日本代表は15日に吹田で行われるキルギス戦が今年6試合目。韓国(3-0)、モンゴル(14-0)、ミャンマー(10-0)、タジキスタン(4-1)、セルビア(1-0)相手に、これまで5戦5勝。得点32に対し、失点はわずか1だ。キルギスもまず敗れる心配のない相手。6連勝は見えている。

 弱者相手に連勝を重ねる姿は、五輪を目指すU-24日本代表にもあてはまる。6月5日に対戦したU-24ガーナ戦は6-0。一昨日(6月12日)のジャマイカ代表戦も4-0の楽勝だった。敗れたのは、今年3月末に行われたアルゼンチンU-24戦。2試合戦ったその最初の試合に0-1で敗れたが、3日後の再戦では3-0で雪辱している。森保兼任監督率いる日本サッカーは、快調そのものに見える。

 すべてホーム戦。相手にとってはアウェー戦だ。このコロナ禍におけるホームの利は、計り知れないものがある。通常より断然多い。そのぶん日本は強く見える。

 忘れてはいけないポイントだ。東京五輪でも日本はメダルを大量に獲得するだろう。英国のブックメーカーは、金メダルの獲得数で日本をアメリカ、中国に次いで3位に予想しているほどだ。2008年北京五輪8位(9個)、2012年ロンドン五輪11位(7個)、2016年リオ五輪6位(12個)なので、開催国の利をブックメーカーが大幅に見込んでいることが分かる。

 男子のサッカーは、グループリーグでフランス、メキシコという強豪と同じ組みに配属されている。五輪の舞台がロンドンやリオだったら、突破確率は5割以下と言わざるを得ないが、コロナ禍特有のホームの利に後押しされそうな今回は、決勝トーナメントに進出し、森保監督が目標に掲げる金メダルに近づけるのではないか。実力以上の結果が残せるだろうと見ている。

 だが、筆者が望んでいるのはキチンとした敗戦だ。コロナ禍を追い風に、五輪で本当に金メダルを獲得したら、その後どうなるか。勘違いがいっそう膨らむ気がしてならない。敗戦を望んでいるわけではない。実力世界一にはほど遠い日本が、それに相応しい、ちゃんと負ける試合が見たいのだ。もっと言えば、まともな国際試合が見たいのである。

 WOWOWで放送されているユーロ2020を見ていると、欧州が羨ましくなる。5戦5勝。得点32、失点1という日本の現実から、一刻も早く脱出したくなる。筆者は職業柄、日本代表戦はほぼすべて現地で観戦している。最近の試合も例外ではない。14-0の試合も、10-0の試合も、6-0の試合も、4-0の試合もすべて生観戦している。しかし、日本が大勝する姿を現場で見て、はしゃぎたくなる気には一切なれなかった。見れば見るほど、ストレスを溜めることになった。タジキスタン(6月7日)に、今年唯一の失点である同点ゴールを叩き込まれた瞬間、残念な気持ちと同じぐらい、喜ばしい気持ちも湧いてきた。観戦のモチベーションは、タジキスタンのゴールで格段に上昇した。

 6月11日、神戸で対戦したセルビアとの一戦は1-0の勝利だった。セルビアのメンバーは、主力を何人か欠いた1軍半クラス。セルビアはかつてより力を落としているので、ベストメンバー同士で対戦しても、日本はいい勝負になるとは筆者の見立てだ。その1軍半クラスとのホーム戦になると、1-0は順当なスコアに見えた。

 しかし、このセルビアとの対戦は、欧州の代表チームを招いて行う親善試合としては、2016年6月、ボスニア・ヘルツェゴビナ戦以来、実に5年ぶりに行われる一戦だった。そうした意味で実に喜ばしい、画期的な試合だった。

 欧州勢が来日しなくなった理由は、欧州ネーションズリーグが2018-19シーズンにスタートしたことと深い関係がある。現在行われているユーロに、隔年開催のネーションズリーグが加われば、来日して親善試合を行うことは、日程的に困難になるからだ。