全国100以上の自治体にある「同性パートナーシップ制度」。付き合って5年になる私とパートナーは、先日、世田谷区でこの制度を利用してパートナーシップ宣誓をしました。この連載では、実際に同性パートナーシップ制度を利用してみて、思ったことや感じたことをつづっていきます。私の話が少しでも、制度を知る人を増やし、利用してみたいという人たちの役に立てたら、と願っています。第8回、最終回である今回は、パートナーシップ宣誓後、自分たちの中でどんな変化があったのかについて書いてみたいと思います。

両親にカミングアウトし、同性パートナーシップ宣誓をすることは、私の人生にとって大きな決断でした。このことが私の心境に与えた影響は、少しずつだけれど、確実に表れてきているようです。

「宣誓書受領書カード」は、お守り代わり

今年2月13日に同性パートナーシップ宣誓をして、4カ月ほどが経ちました。

私たちは3年ほど前から一緒に住んでいるし、パートナーシップ宣誓をしたからといって、大きく生活が変わったということはありません。仕事をして、ごはんを一緒に食べて、2頭の犬の散歩に行き、その日にあった出来事を話して、くだらないことで笑ったり、ときには愚痴を言って聞き合ったり…と、表面上は前と変わらない、慌しくも平穏な毎日を送っています。

私たちが宣誓をした約1カ月後、名刺サイズのカード「パートナーシップ宣誓書受領書」が2枚届きました。

宣誓当日、「パートナーシップ宣誓に法的効果はない」との説明は受けたものの、たとえばどちらかが倒れて病院に運ばれたときなど、二人の関係性を説明・証明しなければいけない場面で、もしかしたら役立つかもしれない。そう思って、お守りのように財布に入れて持ち歩いています。

近いうちに、こういうカードに頼らずに済む日が来ることを願いつつ――。

自分たちは祝われる価値があるのか

パートナーシップ宣誓をしたことは、身近な友達には伝えました。

「おめでとう」と言ってくれる人が多い中、私がボランティアをしている団体「パフスクール」の沢部ひとみさんからは、「お祝いのパーティをしたら? 私たちはみんなに祝われるような機会がないから」と提案されました。

まわりには同性同士で結婚式を挙げる人もいますが、私はタキシードもウェディングドレスもどちらもしっくりこず、何を着たらいいかわからないので、結婚式やウェディングフォトはあまりピンときません。ただ、兄弟や親戚、友人の結婚式に出たときには、「結婚式はしなくていいけど、披露宴はしてみたいな」とは、たしかに思っていました。

結婚式や披露宴を計画して、家族や友人を招待することは、男女カップルにとっては当たり前のこと。それは、ある意味で「自分たちの結婚はみんなに祝われる価値がある」と思っているからできることです。

私がお祝いパーティを企画することに対して気後れするのは、「自分たちは祝われる価値がない」という考えが、どこかにあるからでしょう。両親やきょうだい、多くの友達を招待して、胸を張ってお祝いパーティをできるかどうかは、私たち自身が、自分たちのお祝いにどれぐらいの価値や意味があると思えるのか、にかかっていると思います。

今はパンデミックの影響で具体的な計画にまでは至っていませんが、このお祝いパーティを開催できたとき、私たちはもう一段ステップを上ることになるのかもしれません。

少しだけ見えてきた将来へのイメージ

二人の関係性やそれぞれの心境も、おそらく少しずつ変化していると思います。

私たちは中型犬2頭と暮らしていることや、アウトドアが好きなこともあって、東京23区から少し離れるのもいいね、という話を前からしていました。

最近、都内から少し離れたところに、庭付き一軒家を買うのはどうだろうと、物件を見にいきました。ところが、実際の物件を見てみると、「ここがもう少しこうだったら…」と思う部分があったり、リフォームすると新築を建てるのと同じぐらいお金がかかる計算だったり。

そこで、「それなら思い切って土地を買って新築を建てたほうがいいんじゃない?」という話になってきたのです。

私はもともと、「マイホームを建てたい」という願望が1ミリもないタイプ。定住が苦手で引っ越し好き、持ち物を増やすのが苦手、ローンを組むのが苦手。家を建てるなど考えたこともありませんでした。ところが、今回はあまり抵抗なく「建てるのもいいかな…」と思いはじめました。

そもそものこの根なし草的な考え方も、「自分の将来のイメージできなさ」からきているのかもしれません。それが今回、パートナーシップ宣誓をしたことで、自分が今後どんなふうに生きていくのか、少しずつイメージができてきたのもあると思います。

この建築計画もまだ準備中ですが、新しい大きなステップになりそうです。

自分の人生の主導権を持つこと

もう一つの変化は、自分のやりたい仕事の企画を、気兼ねなく出せるようになったこと。

私はメディアでの発信を仕事とする人間として、「マイノリティ、特にセクシュアルマイノリティが少しでも生きやすい社会を作る」ことをライフワークにしたいと思ってきました。

その一方で、親にカミングアウトしていなかったことで、どこかで「あまり大々的にセクシュアルマイノリティにかかわる発信をすると、家族にバレたら困る」という気兼ねがありました。その心のかせがなくなったことで、自分の思うままに仕事をできる機会が増えたように思います。このことは、仕事全般に対するスタンスにも影響してきています。

他の誰のためでもなく、自分で決断してカミングアウトやパートナーシップ宣誓をすることは、自分の生き方に対する責任を取ること。それが、自分の人生に対する自信につながっているのだと思います。

世田谷区と渋谷区で同性パートナーシップ制度がスタートして5年半。この間に、パートナーシップ制度が全国の自治体に広まり、「結婚の自由をすべての人に」訴訟が始まって、さらに今は「LGBT理解増進法」についても議論されています。目まぐるしく変化する社会のスピードの中で、当事者自身も、自分の気持ちがついていけないと感じることもあるかもしれません。

でも、社会がどんなに変化しても、いちばん大事なのは「自分の気持ちに正直でいること」。ついていけない、よくわからない、割り切れないといった曖昧な気持ちも含めて、率直に丁寧に話していきたいし、話し合える社会であったらいいなと思います。

この連載に最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。