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東京五輪にまた新たな歴史が刻まれた!

「生涯最高」の目安となる指標のひとつ、それは記録です。今までで最高の準備をして、最高の思いを込めるからこそ届き得る「生涯最高」の瞬間に、新たな記録が誕生するのはある意味で必然です。これまでも多くの記録が五輪で生まれ、歴史に刻まれてきました。

東京五輪でも素晴らしい記録がいくつも生まれています。競泳では男子100メートルバタフライでのドレセル選手の世界新記録49秒45や、女子200メートル平泳ぎでのスクンマカー選手の世界新記録2分18秒95が誕生しました。記録ラッシュとまではいきませんが、コロナ禍のなかで十分な練習が積めない状況と、自由な調整ができない隔離生活、さらに不慣れな午前決勝とくれば致し方ないことでしょう。それでも、「かつての世界」よりも速い記録が生まれたことには選手たちの努力に敬服するばかりです。

そして迎えた7月31日、陸上競技でも歴史的な記録が誕生しました。世界記録の更新ではありません。しかし、確実にひとつの壁を打ち破るものでした。国立競技場で行なわれた陸上女子100メートル決勝、そこで生まれた新たなオリンピックレコード10秒61は、1988年ソウル五輪で生まれたフローレンス・ジョイナーによる記録を33年ぶりに更新するものでした。ついに、ついに、ジョイナーの記録をひとつ越えたのです!


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国立競技場のライトが消え、暗くなった場内。陸上トラックの、まさにこれから最速女王が決まろうとするあたりには光の道が映し出されています。プロジェクションマッピングによる光の演出。東京の街並みとオリンピックシンボル、そして舞台となる国立競技場。そして、そこに並び立つ選手たちの肖像と名前。この舞台に立てることを誉れに感じるような、美しい仕掛けでした。

注目は準決勝の上位を占めたジャマイカ勢。10秒台の記録をマークして決勝に進んだシェリー=アン・フレーザー=プライス、エレイン・トンプソン、シェリカ・ジャクソンのジャマイカ勢3人に、コートジボワールのマリージョゼ・タルーを加えてのメダル争いになるだろうと目されていました。準決勝の時点でほかの選手とは数メートル離れているような状態で、4人でメダルと色を争うという格好です。

そして、メダル争い以上に注目なのが記録でした。シェリー=アン・フレーザー=プライスは今年の6月に10秒63という記録を出し、「ジョイナー以外で最速」というところにまで記録を伸ばしてきていました。世界記録10秒49はまだ遥か彼方としても、五輪記録10秒61はいよいよ射程圏内。上り調子で大会に向かい、最後にいい風が吹けば、あるいは……そういう期待を持って見守ります。

↓北京五輪・ロンドン五輪の金、シェリー=アン・フレーザー=プライス!


↓リオ五輪の金、エレイン・トンプソン!


内側から順に紹介するのではなく、まさに主役をお迎えするように2⇒3⇒9⇒8⇒7⇒6⇒5⇒4レーンへと進んでいく各選手の紹介。鮮やかな黄色と赤の2色に仕立てられたフレーザー=プライスの髪も一層輝いています。その隣に立つトンプソンもゴールドの髪で登場し、どっちがどっちやら……ではなく、どちらが真の「ゴールド」なのかを決しようとする大舞台が整いました。

スタートは一発でキレイに揃い、最初の一歩ですでにフレーザー=プライスとトンプソンが抜け出しています。半歩リードするフレーザー=プライスを猛追し、中盤でとらえたトンプソン。中盤以降は後ろから伸びてきたシェリカ・ジャクソンと合わせてジャマイカ勢によるワン・ツー・スリーの態勢に。ただ、最後に突き抜けたのはトンプソンでした。トンプソンは残り10メートルほどで勝利を確信したか、左手を突き上げながらの入線に。

向かい風0.6メートルという決して最高とは言えないコンディションのなかでしたが、表示された速報タイムは10秒60!トンプソンはそのまま「フォォー!フォォー!」と叫び声をあげながらトラックを走り抜け、大の字になって横たわります。「フォォー!」は止まりません。確定タイムが10秒61と表示されると、そこにはあわせて「NEW OR」の表示が。それは1988年ソウル大会で記録されたフローレンス・グリフィス=ジョイナーの記録を更新したということ。ジョイナーの歴史上でももっとも速かった1988年夏の記録を、ついにひとつ更新したのです!

↓10秒61は世界歴代2位の記録!この上にはもうジョイナーのベストタイムしか存在しない!


↓ゴールする前に記録の予感があったかもしれないですね!掲示板を指差しながらの入線!


↓ジャマイカ勢が表彰台を独占!強い!


↓NHKによるまとめ動画はコチラをどうぞ!




ジョイナーの記録にまつわる疑惑、それはまことしやかであります。ただ、もはや確かめる術はありません。確かめられないものはどうしようもありません。長く五輪のたびに表示される「WR10.49、OR10.62」の表示もどうしようもありませんでした。それが疑惑によるタイムなのか、不世出の偉人によるものなのか、どこかおさまりが悪い心持ちで見る時間がつづいてきました。ウサイン・ボルトの記録のように「永遠」を同じ時代に目撃できた幸福を感じるのは難しい部分がありました。

しかし、長い時間をかけて、技術・トレーニング・用具・トラックの舗装などさまざまなものを進化させて、ようやくそこに届き得るようになりました。歴史に残る記録をひとつ更新し、女子100メートルに関しては歴代すべての記録を見渡しても「10秒49」ただひとつだけが残る状態となったのです。しかも今回のオリンピックレコードが出た条件は向かい風0.6メートルという悪条件のなかのもの。一般に追い風1メートルで0.1秒タイムが変わると言われていますので、ここから2メートルぶん追い風に条件をずらせば「追い風1.6メートル、記録10秒41」という世界も現実味を帯びてきました。

半ば挑戦を諦めかけ、「実質世界新」を競うようになって30年あまりの時間が流れた陸上女子100メートル。その時計がようやく動き出したような感覚さえあります。10秒49は目指してもいいタイムかもしれない。いつか超えられるタイムかもしれない。東京五輪によって、世界の才能たちのマインドが変わるきっかけが生まれたように思います。

まだ大会は始まったばかりですが、陸上競技に関しては「マインド」が変わるたくさんの出来事が起きるのではないか、そんな気がしています。同日に予選が行なわれた男子100メートルでも、予選の段階から9秒台が連発されていました。ロンドン五輪・リオ五輪では10秒2台でも突破できた予選が、今大会は10秒1台前半までしか通過できませんでした。国立競技場にはロンドン・リオ大会のものをさらに進化させたイタリア製の二重ゴムによる高速トラックの技術が使われているとのことで、その効果が顕著に表れているように感じます。

期待の日本勢が「高速化」についていけなかったことは残念ですが、いい記録が出るのは世界のたくさんの人にとってよいことです。人間は進化しているんだ、成長しているんだということを数字としてハッキリと感じることができますし、たとえ「永遠」の記録であっても目標があれば頑張り甲斐がありますから。10秒62を更新し、10秒49を「目標」へと変えることができた、その点で東京五輪と国立競技場は早速大きな仕事をしたなと思います。日本勢も何とかその波に乗っていってほしいものです!

↓1988年、ほかの選手は遥か後ろに置き去りにされたジョイナーをついに抜いた!


もしかしたら、次世代のジャマイカ選手から10秒5、10秒4も出るかもしれない!

頑張れジャマイカ、ジャマイカに任せた!

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日本勢も国立競技場に素晴らしい歴史を刻めるよう、頑張ってください!