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40系が好まれるワケ

text:Kazuhide Ueno(上野和秀)photo:RM Sotheby’s/Darin Schnabel

トヨタを代表するクロスカントリー・モデルのランドクルーザーが、誕生70周年を迎えた。それを祝うように、新型の300系がまもなく登場する。

【画像】40系ランクルのレストモッド【オークション出品車】 全19枚

70年にわたるランドクルーザー歴代モデルの中で、世界中の愛好家から熱烈な支持を集めているのが、1960年〜1984年まで生産された40系だ。


トヨタ・ランドクルーザー(FJ40:1976年式)    RM Sotheby’s/Darin Schnabel

40系ランクルは、アメリカを筆頭に世界各国に輸出され、走破性能・信頼性の高さを発揮して大活躍した。

機能を突き詰めた日本製の無骨なオフローダーは、遊び好きなアメリカの若者のスポーツギアとして着目する。本来はビジネスライクな実用車なのだが、シンプルな構造でメンテナンスも楽とあって、モディファイしてカスタム化する楽しみもあった。

こうして40系ランクルの新たな流れがアメリカで始まる。SUV発祥の国だけに、それまでにない視点で遊びのクルマとして創り上げてしまったのである。

普通であれば古くなると廃車にされてしまうのだが、40系ランクルは違っていた。高い実用性に加え、擬人的なスタイルとあいまって、趣味車としての地位を確立する。

どんな40系が取引される?

欧米のコレクターズ・オークションでGT-R、スープラ、NSXが人気を集めているが、ちょっと前はランクルが唯一の日本車だった。

とくに北米で開かれるオークションでは必ず姿を見せる人気モデルで、アメリカでいかにポピュラーな存在であるかを物語っていた。


トヨタ・ランドクルーザー(FJ40:1980年式)    RM Sotheby’s/Darin Schnabel

40系ランクルは高い人気を誇るアイテムカーだけに、オークションに出品されるのは徹底的にレストアされた素晴らしいコンディションのものがほとんどである。

また出品車は、全般的にオリジナル志向が強いが、アメリカらしくカスタマイズされたものも見受けられる。

なかにはV8エンジンを積んで過激に改造されたものが出品されるのも興味深い。

アメリカで今いくら?

2014年に始まったコレクターズカー・バブルだが、その波は40系ランクルにも及び、それまで邦貨換算500万ほどだったものが、ピーク時には1500万円にまで跳ね上がっていた。

バブルが弾けたあとは順当に下落し、現在はアベレージ・コンディション(とはいってもほとんどはレストア済)なら3〜5万ドル(約330〜550万円)ほどで落札されている。もちろん程度に比例し、これより高額で落札されるものもある。


トヨタ・ランドクルーザー(FJ45:1981年式)    RM Sotheby’s/Darin Schnabel

いずれもBJ40/43のメタルボディやソフトトップが主流となるが、そのなかで高額で落札される傾向にあるのがピックアップトラック型でロングホイールベースのBJ45だ。

40系の中では少数派で、ピックアップ文化があるアメリカでは人気が高い。

この3月に行われたバレット・ジャクソンのスコッツデイル・オークションでは素晴らしいコンディションのFJ45が2台出品され、どちらも11万ドル(約1200万円)と高額で落札されている。

FJ45はその人気の高さから、近年は南米から輸入しレストアを施して販売されるほどだ。

出品されている40系の全体的な傾向としては、純正パーツを使ってパワーステアリングやフロントにディスクブレーキなどアップグレードされたものが多いのが特徴だ。

しかし目に見えるところはオリジナルを保っているものがほとんどで、“旧いクルマに対する敬愛”が感じられる部分だ。

オリジナル重視のレストモッドまで

高額で落札されて話題を呼んだ40系ランクルといえば、昨年10月に開催されたRMサザビーズ・エルクハート・オークションに姿を現した1981年FJ43ハードトップだ。

実はこのFJ43は、アメリカのマイアミに本拠を構えるランクル・スペシャリストのFJカンパニーが手掛け、徹底的に手が加えられたレストモッドなのである。


トヨタ・ランドクルーザーのレストモッド車(FJ43:1981年式)    RM Sotheby’s/Darin Schnabel

基本的にはやはりオリジナル志向で、シャシーを分離する本格的なレストアを行い、新車以上のコンディションに復元。注目したいのは、クラシックな雰囲気を保ちつつ、現代のテクノロジーを盛り込んで快適に乗れるランクルを目指していた点である。

それを象徴するのがエンジンだ。後継モデルの70、80、100系ランクルで使われている直6 DOHC 4.5Lで燃料噴射式の1FZ-FE型に換装され、5速トランスミッションを組み合わせて現代の路上でも扱い易い。

このほかにも、純正部品を流用してパワーステアリング、フロントにディスクブレーキを備え、LEDヘッドランプ/オドメーターのデジタル化など、現代的な装備を備える。

注目の落札額だが最終的に17万3600ドル(約1823万円)という驚きの額で落札された。レストアを超越して、新たに作られた2020年製のFJ43といえる内容だけに納得できてしまう。

レストモッドの題材にされるということは、40系ランクルが誰もが認める名車であることの証しといえよう。

トヨタも動いた 40系の部品が復刻へ

日本ではトヨタ・ガズー・レーシング(TGR)が、ランドクルーザー生誕70周年の一環として「安心して40系ランドクルーザーに乗れるように、エンジン関係や駆動系、排気系部品を復刻する」と8月1日に発表した。

発売時期は2022年の初めごろを予定。これらの部品は「GRヘリテージパーツプロジェクト」として復刻され、純正部品として再販売される。


ランドクルーザーの部品復刻が、「GRヘリテージパーツプロジェクト」として、まずは40系を対象に始動することが明らかになった。    トヨタ

また特設ウェブサイト内で、復刻を希望するパーツを書き込めるアンケートフォームを開設。このアンケートで集まった要望は、次の復刻部品の選定に活用されるという。

40系の現在のオーナーは、コアなファンばかり。すでに部品の調達・互換性に詳しいので、復刻部品が発売されたときの彼らの反応が楽しみだ。