なぜ4灯式ライト減少? かつては「ハイエース&ハコスカ」に採用も 近年見かけない理由とは

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かつて憧れた? 4灯式ヘッドライト減少の理由とは?

 その昔、採用されるケースが多かった4灯ヘッドライトですが、最近のクルマでは採用されなくなってきています。
 
 どのようにして4灯式ヘッドライトは生まれ、なぜ減っていっているのでしょうか。

角目縦型4灯式ヘッドライトを採用していたトヨタの3代目「ハイエース」 丸目・角目&横型・縦型などかつてはバリエーションが豊富だった

 クルマは、見た目によってそれぞれ印象が変わってきますが、なかでもクルマの顔の印象を決めるのに大きな要素をもたらすのがヘッドライトです。

【画像】レトロ「ハイエース」がカッコイイ! 2000万円超の「ハコスカGT-R」もシブい! 4灯ライトを見る!(22枚)

 今ではさまざまな形が多く見受けられますが、その昔は、丸か四角か、2灯か4灯かといった選択肢しかありませんでした。

 なかでも、4灯式ヘッドライトはカッコいいクルマの代名詞といってもいいほど、憧れの存在だった時代もありました。

 例えば“ダルマ”の愛称で親しまれたのトヨタ初代「セリカ」や“ハコスカ”としておなじみの日産3代目「スカイライン」は、丸い4灯式のヘッドライトが搭載されていました。

 また、アメ車風のフロントフェイスが人気だった三菱「ギャランΛ(ラムダ)」や、ラグジュアリーなクーペのトヨタ「セリカXX」などは、角形の4灯式ヘッドライトが魅力的といえます。

 ほかにも、マツダ「ルーチェ」やトヨタ「ハイエース」など、縦に2灯並べられたレイアウトの4灯式ヘッドライトもありました。

 ところが、こうした4灯式ヘッドライトは徐々に姿を消していき、現在では少数派となってしまっています。では、なぜ4灯式ヘッドライトは姿を消していくことになったのでしょうか。

 ヘッドライトなどの自動車用電装品を製造する、市光工業株式会社の担当者は、以下のように話します。

「4灯式ヘッドライトが減ってしまったのは、デザイン上の理由が大きいのではないでしょうか。

 近年はLEDが主流となってきているため、ヘッドライト自体のデザインの自由度が高まります。

 昔のシールドビームや、ハロゲンライトでは、ヘッドライトの中身までは見ることができませんでした。

 ところが、LEDになると、光源の配置や見せ方などヘッドライトそのもののデザインをすることが可能となりました。

 そのため、現在は自動車メーカーのデザイナーと一緒にヘッドライトのデザインをおこなっています。

 ヘッドライトがカッコいいと、クルマがカッコよくなり、売れ行きにも影響するからです」

※ ※ ※

 確かに、ここ最近の自動車販売ランキングを見ていると、「目ヂカラ」のあるクルマの人気が高くなっているといえます。

ヘッドライトは時代と共に変化? 今後のトレンドはナニ?

 ヘッドライトの歴史をみると、大きな影響を与えたといえるのが、アメリカ国内における自動車の保安基準である「連邦自動車安全基準」です。

 アメリカでは、1940年代からシールドビームと呼ばれる、電球とレンズが一体化したヘッドライトの装着が義務づけられていました。

 これは、丸形の2灯式で、現在でも汎用(はんよう)式ヘッドライトとして流通している規格の元となるものです。

 その後、1950年代末に丸形4灯式のシールドビームが許可され、当時米国で最初に丸形4灯式ヘッドライトを採用したのは「キャデラック」だといわれています。

 やがて米国では、1970年代には角形のシールドビームも許可されますが、その頃ヨーロッパではすでに規格型のシールドビームではなく、電球交換式のいわゆる異形ヘッドライトが一般的となっていました。

 そのため、一部の欧州車では、異形ヘッドライトの部分にシールドビームを埋め込んだデザインのクルマが米国輸出向けとして製造されています。

 その後、米国のシールドビーム規制は1983年に改正され、電球交換式の異形ヘッドライトが認められることによって、デザインの自由度が一気に高まりました。

最近のヘッドライトではLEDが普及したことでデザインの自由度が高まった(画像はトヨタ「ハリアー」)

 一方で、日本国内では米国に倣ったデザインが主流でした。

 日本の自動車の歴史は米国への輸出の歴史でもあるため、米国内の安全基準が日本車のデザインにも影響を与えています。

 しかし、1960年代のトヨタ初代「センチュリー」など、一部のモデルではオリジナルのヘッドライトも採用されています。

 さらに、法規制だけでなくヘッドライトの技術革新もクルマの表情を豊かにしていきます。

 1980年代後半にはプロジェクター式のヘッドライトが登場しました。

 従来のヘッドライトよりも薄くデザインされたヘッドライトは、日産5代目「シルビア」や初代「セフィーロ」といった、斬新なフロントフェイスをまとったクルマを生み出すこととなります。

 その後、ディスチャージドヘッドライトやLEDヘッドライトの登場でさらにヘッドライトのデザインは多様化していきます。

 では、今後のヘッドライトはどのように変化しいていくのでしょうか。

 前出の担当者は、次のように話しています。

「現在は、LEDライトで照射範囲を自動的に調整できる『Adaptive Driving Beam(ADB)』がトレンドです。

 今後は運転支援システムのセンサーとも関連して、より見えやすく照らす機能とともに、自動運転の車両が歩行者やほかの運転者に対してサインを送る『示す』という機能も大きくなってくると思います」

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 クルマのフロントデザインを顔に見立てるのは自動車黎明期から続いていますが、今後自動運転のクルマが増えると、運転手とのアイコンタクトの代わりにヘッドライトがクルマの意思を表示するようになるのかもしれません。

 4灯式のヘッドライトが減っていくなか、技術の進歩は今後どのようにクルマの顔を変えていくのでしょうか。