スコットランド代表戦で2得点の大活躍を披露したシック photo/Getty Images

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大会前まではそこまで注目される存在ではなかったものの、代表チームの一員として臨むビッグコンペティションで大ブレイクを果たす選手というのは一定数存在する。近年でいえば、2014年ブラジルW杯で評価を上げ、レアル・マドリードへの移籍を勝ち取ったMFハメス・ロドリゲス(現エヴァートン)がその代表格として挙げることができるだろう。かねてより若き実力者として各方面から評価はされていたが、彼がプレイヤーとしての価値を一気に高めたのは間違いなく同大会。ここ数年は少し苦しい時間が続いているものの、ブラジルW杯での活躍はこのレフティーの知名度を一気に世界レベルへと押し上げた。

そして、現在開催されているEURO2020でも、そんなシンデレラボーイとなる選手は出てくるのだろうか。まだグループステージ第1節が順次消化されている段階だが、現時点でそれに最も近いのはチェコ代表FWパトリック・シック(25)だろう。同選手は14日に行われたスコットランド代表戦にて、目の覚めるような大活躍を披露。超ロングシュートを含む2得点の活躍で、チェコ代表に貴重な勝ち点3をもたらした。

大事なEURO初戦で強烈なインパクトを残したシック。その得点の内容も強烈なインパクトがあっただけに、現時点で彼に対する注目度がうなぎ登りとなっていることは間違いない。しかし、その一方ではこのシックの活躍に少し複雑な気持ちを抱いている人々がいる。伊『Corriere dello Sport』によると、彼が過去に所属していたASローマのファンが、SNS上でなんとも言えぬ気持ちを吐露しているというのだ。

「Oh……パトリック。その活躍を(スタディオ・)オリンピコで見せてほしかったよ」

「なぜローマではあそこまで活躍できなかったんだ?」

「シックはローマにいた頃とは別人のようだな。まさにエースって感じだ」

「このシックってストライカーはいい選手だな。ローマは今すぐ獲得に動いた方がいい」

実はこのシック、2017年夏の鳴り物入りでローマに加入するも、プレイした2シーズンでは58試合の出場で8ゴールしか決めることができていない。2019年夏にはRBライプツィヒへとレンタルされ、昨夏はレヴァークーゼンに完全移籍で売却されていた。FWエディン・ジェコという絶対的エースの牙城を崩すことができず、失意の退団を経験していたのだ。そんな経緯があるだけに、今回のシックの活躍にロマニスタたちは少し困惑しているのだろう。この活躍をローマにいるときに見せてほしかった。そう思うのは当然とも言える。

ロマニスタにとっては複雑な感情が入り混じるシックの活躍。だがその反面、彼らはかつて自身の応援するクラブに所属していた選手が大舞台で躍動している姿を、どこか嬉しくも思っていることだろう。ローマで燻っていた時期は過去のこと。EUROで暴れるチェコ代表ストライカーのさらなる活躍に期待だ。