『一億総SNS時代の戦略』(カレー沢薫/秋田書店)

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 SNSのことは好きなのに、どこか憎くてたまらない――。情報化社会の昨今、そんなアンビバレントな感情に悩む方は、意外と多いのではないだろうか? SNSは、老若男女、さまざまな人間と気軽に繋がることが可能だ。承認欲求も簡単に満たされ、実生活ではなかなか吐けない本音や愚痴を吐露する場にもなりうる。だがその反面、誰かが怒ったり悲しんだりしている投稿や、嫉妬心を抱かせる投稿を頻繁に目にして、疲れてしまうこともある。

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 漫画家でコラムニストのカレー沢薫先生の『一億総SNS時代の戦略』(秋田書店)は、そんなSNSというぬる泥に、1秒でも長く首まで浸かりつづけるために、「疲れない、ほがらかSNSライフの送り方」を考えた1冊だ。約10年間、人気商売である作家をやりながら、“1日68時間”ツイッターに張り付いた末、「SNSにしか居場所ねえな」と語るカレー沢先生が推奨するSNSの作法は、同じく、SNSがなくなれば、“心の平穏の崩壊”待ったなしの孤独な人間にとって、秀逸すぎるものだった。本稿では、特に気になった項目を2つ紹介したい。

ブロックやミュート機能は躊躇なく使え!

 リアルの人間関係では、苦手な人間でも必要に応じてそれなりに付き合わねばならない。だが、カレー沢先生は、SNSではそれを絶対にやっちゃいけないと言う。SNSは、何が流れてくるかわからないガンジス川なので、気の合わない人間の、どう考えても賛同できない意見が流れてくることもある。それがトラブルに発展するのを回避するため、ブロックやミュート機能は躊躇なく使うことをおすすめしている。

 これらを使うことにより、ツイッターなら見たくない人間の発言は自分のタイムラインには表示されない。ブロックやミュートを攻撃ととらえる人もいるが、「ご縁がなかった人と関わる必要がない」のがSNSだし、むしろブロックすることにより、相手にとっても「会ったら喧嘩するかもしれない相手」が視界から消えることになる…と綴られており、目から鱗が落ち、深く頷いてしまった。

 たとえネット上ではあっても、「世の中にはさまざまな人間がいるから、どんな意見にも真摯に耳を傾けなければならない」と、真面目に思ってしまうことがある。だが、ストレスを解消する場所でもあるSNSでは、搭載された機能をどんどん使い、気軽に楽しむことを心がけたい。

ムカつくアカウントこそ追いかけてしまうという人へ

 カレー沢先生を担当する会社の若い女性は「どうしても腹が立つキラキラアカウントを見にいってしまう」のだという。特に文句を言うわけでもなく、本当にただそのキラキラぶりを見て不愉快な気持ちになるだけのようだ。何とも不毛な行為であるが、ムカつくアカウントや、痛いアカウントを見て負の感情を引き起こすことがやめられない癖の人は割と多いのではないだろうか?

 カレー沢先生は、この回避不能なクソを自ら踏みにいっておいて、そのクソに憤る人間の心理はもしかしたら「プレイ」なのではないか、つまり「わざわざ嫌なものを見にいく」のは軽度のSMであり、その人の「性癖」なのではないかと考える。嫌なものをわざわざ見にいくのも、見て腹立たしいという気持ちもホンモノだが、自分でも気づかない部分でそれを気持ちいいと感じているから、わざわざ何度も見にいってしまうのだろう…という指摘に、筆者はドキッとしてしまった。

 個人的な話で恐縮だが、筆者も、SNSで悪口を書かれたことがあり、そのアカウントを、継続的にチェックしていたことがある。どの投稿を見ても腹立たしさしか感じないのになぜやめられないのだろうと思っていたが、それが「性癖」だと指摘されれば、認めるのもなかなか辛く、もういい加減、その過去と折り合いをつけたいと心底感じた。

 その上で、カレー沢先生は、その「プレイを人に見せない」、つまり、この若い女性で言えば「このキラキラアカウントが今日はこれだけキラキラしていてムカつきました」とSNSに書かないように気をつけなければならないと告げる。「プレイは自己完結、周りを巻き込むな」せめてその教えだけは脳裏に焼き付けておきたい。

 本書は他にも、メンがヘラって来た時にSNSを離れる大切さや、悪意のないクソリプへの向き合い方、SNSで他人の自撮りにムカついた時の対処法、企業アカウントの中の人の憂鬱や気をつけるべきことなどが、率直に、痒い所に手が届く読み応え満載の文章で綴られている。SNSは使い方さえ間違わなければ、利点もたくさんあるのだ。

 SNSを一切しない人生に戻るのは難しい。まずは、本書を手に取り、今一度使い方を見直してみるのはどうだろうか。

文=さゆ