[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

写真拡大 (全3枚)

タップする選択は欲しかったです!

なかなか衝撃的なものを見ました。13日にフジテレビで生中継された総合格闘技イベント「RIZIN」でのこと。注目カードのひとつであった、YouTube等で人気の格闘家・朝倉未来さん(※みくると読みます)の試合で、失神KOという格闘技らしい決着を見たのです。緊急事態宣言下での東京ドームギチギチ開催というよもやの舞台設定とあいまって、令和に甦る昭和とでも言うような懐かしさと、情報バラエティ(※バイキング等)から厳しい声が上がるのではないかという懸念で、ドキドキが止まらない一戦でした。



試合自体はまさしくエキサイティングなものでした。打撃を得意とする朝倉未来さんと、寝技・組み技を得意とするブラジル人柔術家クレベル・コイケさんによる対戦ですが、打撃VS寝技の構図は序盤から鮮明です。朝倉未来さんはひたすら打撃の構えで、相手の踏み込みに対してカウンターを合わせようという狙いです。タックルや組みつきをかなり警戒しているようで体重は後ろに掛かり気味となっており、自分から攻めていくような場面は見られません。意図が非常にわかりやすく、一触即発の緊張感がある姿勢です。伊達にYouTubeチャンネル登録者数180万人を超えてはいません。剣豪のような佇まいです。

クレベルは打撃自体はそれほど上手くなさそうですが、朝倉未来さんが前に出てこないのでローキックを中心に嫌がらせをつづけます。ストライカーに対して足を蹴るのはセオリーですので、いかにクレベルが打撃が得意ではないと言っても標準以上には蹴ってきます。その攻防のなかで朝倉未来さんが後退すると、クレベルは一気にコーナーに追い詰めるようにして組みついてきます。飛びついて、引き込んで、三角締め(※相手の片腕を取って、両足で頭と肩を挟み、頸動脈を締める技)の構え。朝倉未来さんは寝技は回避に専念し、すぐさま立ち上がります。

そこから打撃での攻防の時間がつづきますが、やはり朝倉未来さんは前には出ません。打撃のなかでもパンチが得意なのか、中距離での攻防においてもローキックが出る場面はほとんどありません。「パンチが届かない距離でカウンター狙い」という構えのため、ほぼ一方的にクレベルのローで蹴られつづけます。このあたりは「足を斬らせて、骨を断つ」の心でしょうか。むしろクレベルが前進してくることが両者の接触のきっかけとなるかのようです。

1ラウンドの中盤にも再びコーナーで組みつかれると、投げでリングに叩きつけられた朝倉未来さん。二度目のグラウンドでの攻防も、回避に専念して立ち上がると、ラウンド終盤になってようやく前進してのパンチなども出始めます。残り10秒であれば、よしんば組みつかれてもグラウンドで決められることはないという冷静かつ的確な判断でしょうか。得意・不得意のハッキリした戦いで、勝負は「一瞬」だなと固唾を飲まずにはいられません。

↓不得意場面になれば一気に決着がつきそうな、メインにふさわしい緊張感ある試合です!

この緊張感はあの伝説の曙VSボブ・サップ戦以来!

令和格闘技界最大の一戦です!

路上の伝説 [ 朝倉 未来 ]
価格:1430円(税込、送料無料) (2021/6/14時点)



第2ラウンド、朝倉未来さんの右足はかなり赤くなっています。クレベルはあえてミドルキックなどで意識を上にもっていってからローを蹴るという繰り返しで、朝倉未来さんの動きを封じていきます。朝倉未来さんは明らかにローを嫌がる表情で、コーナーに後退していきます。あるいはクレベルの意識を攻撃に向けさせる罠だったでしょうか。そのあたりの真相は定かではありませんが、クレベルはコーナーに詰まった朝倉さんにタックルで組みつくと、コーナーに押しつけながらヒザ蹴りやヒジ打ちを飛ばし、ヒジをかなり顔面に強く入れてきます。さらにクレベルは朝倉未来さんに抱きつくと、引き込んで寝技に持ち込みます。どこまでが朝倉さんの仕掛けた罠かわかりませんが、勝負は再びグラウンドの攻防へ。

1ラウンドでの二度の寝技の攻防では、チカラで振りほどいた朝倉未来さんでしたが、この三度目は少し様子が違います。朝倉未来さんの右手と頭を抱えたクレベルは、自由になっている朝倉未来さんの左手をつかんで大きく開かせると、その隙間から自分の右足を通してきました。この左手が身体についたままであれば、クレベルも腕が邪魔になって強く締められないので、何とか自由な左手を処理したいわけですが、朝倉未来さんはその動きにハメられてしまいました。クレベルの流派・ボンサイ柔術秘伝の技術に違いありません。罠と罠との応酬のなかでクレベルにはこの秘策があったのか。「朝倉対策」として用意してきたであろう秘策に、「やられた」と唸るしかありません。

これでガッチリとクレベルの三角締めが決まり、朝倉未来さんは胸を張って上体を反らして抵抗することも、腕を突いて抵抗することもできない態勢。もはや脱出不可能と見えましたが、朝倉未来さんは戦前のコメント通りに「簡単にタップはしない」と試合を続行していました。締めを仕掛けるクレベルは朝倉未来さんに呼び掛けながら、何やら叫んでいます。放送では理解できませんでしたが「タップしろ!」という呼び掛けだったでしょうか。もちろんそのような呼び掛けに朝倉未来さんが応じるはずはありませんが。

呼び掛けがつづいた数秒後、朝倉未来さんの身体が明らかに脱力しました。張っていた腕が緩み、動きが止まります。クレベルは技を緩めて朝倉未来さんの顔面をのぞき込み、指で顔を叩きました。朝倉未来さんの意識があるかを確認していたのでしょう。反応がないと見るや、クレベルはレフェリーの裁定を待たずに自ら技を解くと、朝倉未来さんに向かって今度は「しっかりしろ!」とでも言わんばかりに声をかけます。

試合はこのまま終了となり、生中継のカメラには朝倉未来さんのうつろな表情と、大きく腫れ上がった右顔面が映し出されていました。本人的には「完全な失神ではない」という段階かもしれませんが、いわゆる「落ちた」という状態ではあったのでしょう。完敗でした。かつてのPRIDE全盛期でも「下からの三角締めが決まる」などという場面はほとんど見られなかったなかで、これをやってのける。しかもRIZIN最強という評判の朝倉未来さんを相手にやってのけるとは恐るべき対戦相手です。解説席で高田延彦さん(※かつてグレイシー柔術最強の男ヒクソン・グレイシーと二度の死闘を演じた伝説的格闘家)が「日本の格闘技の中心が静岡に移ったね!」と興奮するのも納得です。

クレベルという選手はおそらく人類最強クラスの選手なのでしょう。でなければ、YouTubeチャンネル登録者数180万人を超える朝倉未来さんを相手にこれほどの試合はできないはずです。もちろん朝倉未来さんも必殺のカウンターが決まれば、一撃で相手を仕留めるチャンスは当然あったと思いますが、この日は紙一重の差でクレベルが上回ったということなのかなと思います。少しの幸運がクレベルに味方した、そういう言い方もできるのかなと。まさに総合格闘技の技術の進化を感じずにはいられない一戦でした。人類最強VS人類2位の対決を見た、そんな満足感でいっぱいです。

↓このような厳しい試合のあとでもしっかりとインタビューに応じる朝倉未来さん、さすがです!


「結果的に(相手が)強かったなと」
「今後は一度考えます」
「引退を含めて考えてみてって感じ」
「最後はちょっと油断した」
「タップする選択はなかった」
「自分への自分自身の幻想が打ち砕かれた」

油断、油断があったのは反省点!

ただし、タップする選択はありませんでした!

ブラジリアン柔術教則本 DVD+Book [ 早川光由 ]
価格:2970円(税込、送料無料) (2021/6/14時点)



もちろんYouTubeチャンネル登録者数180万人を超える朝倉未来さんにしてみれば、この程度の締めでどうこうということはないのでしょうが、視聴者からのお願いとしては、やはりタップをしてほしかったなと思います。朝倉未来さんにはその必要はなかったことは理解していますし、死の淵から甦るたびにYouTubeチャンネル登録者数が増していくという特性もあるとは思いますが、やはり今はコンプライアンスも厳しい時代ですし、何よりも安心安全を追求しなければいけないという意識が高まる時代です。

「タップしない」というのは朝倉未来さんのような存在にだけ可能な話であって、一般の人類であればほんの数秒頸動脈を締められただけで意識を失い、その後は「死」を含めた危険が待っています。本物の殺し合いではなく格闘技としての戦いを見せる場合、そういった危険を避ける姿勢というのは必要でしょう。特に一般的人類選手には。

相手を殴る、締める、そういった危険性やスリリングな攻防というのをエンターテインメントとして楽しむには、「危険性に勝る技術」というのが求められます。危険性はあるし、リスクはゼロではないけれど、それを上回る技術があります、という保証が。そのひとつが相手の技を容易にもらわないという、この試合でも朝倉未来さんが存分に見せつけた回避や防御の技術ですが、もうひとつがやはりタップの技術だろうと思います。

この態勢は詰んだ、そう思ったときに相手が頸動脈を締める数秒より先にタップを繰り出す、その技術。将棋の棋士も、視聴者や解説が決着を予感するより早く、AIと同じようなスピードで「参りました」を繰り出しますが、ああいった技術は格闘技にも求められるものだろうと思います。YouTubeチャンネル登録者数180万人を超える朝倉未来さんにとってはそこからが真の見せ場であったとしても、ほかの一般的人類選手や業界全体を考えたときには、人類最強クラスのトップ選手の使命として「決まったことはわかっています」「危険を回避するためにタップしますね」「はい、何事もありませんでした」と示すことは必要であっただろうと。

それはある意味で、何も起きないうちから負けを認めるような煮え切らない決着であり、朝倉未来さんが望む戦いではないかもしれませんが、弱い選手も含めた全員のために今後はぜひタップをしてもらいたいなと思います。子どもたちや技術に乏しいものが朝倉未来さんに憧れて、タップしない精神だけを受け継いだら「死」を含めた危険に見舞われ、格闘技自体がなくなってしまうかもしれません。よしんばその結果として、最初に抱き合った瞬間にタップする、あるいは前日記者会見でタップするということになったとしても、殺し合いではない以上、致し方ないことだろうと思うのです。

そうした早すぎる決着に対して、僕らファンも「さすが朝倉未来さん」「組み合っただけでチカラを見抜いた」「AIを超える驚異の分析」と受け止められるよう、観戦技術を身につけていかなければいけないなと思います。安心安全に危険性を楽しむために必要な「技術」を全員で身につけ、これからも格闘技というエンターテインメントを堪能していきたいもの。今年の流行語大賞に「三角締め」が入る勢いで、積極的に三角締め対策を学んでいくしかないですね!

強者の流儀 [ 朝倉 未来 ]
価格:1430円(税込、送料無料) (2021/6/14時点)



YouTube登録者数200万人を超える強さを身につけ、雪辱に臨んでください!