現状、需要が供給を上回っているという「WF-1000XM4」

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ソニーの新たなワイヤレスイヤホン「WF-1000XM4」(XM4)の供給に、遅れが出ている。2021年6月25日発売に先駆け、6月9日から予約を受け付けていたが、6月17日にソニーが、「生産上の都合により商品のお届けまでにお時間をいただく状況」だと発表した。

オンライン販売を行う「ソニーストア」の販売ページでは、「需要に対して供給が十分にお応え出来ない状況が続くことが想定」されると説明。すぐには手に入らない状況に、ソニーグループのゲーム機「プレイステーション5」(PS5)を連想する人もいるようだ。

ソニーの生産能力の問題なのか

「XM4」は、2019年に発売された「WF-1000XM3」の後継機。本体と再生機器をつなぐコードが一切存在しない「完全ワイヤレスイヤホン」のシリーズだ。着用時に空調の音といった雑音を軽減するノイズキャンセリング性能を有する。

市場調査を行っているBCNのアナリスト・道越一郎氏によると、「WF-1000XM」シリーズは人気のイヤホン。BCNが全国の家電量販店などから集計しているデータによると、「XM4」は2021年6月7〜13日の週、予約段階ながら「完全ワイヤレスイヤホン」カテゴリーでの売上台数が2位だった。ここでは予約を売り上げとしてカウントしている。

「完全ワイヤレスイヤホン」では、米アップルの「AirPods」シリーズが最も売れており、市場をけん引してきた。一方で、ソニーブランドに魅力を感じ、音質へのこだわりを評価する面から、「XM」シリーズも一定の支持を集めてきたと考えられる。

加えて、サイズの小型化といった改善により、発売前にも関わらず「XM4」の予約が非常に多くなったのではないかと道越氏は推測した。

ソニー製品の品薄といえば、PS5も品薄が続いており、入手困難だ。今回「XM4」でも供給が追い付かない事態が生じたことで、ソニーグループの生産能力を批判する厳しい声がインターネットの掲示板上の一部に存在する。

「あまり在庫を抱えない」業界の流れ

道越氏によると、近年のデジタル製品・家電製品業界では、「あまり在庫を抱えない」という方針が主流になっているという。在庫を余らせて経営を圧迫させないように、必要最低限と考えられる生産台数に絞る動きが、ソニーに限らず業界全体でみられる。

「適正な在庫」の数を少なめに設定しているため、予想以上の需要が生まれた時には即時増産といった対応が難しいケースがある。さらに新型コロナウイルス禍によりサプライチェーン(供給網)に乱れが生じており、半導体をはじめ製品の生産に必要な部品の調達が容易でなくなった。

そのため、人気製品の品薄になったり、供給が安定するまでの時間が長引いたりする事態に陥りやすくなっているという。道越氏は「XM4」やPS5でも、同様の可能性を指摘した。