「将来、事務の仕事はロボットに奪われちゃうの?」

AI(人工知能)技術の進化を耳にするたびに、そんな不安に駆られる人もいるのではないでしょうか。「まだ先のこと」「今からキャリアを見直した方がいい」など、さまざまな声があふれています。

そこで「事務職 自動化」「事務職 なくなる」といったキーワードで検索してみると……あることに気づくのではないでしょうか。そう、「RPA」に関する記事が多く表示されるのです。RPAって……何?

RPAの仕組みや、事務職にどんな影響がありそうなのかなど、パーソルテンプスタッフ株式会社の小野田聖子さんに話を伺いました。

このままだといけないのはわかっているけれど......。

ロボットが事務職の仕事を奪うって本当?

−−RPAとは一体何なのでしょうか。

「RPA(Robotic Process Automation)は、パソコン上で行う一連の作業を、ロボットを使ってボタン一つで完了させる技術です。ルールを設定すれば、決められた動きを自動で実行してくれます」

−−Excelのマクロ機能のようなものでしょうか。

「マクロ機能は限られたツールの中だけでしか動かせませんが、RPAはさまざまなツールを横断して自動化できます。

例えば、ExcelデータをもとにOutlookメールで取引先にデータを報告する業務は、次の6つの工程で構成されていますよね。

1.「Excelを立ち上げる」
2.「データを整える」
3.「Outlookを立上げる」
4.「Excelのデータをもとにメールアドレスを入れる」
5.「メール文面にデータを入れる」
6.「送信する」

RPAは、この工程をPC上の専用ツールを使って、自動で行うように設定するもの。設定後は、ボタン一つクリックするだけで、すべての工程が自動的に進むようになります。

現在、業界を問わず、多くの企業がこのRPAを導入して業務効率化を図っています。コロナ禍でより注目されていると感じますね」

RPAは事務職の新たなキャリアアップの形

−−すごい技術だとは思いますが、正直言うと、事務の仕事がRPAに奪われてしまわないか心配です。

「この数年以内にということはあまり考えられないにせよ、ルールに則った作業を繰り返すデータエントリーのような仕事は、だんだんロボットに代替されていくのではないでしょうか。一方で、そのロボットを作り広めるスキルというものが今必要とされており、事務職の方のキャリアの新たな選択肢として注目されています」

−−「事務職がロボットを作る」って、あまりイメージできないのですが、もともとプログラミングなど知識がある人たちに向けた話でしょうか。

「プログラミングの知識や経験は必要ありません。RPAの専用ツールには、さまざまな種類があり、例えば、6000社以上の企業が導入している「WinActor(R)」(※)は、初心者の方でもわかりやすい構成になっています。中級レベルのExcelスキルをお持ちの方、具体的にはIF関数、VLOOKUP関数、ピボットテーブル機能のいずれかを使用できる方であれば、目指すことができます。実際、弊社でも、事務職の派遣社員の方が今後のことを考えてRPAを学ばれることが多いです。RPAのスキルを身につければ、今の職場で業務改善や提案の仕事をできるようになりますし、仕事探しの際の選択肢も広がるでしょう。

※WinActor(R)はNTTアドバンステクノロジ株式会社の登録商標です。

事務職だからこそ活かせるRPAのスキル

−−自分の強みをなかなか見つけられない事務職の人も多いです。「自分が担当している仕事は、誰でもできることだし……」と。コミュニケーション能力といっても抽象的ですし、仕事を正確に進めるというのは、できて当たり前のこと。自分をアピールするためのスキルがよくわからない人が事務職には少なくありません。RPAを学ぶことで、強みの具体化ができそうですね。

「事務職の方だからこそ、RPAで業務効率の改善ができると思います。『こうすればもっと効率が良くなるのに』といった課題に気づけるのは、普段その業務に携わっていて、一連の流れを理解している方ですから」

−−RPAを学ぶには、どんな方法がありますか。

「RPAを提供している企業が実施している講座をはじめ、さまざまな研修を見つけることができると思います。弊社でも『RPAアソシエイツ研修』を開催し、16日間で事務職の方がRPAを使って仕事ができるようになるよう、全力でサポートしています。毎回満席で、この研修を受けるためにパーソルテンプスタッフに派遣登録される方もいるほどです。皆さんの注目の高さを日々感じています」

−−でも、勉強した、スキルを身につけたからといって、仕事に就けるとは限りませんよね。ポテンシャルを期待される20代と違い、年齢を重ねると、未経験可の求人は少なくなると感じます。

「弊社で紹介しているRPAツールを使う派遣求人ですと、半分は未経験者可能の求人です。RPAは比較的新しい技術であるため、実務経験がある人材がまだ足りていないのです。『RPAアソシエイツ研修』は、仕事紹介までを含めてのサポートを提供しています。受講者の方は実際にRPAを使った派遣の仕事に就いたり、ご自身で転職されたりと、活躍の場を広げられています」

大切なのは、好奇心や柔軟性を持つこと

「今回、RPAのスキルについてお話をしてきましたが、スキルは、後からでも身につけられるものだと思います。大切なのは、好奇心や柔軟性。興味があるからこそ、向上心を持てますし、モチベーションも維持できるでしょう。仕事に限らず、いろいろなことに興味を持つことが、今後ますます求められていくと考えます。『最近よく聞くこの商品、試してみようかな』『どうしてこのサービスは、こんなに人気なのか、チェックしてみよう』など、日常の些細なことで構いません。

実は私自身も最近、新たな挑戦をしていて。運転免許を取るために自動車学校に通っています。周りは学生さんばかりです(笑)。ふと思ったことを、行動に移してみる。その一歩が、可能性が広がったり、新たな自分の魅力を発見したりすることにつながると思っています」

小野田聖子さん
パーソルテンプスタッフ株式会社 特別法人営業本部 シゴトデザイン部
RPA営業推進課 マネージャー

取材・文/和泉ゆかり

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