「序章 2人の関係」1

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古書店の店番をしている16歳の女子高生・千代と、大学の講師である33歳の男性・能見の、レトロ×年の差恋愛を描いた「恋愛読本なんていらない」。アマハル(@amaharu.manga)さんがInstagramやホームページで配信している漫画で、「キュンキュンが止まらない」と二人を応援する読者も多い。今回はアマハルさんにインタビューし、漫画を描く思いや大切にしていることなどを聞いてみた。

【漫画】古書店で繰り広げられる女子高生と大学講師の恋愛物語(全110枚)

■ヒロイン・千代が恋に落ちていく描写に引き付けられる

「恋愛読本なんていらない」の舞台は、どこか懐かしい古書店。自分が生まれたと同時に母親を亡くし、病弱の父親は入院中で、長い時間を一人で過ごしてきた女子高生の千代は、あまり笑わないツンケンした性格。毎日のように古書店を訪れる能見は、千代にちょっかいばかりかけてくる。

はじめは鬱陶しがっていた千代だったが、能見と過ごす時間が楽しいと感じるようになり笑顔も増える。いつしか、店の前で能見が来るのを待つほど気になる存在に。千代と能見、二人が少しずつ惹かれていき恋人同士になるまでのもどかしさ、思いが通じ合った後の葛藤、また自分と向き合うことや家族への思いなどが、繊細で優しいタッチで描かれている。

アマハルさんが「ページ数をいつもより多く使って二人の心情を細かく表せるように心掛けました」という告白編は、その名の通り告白して二人が恋人同士になる重要な話。自分の気持ちに素直になろうと決めた千代の覚悟や、能見が千代に惹かれたきっかけなどが描かれていて、二人の表情や話す言葉から距離がだんだんと近くなっていくのが分かる。

やっと両想いになった二人は、恋人1日目に付き合った記念として千代は花を、能見はケーキを互いに内緒で用意し、仲良く記念日を祝う姿は「これぞラブコメ!」と言いたくなるほどほほえましい。

千代に対する能見の直球な言葉や素直な行動、たまに見せる下心や子供っぽさ、それに照れながらもしっかりと等身大で、時には背伸びして応えようとする千代の健気さには、キュンとせずにはいられない。かわいすぎる千代に、悶絶しつつも健全な付き合いをと理性を保つ能見の姿など、恋愛経験の少ない二人のピュアな掛け合いに思わずニヤニヤしてしまう。いろいろな気持ちを乗り越えて成長していく二人を見ていると、心がポッと温かくなって応援したくなる。

■「絵」で見せて印象に残るシーンを

漫画家を目指して漫画を描き始めたアマハルさん。2018年にウェブ投稿を始めるまでは、雑誌の賞へ投稿や持ち込みをしていたという。

「雑誌の賞へ作品を持ち込んだ時、当時は20代後半だったのですが、編集の方から『受賞する実力はあるけど年齢的に受賞は難しい』と言われまして…。その頃、ちょうど家でWi-Fiが使えるようになって、『ウェブで投稿することで夢をかなえることができるかもしれない』と思い、投稿を始めました」

初めてのウェブ投稿で公開したのが「恋愛読本なんていらない」。なぜ“レトロ×年の差恋愛”をテーマにしたのか尋ねると「雑誌の賞に出す形でしか漫画を描いてこなくて、ウェブだと多くの人に自分の作品を見てもらえるとなった時に、せっかくなら自分の好きなものをたくさん詰め込んだ作品を描こうと思いました。“レトロ”や“年の差”をテーマにして古書店や眼鏡の男性などを登場させることにしました」とアマハルさん。

「できるだけ毎回、見せ場として『絵』が印象的なシーンを入れようと心掛けています。『絵』で見せる漫画にすることが目標ですね。その中で、いろいろな感情や表情を表現したい。あと、“レトロ”というテーマなので、現代とは違う場所や空気感を表現できるようにと気を付けています。ただ、テーマにとらわれずに、できるだけルールに縛られない漫画にしたいですね」

Instagramやホームページでは、千代と能見のラブラブ話がまだまだ読めるほか、バス運転手×女子高生の「初恋が発車します」や、新しくファンタジーに挑戦した「匣の中から悪霊を召喚する話」など短編作品も配信中。アマハルさんは「これからも『自分にしか描けない漫画は何か』を突き詰めて絵もストーリーも研鑽を続けて、作品をたくさん作り続けたいです。そのなかで『好き』と言っていただける人に出会えたら、そして自分の長年の夢である『漫画家』になれたらうれしいです」と話す。

王道だからこそ、心にまっすぐと刺さる恋愛漫画は、読めばきっと大切な人を思い、会いたくなるはず。

取材・文=重藤歩美(関西ウォーカー編集部)