夏の新戦力がいない現状で目を向けたいのは、若手のさらなる突き上げ。“ギラつき”を放っているFW宮城は要注目だ。(C)SOCCER DIGEST

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 東京五輪開催でJリーグは一時中断。その間、各チームは戦力補強やミニキャンプ実施など、再開後に向けて準備を進めている。五輪後はいかなる戦いを見せてくれるか。ここでは、J1の川崎フロンターレを取り上げる。

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 ここまでのパフォーマンスは、ケチのつけようのない盤石なものである。東京五輪での中断までに、リーグ22試合(18勝4分)、ACL6試合(6勝)、天皇杯2試合(2勝)、そして開幕直前のゼロックス・スーパーカップと31試合を戦い、いまだ無敗。王者たる所以をこれでもかというほど見せつけているのだ。

 昨季から導入した4-3-3の成熟度は高いレベルで向上しており、ハイライン&ハイプレスの強度、展開に応じた柔軟な振る舞い(状況によって試合途中に4-2-3-1を採用することも)、ポゼッションや崩しの質など様々な面で、Jリーグトップのサッカーを示している。

 時期尚早であるのは十分に承知しているが、前半戦の成績を鑑みれば、リーグの無敗優勝、そして悲願のACL制覇にも期待が高まると言えるだろう。

 もっとも田中碧のドイツ2部デュッセルドルフへのレンタル移籍が決まり、海外移籍の噂がある三笘薫の去就も流動的(現状でシステムには含めず……)。さらに戦列復帰後、調子を上げていた大島僚太が、直近(7月21日)の天皇杯・千葉戦で負傷交代した。8月1日の練習では大島、そしてACLで負傷していた小林悠はランニングメニューなどをこなしていたが、少なくない不安材料を抱えているのも事実である。

 そこで、夏の新戦力がいない現状で目を向けたいのは、若手選手たちのさらなる突き上げだ。

 以前に鬼木達監督に話を訊いた際、若手たちが台頭しそうな空気が今のチームには漂っていると、目を細めていたのが印象深い。それを象徴するかのように、天皇杯やACLではフレッシュな人材が躍動した。
 
 個人的に注目しているのはプロ2年目のFW宮城天。昨季、トップ昇格後にJ3の富山へレンタル移籍していたタレントは、左ウイングとして果敢に仕掛け、ACLの北京戦では川崎での初ゴールをマーク。“ギラつき”を放っているのも興味深い。

 また最終ラインでは、三笘や旗手怜央の同期、大卒2年目のイサカ・ゼイン、神谷凱士らが奮闘。イサカはレギュラーの山根視来の負担が増していた右SBで、持ち味の攻撃力を発揮しており、レフティの神谷は左SBとCBとしてチームに貢献している。ここまでコツコツと真摯にトレーニングに取り組んできたふたりに、そろそろスポットライトが当たっても良いのではないか。
 
 さらに中盤では大卒1年目の橘田健人が試合を重ねるごとにパスのリズム、周囲との親和性を高めており、ACLのユナイテッド・シティ戦ではハットトリックの活躍。過度の期待は禁物であろうが、注目度は上がっている。ちなみに同じくインサイドハーフを務める今季の新戦力、小塚和季も徐々に持ち前のパスセンスを発揮しており、出場機会を増やしそうだ。その意味でリーダーとして逞しさを増す脇坂泰斗、五輪戻りの旗手らレギュラー争いも楽しみである。

 そして、なにより新型コロナウイルスの影響で行動規制があるなか、中2日で戦ったACL、帰国後、コロナの陽性者が出てトレーニングを行なえない日もあったなかで勝ち切った天皇杯を含め、チームはこれまで以上の逞しさを身に付けている点も見逃せない。鬼木監督が評価するポイントもそこだ。

 タフさは今後の試合にも生きるはずで、田中らキーマンを欠いたうえでも、チーム一丸となって戦うことができるだろう。
 
 今後はルヴァンカップの戦いも始まり(プライムステージ<ベスト8›から登場。浦和と対戦)、ACLのノックアウトステージも控える(ラウンド16で韓国の蔚山現代と対戦)。

 これまで以上の厳しい戦いが続くが、ACL、天皇杯で見せた勝負強さ、そして選手層の厚さを生かしつつ、記録と記憶に残るシーズンをさらに進みたい。天皇杯の千葉戦後、ようやく休息を取り、改めて英気を養ったチームの再スタートに注目だ。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

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