ラリーの名門クスコレーシングが手がけるワークス車両だ

 全日本ラリー選手権のシリーズ第6戦「モントレー2021」が6月11日〜13日、群馬県高崎市を舞台に開催。SS(スペシャルステージ)の設定はわずか3回ながら、いずれも20km前後のロングターマックで、各クラスでバトルが展開されていたのだが、同ラウンドで一際異彩を放っていたマシンといえば、同時開催の国際格式ラリー、JSR(ジャパン・スーパー・ラリー)に参戦したトヨタC-HRだと言えるだろう。

 同マシンはラリーの名門クスコレーシングのワークス車両で、同チームを運営するキャロッセがマシン開発を担当。マシンの規格は通称“AP4仕様”と呼ばれるリージョナルラリーカーに分類され、APRCやアジア各国のラリー選手権をターゲットにキャロッセが2019年に開発。同年のラリー北海道でデビューを果たしたマシンだ。

 以来、C-HRはタイの国内ラリー選手権を中心に活躍しているが、モントレーに参戦したマシンは初のターマック仕様車で、グラベル仕様車よりもローダウンされたほか、18インチのワイドタイヤが装着されていた。

 ちなみに、全日本ラリー仕様のRJ車両ではないことから、FIAのR5仕様車と同様にモントレーには仮ナンバーを装着して参戦。ドライバーはAPRCなど国際ラリーの経験が豊富な青山康が担当した。

コンパクトSUVながらラリーカーとして高いパフォーマンスを発揮

 気になるエンジンは、トヨタ・クラウンやレクサスISに搭載されている2000ccターボをベースにTRDが手掛けた競技用のエンジンで4WDシステムはキャロッセが開発。ダンパーやロールゲージなどもキャロッセのオリジナルモデルが採用されている。

 2000ccのターボエンジンを搭載した4WDモデルであることから、全日本ラリー選手権の最高峰クラス、JN1クラスに参戦するスバルWRXや三菱ランサーがライバルとなるが、青山によれば「車両重量がWRXやランサーよりも重いし車高も高い。それにデフのセッティングを含めてターマックでは経験値が少ないのでWRXやランサーと戦うレベルにはない」とのこと。事実、青山のドライブしたC-HRはJN1クラスで3位入賞を果たした鎌田卓麻のスバルWRXに対して、ドライのSS2で約63秒も遅く、ウェットのSS3にいたっては1分25秒も引き離されていた。

 SS2およびSS3のステージ距離は19.75kmとなっていることから、単純計算で1kmあたり3秒以上も遅いことになるが、青山によれば「入力がダイレクトで、とても素直なクルマ。乗りやすいし、セッティングに対してクルマがきちんと動いてくれるので勉強になる」とのこと。さらに「デフのセッティングを煮詰めることができれば、ターマックでも速くなると思う」と手応えを語る。この結果、青山はC-HRを武器に安定した走りを披露し、JSRで勝利を獲得した。

 このようにターマックにおいては熟成不足の感は否めないが、グラベルでは完成度が高く、C-HRはコンパクトSUVでありながら、ラリーカーとしても高いパフォーマンスを発揮した。2017年のニュルブルクリンク24時間レースと同様に、改めてC-HRのスポーツ性能の高さを証明する一戦となった。