「東大専科」の生徒7人にオーダーメイドの勉強法を伝授した『ドラゴン桜』主人公の桜木建二(阿部寛)(写真:©︎TBS)

現在放送中のTBS系ドラマ「日曜劇場『ドラゴン桜』」は、元暴走族の弁護士である桜木建二(阿部寛)が、偏差値が低い子どもたちを東京大学合格に導くストーリーだ。ドラゴン桜ではさまざまな受験テクニックや勉強法が紹介されるだけでなく、学びになる名言も多い。そこで、短期連載として、原作漫画『ドラゴン桜2』(講談社)編集担当で、ドラマの脚本監修も行っている現役東大生の西岡壱誠氏が、自身の経験や取材も踏まえながら、ドラマから得られる教訓について解説する。

今回は「性格に応じた勉強法」について。

第1回:東大生も納得「ドラゴン桜」本質すぎる受験心得
第2回:「ドラゴン桜」見た東大生が語る「挫折の重要性」
第3回:ドラゴン桜で再確認「東大受かる思考力」習得法
第4回:ドラゴン桜でも実践!東大生は「頼る力」がすごい
第5回:本当?ドラゴン桜「性格悪い奴は東大落ちる」根拠
第6回:ドラゴン桜で理解「東大生が勉強好きになる秘密」
第7回:ドラゴン桜に学ぶ「東大受かる柔軟発想」の磨き方

本の読み方で適正がわかる

「みんなが本を読むとします。気になる本が何冊かある。その場合、同時並行で色々読むか、それとも1冊読み終わってから次の本を読むか。みんなはどっち?」

日曜劇場『ドラゴン桜』第8話で、水野直美(長澤まさみ)先生は生徒にこう問いました。そして、この問いの答えに応じて、各々どう勉強していけば成績が上がりやすいのかわかる、と。

これはFFS(Five Factors & Stress)理論という、個性を科学的に分析してくれる診断を活用したものです。漫画『ドラゴン桜2』の編集および日曜劇場『ドラゴン桜』の監修にあたり、僕たちはこのFFS理論を活用して「どういう性格の人がどういう勉強の適正があるのか」を研究しました。

今日はその中から、ドラマでも登場していた「保全型」と「拡散型」の考え方について、紹介したいと思います。無料でみなさんの性格/勉強適正を診断できるサイトもありますので、ぜひそちらで自分のタイプを診断しながら、この記事を読んでいただければと思います。

まず、この漫画をご覧ください。





(漫画:©︎三田紀房/コルク)

いかがでしょうか。この漫画で描かれているとおり、1冊読み終わってから読むのは保全型、同時並行で読むのは拡散型です。保全型は積み上げ型で、コツコツ物事を進めていくほうが向いています。逆に拡散型は行動派で、自分が好きだと思うことをどんどん試していくタイプだといえます。

勉強に置き換えると、保全型の人はコツコツ簡単な問題から進めていく傾向があります。簡単な問題は何度やっても苦痛には感じないのですが、難しい応用の問題は解きたがらない……なんて場合がかなり多いです。

逆に拡散型の人は、好きなところから勉強する傾向があります。難しい問題でも挑戦することができますが、逆に簡単な問題を何度も解くのは嫌だと思うタイプが多いです。

保全型と拡散型、それぞれの東大生の勉強法

どちらのタイプのほうが東大合格に向いている、ということはまったくありません。ですが、自分にはどういう勉強が向いているのかは考えておくと効果が出やすいです。東大生たちにこのFFSをやってもらうと、どちらのタイプも同じくらいの人数がいます。そして保全型の人は保全型にあったやり方を、拡散型の人は拡散型らしい勉強を実践していました。

保全型の人は応用問題を解くのがそこまで得意ではありません。だから1科目でいい点を取るのではなく、苦手科目をきっちり潰して、全科目でまんべんなく点数をとっていくほうが結果は出やすいです。

拡散型の人は難しい問題にもチャレンジする精神がありますが、気分屋な部分が多いので、1つ好きな科目を見つけて、その科目をとことん突き詰めて勉強していくほうが、結果が出やすい。つまり保全型は苦手科目を勉強し、拡散型は得意科目から挑戦したほうがいいということです。

英単語の学習を見ても、保全型の人は1冊の単語帳をとにかく使い込み、いろんな書き込みをしていることが多いです。この単語は覚えた、この単語は間違いやすいといった情報、類義語や対義語の情報など、いろんな書き込みを加え、自分だけの単語帳に改造しています。

一方、拡散型の人は単語帳を何冊もやっていたと語る人が多いです。飽きっぽいから何冊もやって、同じ単語がないか、逆の意味の単語がないかを見つけて楽しむ、といったことをしていました。どちらも自分にあったやり方を実践することで、結果を出しやすくしているわけですね。

彼ら彼女らは自分のタイプの弱点を理解していることも多いです。

保全型の人というのは、応用問題が解けなかったり、答えをひらめいたりするタイプの問題が苦手だったりします。なので、それを避けるために、あえて応用問題の部分は先に答えを見たり、ほかの人に教わったりすることで、自分だけでその問題を対処しないようにしていました。

また拡散型の人というのはケアレスミスが多くなりがちです。基本の問題で点数を落として、逆に応用のほうができてしまっている、なんてこともざらです。だから、基本問題の見直しの時間を長く取り、逆に応用問題では見直しはせず攻めの姿勢でガンガン解いていく方式で勉強すると成績が良くなるケースが多いように思います。

弱点を知れば、その弱点をうまくカバーできるように努力をすることにも生かせるでしょう。

指導をする際にも活用できる

さらにいうならば、指導の際にもこの考え方は活用できます。保全型の人は、順番どおりに、細かく指示をしてあげたほうが実践に落とし込みやすいです。やってみせてあげて、丁寧にサポートしてあげたほうが、指導される側が生き生きと勉強をすることができる、なんて実例もあります。


逆に拡散型の人には、細かく規定されてしまうと逆にやる気が失われてしまうことがあります。自分独自のやり方を追求するタイプなので、逆に細かい指示をもらったりしないほうが、やりやすい場合が多いのです。

ちなみに僕は保全型です。中学生、高校生のときはどんな問題を見ても難しいと感じがちで、あっという間に勉強についていけなくなりました。そこから一念発起して「とにかく最初からやり直そう」と思い、中学1年生の内容まで戻って一から積み上げて勉強すると、成績が上がっていきました。これは、僕が積み上げで勉強したほうが結果が出やすい保全型だったからじゃないかと思っています。

このように、自分の性格にあった勉強をすることを意識することで、結果が出やすくなります。

桜木先生は「時代は変わったんだ」と言うことをよく口にしていますね。昔はスパルタで効果があったわけですが、今は合理的なトレーニング方法が開発されつつありますし、いろんなツールが生まれています。このFFSも、自分のタイプに合わせて勉強するという意味で、今の時代にあったやり方の1つだといえるでしょう。

みなさんもぜひ、意識してみてください!