で、群馬の3選手が陽性判定を受けたことによる措置だった。

 サッカーは人と人が近距離で組み合うとか、他人の汗を絶えず浴び続ける距離で戦うスポーツではない。それでも、フィジカルコンタクトはある。練習や試合ではマスクを外して、大きな声で指示を出し合う。オフザピッチの取り組みで感染のリスクを抑えることはできるものの、選手たちは罹患する恐れを抱えながらプレーしている。

 第五波と呼ばれる感染拡大は、収まるどころか全国的に拡がっている。人流を抑えきれられず、感染者が減る要素は見当たらない。

 そのなかで、Jリーグは開催されている。

 各チームの選手やスタッフが感染し、中止に追い込まれる試合は、これから増えていくのではないだろうか。17日には浦和レッズ、横浜F・マリノス、柏レイソルで、トップチームの選手ひとりに陽性反応が出た。

 今シーズンのJリーグは、「全試合を実施する前提」に立ってスタートしている。「全試合数の75パーセント以上で、各クラブが50パーセント以上の試合消化」といった大会成立基準は設けられていない。昨シーズン見送った上位リーグへの昇格、下位リーグへの降格があるだけに、消化試合数を同じにする考えに基づいたものだ。

 中止となった試合は、実質的に延期扱いとなる。前述の群馬対栃木戦は、8月25日の水曜日にスライドされた。代替日程がうまくハマればいいのだが、中止が相次ぐと日程の余白だけでは対応できないかもしれない。

 さらに言えば、代替試合はシーズン中でなければならない。最終節は同日同時刻のキックオフを「何よりも優先させる」のがJリーグのスタンスで、「最終節以降に代替日をセットすることは原則ない」としている。J1リーグは12月4日、J2リーグとJ3リーグは12月5日が最終節で、中止された試合はそれ以前に代替日程を確保しなければならない。

 しかし、11月の試合がコロナ感染の影響で中止になった場合、すぐに日程を確保できるだろうか。現状で水曜日は空白になっているが、11日と16日には日本代表のカタールW杯アジア最終予選が組まれている。チームの大半は海外クラブ所属選手が占めているが、森保一監督の希望どおりにいくとは限らない。それぞれの国や地域の感染の状況によって、コロナへの対応は変わってくるだろう。

 その影響を受けて、Jリーグのクラブから多くの選手が招集される、というケースも有り得る。現時点で余白を残している11月の日程も、そのまま自由に使えるわけではないと考えておくべきだ。
今シーズのJリーグには、優勝、ACL出場、残留、降格といったものがかかっている。とりわけ残留争いは、来シーズン以降のクラブの経営に直結する。残留と降格では戦力の維持もスポンサーの獲得も、大きく変わってくる。

 多くのクラブが大きなものを賭けて戦っているだけに、同じ条件で競うことは大前提だ。だとすれば、条件を揃えるためのプランBを用意しておいたほうがいい。デルタ株による第五波の感染拡大が収まらないなかでは、予測できないことが起こることを、あらかじめ予測しておく必要がある。