クルマの「水はね」は泣寝入り? 損害賠償は請求可能? トラブル防止方法とは

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走行中のクルマに水や泥をひっかけられた! 賠償金は請求できる?

 雨が多く降る梅雨の季節では、見通しが悪くなるため、ドライバーは運転に細心の注意が必要です。
 
 また、歩行者の場合では、歩いている際にクルマから水や泥などをかけられる可能性もあります。
 
 そんな状況に遭遇した際は、ドライバーに対して損害賠償を請求することはできるのでしょうか。

雨天時はクルマの水はね・泥はねが多く発生する、もし水はね歩被害に遭ったらどうする?

 この点について、道路交通法第71条第1項にて「ぬかるみ又は水たまりを通行するときは、泥よけ器を付け、又は徐行する等して、泥土、汚水等を飛散させて他人に迷惑を及ぼすことがないようにすること」と定められています。

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 違反をした場合は、大型車は7000円、普通自動車と二輪車は6000円、原動機付自転車などは5000円の反則金が科せられるとされています。

 また、道路交通法で違反行為と定義されている以上、クルマに水をはねられて汚された状況では、民事訴訟で損害賠償を請求することは可能といえます。

 しかし、実際に損害賠償を請求するには、相手の過失を裁判で立証していく必要があります。

 では、クルマの水はね、泥はねをさせたドライバーにどうすれば責任を立証することができるのでしょうか。

 道路交通法違反を問う場合、水はね、泥はねをしたクルマのナンバー、車種、色、被害を受けた日時、場所といった情報を元に、警察に被害届を提出しなければなりません。

 また、その後の警察の捜査では、水はね、泥はねが実際に起きたという不法行為の構成要件を満たす必要があります。

 この場合、「ドライバーが水はね、泥はねをした事実を認める」、もしくは「水はね、泥はねをしたクルマのドライブレコーダーに不法行為の記録が残されている」といった道路交通法違反を立証するための証拠が必要となるでしょう。

 しかし、実際のところは水はね、泥はねをしたクルマはスピードを出していることが多く、すぐに立ち去ってしまうので被害届を提出するための情報を集めることが難しいのが実情といえます。

 また、民事訴訟を起こして損害賠償を請求するには、道路交通法違反として警察に被害届を出したときと同じように賠償を請求する相手の情報を確定し、相手側の過失を立証するための証拠を集めなければなりません。

 さらに弁護士に依頼するケースがほとんどのため、損害賠償を裁判所が認めたとしても、賠償額はクリーニングにかかった費用と慰謝料程度であり、弁護士に支払う費用のほうが高くつきます。

 弁護士を付けずに個人で訴訟を起こすことも可能ですが、裁判で準備する書類なども膨大で、訴訟にかかる金額や時間に比べて、損害賠償が認められた場合に支払われる賠償額があまりにも少なすぎるため、諦めてしまう歩行者が多いようです。

※ ※ ※

 では、雨天時のクルマの水はねは、どのような対策方法があるのでしょうか。

 雨天時のクルマの水はねについて、JAFの担当者は以下のように話します。

「水たまりができているような道路では、ドライバーはタイヤではね上げた水しぶきが歩行者にかからないよう十分に注意して走行しなければなりません。

 また、水はねのトラブルは歩行者のみではなく、対向車とすれ違うときも、水はねによって急に対向車の視界を塞いでしまうこともあり、大変危険です。

 ドライバーはこのような可能性があることを頭に入れ、速度の出しすぎに十分注意して運転することが大切です」

クルマの水はね・泥はね行為はドライバーが被害者になることも!?

 一方で、道路交通法では、水はね・泥はねが違法行為とされていますが、被害者となるのは歩行者だけでなく、ドライバーも被害者になる可能性もあります。

 例えば、急に大雨が降って道路に大きな水たまりができた場合、そこにクルマが減速せずに通過すれば、対向車の視界を塞ぐような水はねを起こしてしまうことがあります。その場合、急に視界が塞がれば事故の原因のひとつになります。

 首都高速道路株式会社の東京管区気象台発表のデータ[根岸1]によると、「雨の日は晴れの日の4倍」の割合で事故が起きているといわれています。

 とくに雨天時は、スリップしやすくなり交通事故につながるといえます。

 また、JAF(日本自動車連盟)ではクルマの速度と水はねの影響について、「深さ1cmの水たまりがある道路で、そこから1段上がった歩道」といった状況で検証をおこなっています。

 実際の検証では、クルマが歩行者の脇を通り過ぎるときの間隔を約50cmとし、それぞれ時速10km、20km、40kmの3段階の速度で検証。

 時速10kmであれば、歩道に水はねが届きませんでしたが、時速20kmでは、歩道を歩く歩行者の足元まで水がはねていきました。

 さらに、時速40kmキロでは、歩行者(身長約150センチ)の肩の高さまで水が飛び、クルマの横側に2mも水はねが飛びました。この検証からも水たまりでの徐行運転の大切さがうかがえます。

 このように雨の日は、晴れの日よりも注意して運転をしなければならないのは大前提ですが、通常よりも前のクルマとの車間距離を大きく開け、徐行するように走行することが大切といえるでしょう。

クルマの水はね・泥はね行為は、道路交通法の「泥はね運転違反」にあたる

 また、水はねの発生要因について、前出のJAFの担当者は次のように話しています。

「水はねは雨量や天候によって異なり、雨量が多ければ、路面上のくぼみに水が溜まりやすくなり、車が水たまりの上を通過すれば水はねを引き起こしてしまいます。

 たとえ路面にくぼみなどがなくても路面上に水の層ができ、その層が原因で水はねを起こす可能性が考えられます。

 また、雨が上がった後でも曇天の場合、路面の水は蒸発しづらい状況になります。

 とくにくぼみに溜まった水は蒸発せずにしばらく残ることが多いため、雨上がりでも水たまりには注意が必要です。

 一方の晴天時でも近くに歩行者などがいて、水はねを発生させる可能性があるときは、速度を落として走行する必要があります。

 冬季の融雪時も水たまりやぬかるみが発生しやすいので注意することが大切です」

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 歩行者は、歩行中にクルマのドライバーに水はねをされても、その場で解決できなければ、後になって違法行為を問うことは難しいといえそうです。

 一方で、雨天時の走行は、ドライバーも事故につながる可能性あります。ドライバーは徐行などをして、お互いが気をつける意識をもつことが大事でしょう。