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ヤフオク出品 「19年前の新車」とは

text:Kazuhide Ueno(上野和秀)editor:Taro Ueno(上野太朗)

新車の日産スカイラインGT-R(R34)がオークションに出品、それもレアな最終限定車のVスペックIIニュルが! というニュースがウェブを駆け廻った。

【画像】いったいどれだけキレイなの? 走行10kmのGT-R【もっとくわしくみる】 全102枚

それは日本を代表するコレクターズカー・オークションハウスのBHオークションと、ヤフーオークションによるジョイントで「コレクションカーオークション-コレクションNo.2」と題され、7月5日から11日におこなわれた。


コレクターズカー・オークションハウスのBHオークションと、ヤフーオークションによるジョイントで「コレクションカーオークション-コレクションNo.2」に出品された日産スカイラインGT-R(R34)VスペックIIニュル。    BHオークション

普通に考えれば存在しないはずの19年前の「新車」のGT-Rが売りに出されたことから、クルマ好きからメディアの話題を独占した。

そして注目されたもう1つの理由が5000万円というスタート価格だ。

日産GT-R(R34)が沸騰していた

2014年からのコレクターズカー・バブルが弾けたあと、フェラーリなどのスーパーカーは値を下げたが、その余波は思わぬところに飛び火する。

それまで順当な額で取引されていた日本車の象徴的といえるスポーツモデルたちだ。


2019年開催のBH東京オークションの主役として用意されたホンダNSX-Rは激しい応酬の末、4400万円(手数料込で4840万円)で決着。    上野和秀

まずホンダNSX-Rが急騰し、その波は日産スカイラインGT-R(R32)へ波及したのちGT-R(R34)に及ぶ。

現行のR35 GT-Rがデビューした直後は順当な値落ちした額で取引されていたが、バブル状態に引きずられて相場は急上昇。

新車時で素のGT-R(R34)が499万8000円、後期型のVスペックIIニュルが610万円だったものが、2018年になると数万km走った前者が700〜800万円、後者は1500万円超えまで跳ね上がってしまう。

ちなみに現在の価格を中古車情報サイトで調べてみると、前期型の素のGT-R(R34)は1280万円がボトムで、23万km走った2001年VスペIIが2000万円、2002年VスペIIニュルは走行3.4万kmで3580万円と驚きのプライスタグが付く高騰ぶりだ。

2年前にも出品 BNR34-403129

今回出品された未登録新車で走行10kmのGT-R(R34)VスペックIIニュルでシャシーナンバーはBNR34-403129となる。

実はこのBNR34-403129は、一度オークションに姿を現している。それは2018年1月に幕張メッセで行われたBHオークションの東京オートサロン・オークション2018に出品され、3520万円で落札されていたのである。


日産スカイラインGT-R(R34)VスペックIIニュルのオドメーター。走行10km。    BHオークション

落札者は未登録新車で走行10kmという呪縛から、登録もできず保管することになってしまったと考えられる。

今回はそのオーナーからの委託出品と発表されている。

カメラ・コレクターの間では元封未開封のライカを買っても、開ける勇気が無くそのまま保管、あるいはそのまま売却したという話しを良く聞く。

このGT-R(R34)の前オーナーも同様の心境で、維持保管に疲れてしまったのかもしれない。

スタート額5000万円は高いのか?

今回出品されたGT-R(R34)のスタート額は5000万円で最低落札額の設定は無い。

この額を検証するために最近の中古車相場を調べてみると、前述のようにとてつもない額に跳ね上がっていた。


ニスモ・レストアドカーのR32スカイラインGT-Rプロトタイプ。    上野和秀

事の発端はGT-R(R34)が注目されたが需給のバランスが崩れたという些細なことだったと推測される。

しかし、一旦値上がりモードに入り高額でも売れてしまうとそれが相場になり、さらに値上がりを招くという図式にはまってしまった。

GT-R(R34)は中古車の流通数が限られていること、売る側の思惑が交錯し値上がりに拍車を掛けることになった。

今回出品された未登録新車のGT-R(R34)の5000万円スタートという額は、昨今の相場に照らし合わせれば妥当な額といえる。

使い込まれた同型車が3500万円以上することを考えれば納得できる。

3500万円のVスペ・ニュルといえど走り込んだ中古車である。各部にはそれなりの疲労(ヤレ)が見られ、それを新車同様に完璧な状態に再生するとなると1000万円では足りない。

最近は純正パーツの価格が上がっており、それよりもデビューから20余年経過したモデルだけに欠品が多く、仕上げには更に手間と費用が掛るからだ。

先ごろ登場したニスモによる新車以上といえる完璧なレストアが施されたGT-R(R32)が約5000万円することを考えれば、未使用新車の貴重さは計り知れない。

ラインを出たそのままの状態を保ったタイムカプセルなのだから。

6050万1円で決着 延長1時間5分の激戦

オークションは当初様子見で始まったが、ウォッチリストは早々に表示できる上限の999を超えていた。

動きがあったのが残り1日となった10日の18時過ぎ。ここで初の入札が入ったのである。


日産スカイラインGT-R(R34)VスペックIIニュルは、最終的にスタート価格を1000万円余り上回る6050万1円で決着がついた。    BHオークション

最終日となる11日には11時21分に2人目の入札が入り、16時59分に3人目が入札。大きく動き出したのが終了10分前で、ここから3名のバトルが始まった。

最後は2名のバトルが延々と続き、自動延長により決着がついたのは予定終了時間の1時間5分後だった。

オークションの常で、欲しい人が複数いれば競り合って値が上がり、さらにどうしても欲しいと人が頑張れば思わぬ額まで上がってしまう例を数多く見てきた。

今回のオークションはまさにその典型どおりといえた。

最終的にスタート価格を1000万円余り上回る6050万1円で決着がついた。

傍から見れば高価だが、熱烈なGT-Rと思われる落札者にとっては納得できる額だったに違いない。

それにしてもとんでもない額で落札されたものだ。