ブルージェイズ時代の山口俊投手(写真:AP/アフロ)

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プロ野球・読売ジャイアンツへ再入団した山口俊投手に対し、インターネット上で冷ややかな目が向けられている。2019年オフシーズンにポスティング(入札)を利用して米大リーグ(MLB)のトロント・ブルージェイズに渡ったが、成績が振るわなかった。

メジャーでの活躍を見せることはできず、米マイナーリーグを経て古巣に出戻りとなった。米国に渡って好成績を残せずに日本球界へ復帰する選手には、ネット上でバッシングが寄せられるケースがたびたびある。

西岡剛、中島宏之も

メジャーで過ごした2020年は、17登板中2勝4敗、通算防御率8.06という成績に終わった山口投手。今シーズンはサンフランシスコ・ジャイアンツの傘下球団でプレーしていた。

巨人への入団発表の直前、2021年6月9日付の日刊スポーツ(電子版)は、巨人が山口投手と入団交渉を開始したことを伝えた。この記事が配信されたヤフーニュースのコメント欄には、「今までの海外移籍の中で1番情けない選手」「あまり応援する気分にはなれない」「日本球界もなめられたもんですね」と辛らつなコメントがいくつも書き込まれている。

過去にも似たような例があった。巨人の中島宏之選手は2012年オフ、埼玉西武ライオンズからFAでMLBオークランド・アスレチックスと契約。一方でメジャーの試合へは一度も出場できず、14年オフにオリックス・バファローズと契約して日本へと戻ってきた。

当時のネット掲示板の反応を見ると、帰国の意向が報じられた時には「マイナーリーグから戦力外のやつなんかいらん」「何のために渡米した」といった批判がいくつも挙がっていた。

現在独立リーグに所属する西岡剛選手は、2010年オフに千葉ロッテマリーンズからポスティングでMLBのミネソタ・ツインズに入団。11年〜12年の通算成績は71試合で打率2割1分5厘、本塁打はゼロと振るわず、12年オフに阪神タイガースに移籍した。阪神との契約が発表された時、ネット掲示板では「マイナーですら結果だせなかった」「結果を残さないで出戻った」といったバッシングが相次いだ。

ヒール的なイメージ

スポーツライターの小林信也氏によると、西岡選手や中島選手は日本に戻ってきた当時、「帰ってきて頑張ってくれればいい」といった気持ちで温かく迎えるファンが実際には多かったという。ネットの反応とは違っていたようだ。

元々、日本の球界とファンの間では、「日本の野球を守りたい」という気持ちから、選手がメジャーへ行くことへの抵抗感があった。一方、大リーグに渡って日本球界に戻ってきた選手を数えると通算で46人に上る。こうした過去の選手たちが築いてきた「実績」により、選手がメジャーと日本球界を行き来することにファンが慣れた部分があると指摘する。

MLB入りの成功例、失敗例も積み重なった。これにより、渡米した選手が活躍できなくても、批判的にとらえず「帰ってくればいい」と考える人も増えたというのだ。小林氏によると、メジャーで「挫折」して日本球界に復帰しても、バッシングが寄せられるケースについては「最近はないような気がします」。

では、なぜ山口投手にはネット上でこうも厳しい意見が寄せられるのか。小林氏は、「山口投手のこれまでの歩みに対して批判的に考えている人が、他の選手に比べて多い」からではないかと推測した。

2016年オフに横浜DeNAベイスターズから巨人にFAし、その後巨人も離れてメジャーへ渡った山口投手だが、両球団で二桁勝利を挙げたのは、16年と19年。つまり、それぞれの球団での最終年のみだ。ようやく活躍したと思ったらすぐに「出ていった」印象を持ち、快く思わないファンもいるという。

また死球数も多く、「ヒール的なイメージ」を持ったピッチャーとのことだ。

ただ、戻ってくる球団として古巣の巨人を選んだ山口投手について「筋は通している」と評価。巨人ファンは再入団を歓迎しているのではないかと分析した。