ウインカーやブレーキランプがなく動きを予測しづらい

 ここ数年、道を走っていると自転車愛好家(サイクリスト)が増えている印象はないだろうか。

 自転車産業振興協会の統計データを見ている限り、自転車販売のピークは過ぎた感もあるが、それでもスポーツモデルの販売は好調だ。実際、2021年3月の販売シェアを見ると、スポーツモデル(スポーツバイク・クロスバイク)は20.6%で電動アシスト自転車の11.0%に対して倍近い台数が売れているのだ。

 そうしたスポーツモデルの自転車は、基本的に車道を走る。いや、スポーツモデルでなくとも、法律的には自転車は軽車両であり車道を走るのが基本なので当然なのだが、最高速が原付バイクを超えることもあるスポーツモデルであれば幹線道路を走ることもサイクリストとしては当たり前と捉えているのが現実だろう。

 ただし、これはとくに四輪車を運転しているドライバーからすると危険と感じることも多い。スポーツモデルの自転車が十分なスピードが出るとはいっても、それでも幹線道路の流れている速度に乗れるかといえば難しく、車線左側を走る自転車を四輪車は追い抜きながら走る必要があるからだ。その際に接触してしまえば大きな事故につながるのは間違いない。

 もし交通事故が起きてしまったとして、法律的には車両同士の事故になるのだが、それでも交通弱者を守るという原則からすると四輪側が不利になる(もっとも怪我を負うのは主に自転車側になろうが)。そもそも交通事故は起こさないに越したことはない。

 まず、注意すべきなのは多くの自転車にはウインカーやブレーキランプがなく、バックミラーも備えていないということだ。そのためドライバーからは、どのような動きをするのか予測しづらい。サイクリストは頭を動かして後ろを見ない限りは、後方確認ができてないし、これからどのような動きをするのか周囲に伝える術も基本的には持たない(手信号を実践するサイクリストもいなくはない)ということになる。

前方の状況やサイクリストの様子を観察すべし

 自転車の動きを気にしすぎる必要はないが、ある程度は観察する意識を持つことが重要だ。

 たとえば、前方に路上駐車の車両があれば車線中央側に自転車が進路を変える可能性がある。また、歩道を走っている自転車が歩行者の増加や障害物を避けるために車道に飛び出してくることもある。そのあたり広い視野で周辺状況を把握することはドライバーの務めだ。

 つまりドライバーとしては自転車の動きを予測しつつ、追い抜いたりしなければならないことになる。ましてキツイ坂道の登りなどでは、自転車を左右に振りながら必死に走っているサイクリストも少なくない。そうしたケースでは自分のことで精一杯で、周囲を確認する余裕などはないと考え、追い抜く際にもかなり距離を空ける必要があるだろう。ふらつく可能性が予見されるのに、ギリギリで追い抜くようなリスクを冒す必要はない。

 それでも、ある程度のリスクを考慮しながら追い抜いた自転車が、信号待ちのときに左側を追い越していき、再び抜かなければいけないような状況が起きるとイライラするものだ。その意味ではサイクリスト側も幹線道路では信号待ちのたびに左側を走って追い越すという行為は周囲に悪い印象を与えてると自覚すべきだ。

 自転車は軽車両であり、多くの右折レーンがあるような交差点では二段階右折をすることが定められている。にも関わらず、右折レーンに入ってくるサイクリストも少なくない。運転免許を持っていると、50cc以下の原付バイクが二段階右折の対象ということは習うので、原付バイクだけが二段階右折をしなければならないと思っているかもしれないが、自転車を含む軽車両も基本的には二段階右折が基本だ。こうした違反もサイクリストのイメージを悪くしているのは否めない。

 さて、自転車は車道を走ることが基本となっているが、交通状況などから「やむを得ない」と認められる場合は歩道を走ることも許されている。もし自転車に乗っているとき車道の流れが速くて危険だと思えば、歩道を走るという選択もできる。もちろん、その際は歩行者優先であるので、歩道を全開で走るというのはNGなのは言うまでもない。

 余談だが、道路交通法では13歳未満もしくは70歳以上の人が自転車を運転しているときは歩道を走ってもよいとされている。つまり小学生や高齢者は自転車で車道を走ることが危険であろうと法律は考えているのだ。逆に言えば、そうしたサイクリストは体力面を含めた運転スキルにおいて危険性が高いことが予見できるわけで、ドライバーとしても子どもや高齢者のサイクリストを見かけた際は、より一層の注意を払う必要があるといえる。