映画『るろうに剣心』シリーズの大友啓史監督

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 佐藤健が主演を務めた『るろうに剣心 最終章 The Final』。緊急事態宣言の影響で休館となる映画館もある中で健闘を続け、シリーズ最大の興行収入となった『るろうに剣心 京都大火編』(最終興収52.2億円)を上回るオープニング成績を残し、6月4日に封切られた『るろうに剣心 最終章 The Beginning』とともにヒットを続けている。メガホンを取った大友啓史監督が取材に応じ、作品について語った。

 『るろうに剣心 最終章 The Final』は映画シリーズ『最終章』2部作の第1弾。神谷道場で平和に暮らしていた緋村剣心(佐藤)が、彼の過去を知る最恐の敵・雪代縁(新田真剣佑)と激突する。『るろうに剣心 最終章 The Beginning』では、剣心の過去、そして頬にのこる十字傷の秘密が明かされる。

“あのサプライズ”について

 5年間という準備期間を経て大友監督のもとにキャスト・スタッフが再集結。感情と感情のぶつかり合いが見える“るろ剣アクション”はさらに進化し、『最終章』にふさわしい圧倒的なスケールの作品に仕上がっている。映画『るろうに剣心』シリーズのこれまでの撮影の過酷さから「もう一度あの撮影に戻るのは楽しみであるのと同時に恐怖でもあった」とし、「大変すぎて(撮影現場で)吐きそうにもなった(笑)」と振り返った大友監督は、とっておきのサプライズを『The Final』に仕込んでいた。

 原作にはないサプライズを用意したのはなぜだったのか。大友監督は「剣心と縁の感情のぶつかり合いは、強い私怨がベースにある。なので作品が陰陰滅滅なものになってしまう可能性があるという懸念が『The Final』の脚本をつくっている段階からありました」と口を開く。

 「僕らは『The Final』を、シリーズの最後を飾るお祭り、大団円にしたかった。『アベンジャーズ』感というか、そういう要素が絶対的に必要だと考えたんですね。“彼”はそう思った時の隠し球だったんです。突然、剣心の前に彼が出てくるのは唐突かなと、少々の不安を感じながら脚本を書いていましたが、常にチャレンジを重ねてきたシリーズですから、うまく飲み込めるんじゃないかという楽観的な気持ちもあって(笑)」

 「(四乃森)蒼紫の生き方を変えたように、剣心は“不殺の誓い”を込めた逆刃刀で相手を倒し、その生き方を正していく主人公。これまでのシリーズでの剣心と(サプライズで登場した)彼の関係性から、彼が登場時に言うセリフ、縁のもとに行こうとする剣心の背中に呼びかけるセリフには、きっと誰もが納得してもらえるはずです。と同時に、そのセリフには、今から縁と戦おうとしている剣心が、その逆刃刀で縁に何を訴えようとしているのか、観客にリマインドする効果もある。浮いたシーンにならないかなと心配でしたが、ビシッとはまったなと。観客の期待に応えるシーンになっていると思います」と自信をのぞかせた。

なぜ『The Final』→『The Beginning』の順番なのか?

 『るろうに剣心 最終章』2部作では「始まり」と「終わり」が描かれる。普通に考えると「始まり」が先で、「終わり」が後になるはずだが、『The Final』→『The Beginning』の順で公開された。なぜこの順番になったのか。当初は逆の順番で公開する可能性もあったと大友監督は明かした。

 「当初は『5年の間隔があるので、久しぶりの剣心の登場は、今までとは全く違うイメージの“人斬り抜刀斎”だった頃の剣心の方がセンセーショナルではないか』というのが配給サイドのプランとしてありました。私としては撮影をしている段階から『どちらがいいのだろう』と考えてはいましたが、まあ、他に考えることがたくさんあったんでね(笑)、ここは配給のいう通り、『The Beginning』が先、『The Final』が後のつもりで、とりあえずあまり深く考えず、目の前の撮影に集中していましたね。でも、編集し終えて冷静に考えてみると、シリーズも5年ぶりですから、僕だったら、前作のテイストを感じる『The Final』から観たいかなと。観客も僕と同じことを感じるのではないかと思ったんですね」

 「『The Beginning』の方は幕末の“闇の京都”を舞台にした、血飛沫が飛ぶようなハードボイルドタッチの作品です。対して『The Final』は大団円を意識して、エンタメ感で攻めることを決めていた作品。それを改めて考えたときにこの順番でいこうとなりました。観ていただければわかりますが、『The Beginning』でシリーズを終えるのが『かっこいい』と思ったんですよね」

 「『The Beginning』にも、大トリを飾るに相応しい“仕掛け”を仕込んでますからね」と大友監督。「結果的に理想的なかたちで着地することができたと思っています。私がシンプルに一番いいと思える終わり方で『The Beginning』のラストの脚本を書き終えることができたかな」と振り返り、観客に映画『るろうに剣心』の「始まり」を届けることを心待ちにしている様子だった。(編集部・海江田宗)

『るろうに剣心 最終章 The Final』『るろうに剣心 最終章 The Beginning』は公開中