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最後まで試合をやり抜けますように!

東京五輪が今日正式に開幕します。想像していたものとはあまりに違う現実の到来に、本当に未来というのはわからないものだなと少し笑ってしまうような気持ちです。まさか今日ここに至って、今夜開会式があるのかないのかを考えていようとは思いもしませんでした。空前のサプライズ演出、「ない」があるんじゃないかと震える思いです。

しかし、心はいたって穏やかです。選手たちがいて、試合を行なう。すべてはそこから生まれ、始まるものです。楽しいお祭りがあるから素晴らしいわけではなく、めくるめく歓待があるから素晴らしいわけでもなく、旅の思い出があるから素晴らしいわけでもありません。今この未曾有の危機にあって、たったひとつ守りたいものは「試合」です。たったひとつ残したいものは「試合」です。試合さえあれば、必ず道は開かれます。

その意味で、またひとつ日本と東京は大きな「勝利」を得ました。

22日に行なわれた男子サッカー予選リーグの日本VS南アフリカ戦。対戦相手の南アフリカ代表は、選手2人、スタッフ1人から新型コロナウイルスの陽性反応が出て、チーム18人が濃厚接触者となっていました。試合開始6時間前のPCR検査の結果によっては、試合に必要な人数(※FIFA規定では13人)に満たなくなる可能性もあり得るという危機的状況でしたが、各選手の陰性が確認され、何とか試合を行なうことができました。

結果云々以上に、何よりもまず「試合が行なわれた」ことが素晴らしかったなと思います。勝てばいいだけであれば「不戦勝」も大いに結構かもしれませんが、不戦勝では「光」は生まれません。人間の「頑張る」姿は見られません。今何よりも必要なものは試合のなかにこそあります。相手がいるから、試合があるから、多様な世界を知り、連帯を結ぶことができます。互いを認め合い「分断」を改めることができます。

すでにいくつかの競技では陽性判定による棄権という事態が生まれており、大会自体を棄権するという国なども出ていますが、これから先ひとつでも多くの「試合」が開催されることを願います。希望は試合のなかにこそあります。試合が失われるピンチを脱した南アフリカ戦は、その時点で日本の勝ち負けすら問題にならないほど素晴らしい「勝利」でした。両チームが勝者でした!


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東京スタジアムに入場してくる両チーム。「両方来た」ということだけで、すでに大満足の気持ちです。このコロナ禍のなかで日本に来てくれた南アフリカ代表、陽性者の発生のなかでも可能な限り試合をやらせてあげられるように尽力した関係者、それを堂々と迎え撃つ日本代表。誰が欠けても生まれなかった記憶が、今日ここで生まれる。そのことに感謝の気持ちを抱いてのキックオフです。

今大会は22人の選手から試合ごとに18人を登録するという仕組みで行なわれます。日本代表では守備の要と目された冨安健洋さんや、Jリーグで大活躍を見せる三笘薫さんらがメンバー外となりました。どうやら故障だという話ですが、夏の連戦となること、対戦相手の力関係を考えると「休むならココ」かなとも思います。メダルを目指すなら6試合を戦うことになる長丁場はどのみち総力戦は避けられません。誰がいるとかいないとかではなく、全員を信じて戦うのみです。

そして始まった試合。展開としては日本が主導権を握る形となります。ボールを持って、まわして、攻め込んでいく日本と、リスクを負わずにしっかりと受け止めようという南アフリカ。初戦ということもあって慎重な入りとはなりますが、それでも前半32分には三好康児さんの惜しいシュート(※GKが辛くも弾く)や、直後のコーナーキックの流れからゴールを割った場面(※キレイなオフサイド)なども生まれ、随所で仕留めにいく動きも。硬さもなく、悪くない立ち上がりです。

むしろ、ゴールキックなどでボールが高く上がるたびにしっかりとボールを追いかけて視聴者を酔わせるカメラワークであるとか、先手先手でカードを出してくる主審とかのほうが、「五輪で硬くなってるか?」「もっと落ち着いていいぞ」「今からでもほかの人と交代できるかな?」となだめたくなるくらい。選手たちのほうが「普通ではない」状況にもよほど落ち着いています。

↓あと、解説席の森岡隆三さんも落ち着いてください!

「イェーーー!!」「うーん、オフサイドですかぁ?」

いや、オフサイドでしょ、いくら何でも!

大前提として林さんも落ち着いて左右を見てから飛び出しましょう!



両チームともメンバーの変更なく迎えた後半。引きつづき南アフリカはしっかり守っていく構えです。グループリーグのライバルを見ると、メキシコ・フランスと手強い相手が揃っているなかで、メキシコはそのフランスを4-1で撃破するというなかなかの仕上がり具合。となるとこの南アフリカ戦は、引き分けではなく、しっかりと勝っておきたいところ。誰が、どうやって、相手のドン引きを崩すのか。そこを崩せるようなエースはいるのか。

その期待が懸かるのは、もちろん久保建英くんさん。ボールを持つ、動かす、蹴る、すべての動きが滑らかで「ヌルヌル」する質の高さ。今回の五輪で初めて久保くんさんを見る自称スポーツくわしいオジサンなら「この選手は将来レアル・マドリードかバルセロナに行くだろうね、間違いない」とか断言しちゃうだろうという見事な動き。前半終了間際のフリーキックのほか、後半9分のドリブルで切れ込んでのシュートなど、もう少しで入りそうな気配は十分。あとは決めるだけ、というところです。

そして、待望のゴールが生まれたのは後半26分。日本が左サイドから右サイドへと大きく振った場面。逆サイドで受け手となった久保くんさんは吸い付くトラップで、ボールをピタリと足元におさめます。南アフリカのCBは寄せが間に合っておらず、サイドのDFとの1対1の状況。ここで久保くんさんは大きく切り返してDFを外すと、そのままファーサイドへと左足一閃!これが世界のプレーだと見せつけるかのような先制点を決めました!

↓野球だったら粘着性物質の点検が行なわれるんじゃないかという、吸い付くトラップ!


↓久保くんさんさま先生は「K」ポーズで自らのゴールをお祝い!


↓ジャマイカ戦で鏡文字になってしまった点をしっかりと修正してきました!

指よりも片手と片足を上げて全身で「K」にするパターンのほうがいい気がしますが、まぁそこは裁量で!


追加点を狙う日本と、ワンチャンスでの同点を狙う南アフリカ。エリア内で南アフリカにシュートを撃たれる場面や、左サイドを単独で突破される場面など、ヒヤッとするところもありましたが、結局このまま1-0で試合は終了。日本はエースのゴールと無失点の守備とで、素晴らしい滑り出しとなりました。メキシコ五輪以来のメダル獲得、期待して見守れそうです!

↓日本、南アフリカ、ともによくここにたどり着いてくれました!ありがとうございます!



すべての選手にとってあてはまる話ではありますが、とりわけ今大会の日本勢に対しては、人生を捧げてこの日に備えてきたことが伝わるようなプレーを期待したいと思っています。勝敗はともかく「生涯最高」と胸を張って言えるような戦いぶりを。開会前日まで「無敗」とした日本勢は、今のところしっかりとその期待に応えてくれています。いい試合たちでした。

開催自体にも賛否があるような状況のなか、たくさんの人が地獄のような否定の声と感染症と戦いながら「試合」を守っています。弱音を吐けば「やめてしまえ」と言われ、失敗があれば「やめてしまえ」と言われ、何もなくても「やめてしまえ」と言われるような逆境のなかで、何とか試合だけはやらせようと奮闘しています。誰よりも選手たちのために。

その奮闘が報われるとすれば、この日・この時・この瞬間にしか発揮されなかっただろう「生涯最高」が生まれたときです。この試合をやった甲斐があったと思えたときです。「試合をやらせてくれてありがとう」「素晴らしいものを見せてくれてありがとう」「頑張ってくれてありがとう」という感謝が交換されたとき、その奮闘はようやく報われるのです。

そういう戦いができるかどうか。

バトンは今夜、本格的に選手に渡されます。

しっかりと受け止めて欲しいなと思います。

つないできた人の思いに応えられるように。

あの選手につなぐことができてよかったと思えるように。

本当に、本当に、本当に頑張ってください!


「なくてもよかった時間」など一瞬たりともないような17日間にしましょう!