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「美しい体操」を継ぐ者!

栄光の体操ニッポンに記念すべき100個めのメダルが生まれました。28日に行なわれた体操男子個人総合決勝、日本の橋本大輝さんは「難しいことを美しく、全6種目でやる」という素晴らしい演技で金メダルを獲得。ロンドン・リオ大会の内村航平さんからつながる3大会連続での日本勢による個人総合制覇を成し遂げ、体操ニッポンここにありを示してくれました!


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予選をトップで通過して臨む決勝の舞台。トップグループはゆかから始まり鉄棒で終わるローテーションです。予選1位の橋本さんは最終演技者となりますので、自分で勝ちを決めることができます。しかも鉄棒は種目別でも1位で予選を通過している大得意の種目。少々の点差があっても最後に鉄棒で引っくり返すのは想定内です。着地をピタリと決め、勝利を確信する。まさに栄光の架橋の瞬間が待っています。

その演技内容は素晴らしいものでした。まず最初の種目のゆか。橋本さんは最初のアクロバットでG難度の大技リ・ジョンソンを見せます。予選・団体ではラインオーバーをしていた技ですが、飛び出しを調整して今回は見事に決めました。この技は内村航平さんが世界選手権でゆかを制したときに使っていた技で、この技を伸身でやると「シライ3」になるという、体操ニッポンとしても思い出深い技。最後の後方伸身宙返り3回ひねりもピタリと決めて素晴らしい滑り出し。Dスコアでは6.2で並ぶライバルたちにEスコアの出来栄えで差をつけ、14.833点でトップに立ちます。

2種目めのあん馬。落下しやすい種目で、6種目のなかでもっとも緊張感漂う種目。国内選考会では1演技で2度の落下もあった橋本さんですが、恐怖など微塵も見せず、むしろここを勝機としました。ピンと伸びた開脚旋回からあん馬の端に移動する高難度のアイヒホルンを決めると、移動技もスムーズにこなし、降り技もしっかりE難度で決める完璧な内容。あん馬で逆に突き放すぞという「鋼の精神」で15.166点の高得点を叩き出しました。解説席にはアテネ団体金のメンバーで世界一美しいあん馬を実施していた鹿島丈博さんがいましたが、その鹿島さんをして感心のため息をつかせるような演技でした。

3種目めのつり輪。ここはややDスコアでライバルに及ばず、守りの演技となる種目。見た目には問題ない演技に見えましたが、予定の構成ではDスコア5.6のはずが採点ではDスコア5.3という扱いとなり0.3点もスコアが下がっています。体操で0.3点だとC難度の技が丸ごとひとつ消えるということに相当します。中盤にある前方屈伸宙返りから十字懸垂に入る「ホンマ十字懸垂」が肩が上にあがっているので「支持があった」として減点されたか、その直後の後ろ振り上がり開脚上水平支持が腰が上がり過ぎ(脚が下がり過ぎ)て不認定となったか、何かがあったのでしょう。日本チームも問い合わせをかけますがスコアは変わらず。やや雰囲気が悪くなる出来事でした。

↓雰囲気が悪くなりそうだったので応援の方が盛り上げてくれましたよ!


熱い応援を受けて臨む4種目めは跳馬。橋本さんは価値点6.00の大技ヨネクラもできますが、今大会は器具が合わないのか封印中。ライバルと横並びの価値点5.60のロペスで臨みます。橋本さんのロペスは、踏み切り直後に全身が垂直にピンと伸びて立つのが美しく、高さがあって距離も大きいの特徴的。予選・団体でも大きく一歩動いてもなおEスコア9.2程度(合計14.800点程度)を獲得していました。

個人総合の演技では着地時に着地エリア外へのはみ出しこそありましたが、片足はライン内に残っており、「エリア外に触れたこと」による0.1点の減点が追加されるだけ(※両足出るとさらに大きな減点になる)。団体決勝が14.833点であれば個人総合が14.700点というのは、いたって妥当かなと思います。「はみ出した!」ではなく「左足をよく残した!」と言うべき場面でした。いい粘りでした。

4種目を終えてトップに立つのは中国の肖若騰で、以下に中国の孫煒、ロシアのナゴルニー、橋本さんとつづきます。トップ肖若騰と橋本さんとは0.401点差。次の平行棒で微差負けまでにおさめれば鉄棒での逆転は射程圏内です。また、5位には北園丈琉さんがつけており、若いふたりが世界トップを相手に奮闘しています。

勝負の5種目め平行棒。次の鉄棒は橋本さんのチカラがひとつ抜けていますので、この種目を終えて0.5〜0.7点差程度までなら逆転可能です。橋本さんは美しい実施から、最後のF難度の降り技で着地をピタリと決めて15.300点!メダルの色を争う肖若騰は15.366点、ナゴルニーは15.400点とほぼ横並びとなり、これで完全に鉄棒で「自分の演技をすれば勝ち」という状態になりました。相手は関係なく自分次第。もはや負ける気はしません。

最後の鉄棒、橋本さんは最終演技者です。トップを争う肖若騰は何やら減点があった模様。0.3点ほど予選・団体よりもスコアが下がっています。演技終了後に審判員への演技終了を表明しなかったことによる減点ではないかと言われていますが、もはやそれがあってもなくても大勢に影響はありません。橋本さんはカッシーナ、コールマンなど難度の高い手放し技を織り込みつつ、落下なく演じ切りました。Dスコア6.5の構成、普通の出来栄えであれば余裕の逆転です。着地は一歩動きますが、問題なく決めて勝利を確信した橋本さん。スコアが出る前から日の丸を背負い、笑顔です!

↓この架け橋はパリに届く!早くも連覇の予感しかない完勝でした!


↓NHKによる全演技まとめ動画はコチラ!


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演技構成、実施内容、戦い終えてライバルたちと讃え合う姿、そして演技後の受け答えまで含めて美しすぎる新王者でした。5年前はまだこの東京は目標ではなく夢だったと語る若者が、今は穏やかな喜びを見せながら「ここで涙を流すと今の状態に満足してしまっているということ」「チャンピオンは涙を流さず前だけ見ている」「これからはディフェンディングチャンピオンとしてやっていく」と日本の大部分の人を「意識が高い…」と撃ち抜く名言を残している。何て強く、何てスケールが大きい新王者でしょうか。落下するしないなんて心配、まったく必要ありませんでした。

この新王者の登場にはロシア・中国の実力者たちもほとほと唸ったことでしょう。「去年やりたかった」「去年なら勝てたかも」「今回はウチムラもいないから自分が金だと思ったのに」と。そのあたりはやはり体操ニッポンのチカラなのかなと思います。幾多の名選手が連なり、「●●を見て育った■■」を生み出してきたからこその体操ニッポンです。「冨田洋之に連なる内村航平」がいるのなら、「内村航平に連なる橋本大輝」が出てくるのは必然でした。それを目指すから、それになるのです。それが伝統のチカラです。

さぁ、心は早くもパリに飛び、ロスも見えてきていますが、橋本さんにはまだ今大会やることがあります。全体1位で通過した種目別鉄棒の決勝です。DスコアとEスコア、いずれを見ても橋本さんが自分の演技をすれば金メダルは間違いありません。唯一上回りそうだった選手は惜しくも予選で落下して大会を去りました。「もはや敵なし」です。キッチリと決めて、この大会を締めくくってもらいましょう。

世代は交代するものではなく受け継いでいくもの。

遺伝子のように、次の世代に前の世代の何かが受け継がれ、受け継いだものの大きさで未来が変わっていきます。橋本さんが受け継いだものの大きさは、五輪の金ひとつにおさまるものではありません。さらに大きく、さらに美しい存在となって、世界を席巻していってほしいと思います。節目の100個めから、新たな時代を刻む次の1個へ。「銅なら3種類揃うよ!」みたいな悪魔のささやきは振り払って、しっかりと金を目指してほしいと思います。それを決める際は、体操ニッポン伝統の吸い付く着地を見せてくださいね!



橋本さんの鉄棒金メダルが102個め以降になっていると、よりよいですね!