DeNA・三浦大輔監督【写真:荒川祐史】

写真拡大

2番・伊藤光&8番・大和の新打線が機能

■DeNA 4ー3 ロッテ(6日・横浜)

 セ・リーグ最下位ながら、交流戦は7勝3敗2分と絶好調で首位タイに浮上したDeNA。就任1年目の三浦大輔監督は、開幕直後のスタートダッシュで大きく転倒した格好だったが、ここにきて勝利のパターンが確立されてきた。セオリー重視の采配を振るう“ハマの番長”は、この勢いをリーグ順位上昇に結び付けることができるか。

 6日に本拠地・横浜スタジアムで行われたロッテ戦。同点で迎えた9回、2死二塁のチャンスに大和内野手がレフトオーバーのサヨナラ適時打を放ち、ついに交流戦首位の中日と並んだ。交流戦は残り6試合で「優勝」の2文字もちらつくが、三浦監督は大風呂敷を広げることなく、「まだ試合が残っている。また来週、1週間みんなで頑張ります」と慎重に言葉を選んだ。

 三浦監督が交流戦開幕の5月25日・オリックス戦で、2番に伊藤光捕手、8番に大和を置く新打線を組むと、これが見事にハマった。大和は得点圏打率.464(6日現在)の驚異的な勝負強さで、塁上の走者を“掃除”する役割を果たしている。

 以降、このオーダーはほぼ不動。例外は伊藤光が守備中にファウルチップを左手首に受け、大事を取って「2番・捕手」に嶺井を当てはめた4日のロッテ戦くらいだ。また、DH制のパ・リーグ球団主催試合では、大和を9番に下げ、8番に左打者の山下か右の細川を入れるが、打線の流れを極力変えないようにしている。三浦監督は「みんなの状態がいいので動かしたくない」と説明する。

 一方、今季チーム盗塁数は12球団ワーストの11。走れる選手も少ないことから、送りバント、進塁打といったセオリー通りの作戦を地道にコツコツこなしている。

“鉄板”の勝利の方程式、エスコバーは1軍合流後チーム試合数の約6割に登板

 実際、DeNA打線は現在の打順になってから、それまで塁上は賑わせながら「あと1本」が出ず苦しんでいたことが嘘のように、得点力を発揮している。アキレス腱は控えの選手層が薄く、32歳の伊藤光や33歳の大和らベテランにも替えがきかないことだろう。

 この日は、1回に先制11号ソロを放った4番のタイラー・オースティン外野手が、4回の第2打席でファウルを打った際、腰に手を当てて痛みに顔を歪め動けなくなる一幕があった。結局は大事に至らず出場を続けたが、首脳陣は肝を冷やしたのではないか。

 投手陣もしかりで、同点やリードした状況で終盤を迎えれば、三浦監督は“鉄板”で7回にエドウィン・エスコバー投手、8回に山崎康晃投手、9回に三嶋一輝投手を投入する。勢い、勝利の方程式の3人と、先発が早い回に崩れた場合や僅差のビハインドゲームなどあらゆる状況で登板する砂田毅樹投手、石田健大投手は登板過多気味である。

 特に、コロナ禍で来日が遅れたエスコバーは、4月20日の1軍登録以降のチーム38試合中、約6割(57.9%)の22試合に登板しており、負担が大きい。3日のソフトバンク戦で松田に3ラン、5日のロッテ戦でも加藤に2ランと2試合続けて被弾したが、三浦監督は「疲れていないことはないだろうが、経験のある投手なので調整してほしい。(勝ちパターンの)展開になれば、頑張ってもらうしかない」と、起用法を変えるつもりはない。

 6日の同カードでは、エスコバーは7回を無事3人で片づけた。ところが、チーム最多でリーグ2番目の29試合目の登板となった山崎が、2点リードの8回に3連続二塁打を浴び同点に追いつかれた。

 試行錯誤しながら、機能的な打順と勝利の方程式リレーを確立し、チームを上昇気流に乗せた三浦監督。ただ、本当に手腕を問われるのは、それが崩壊の危機に瀕した時なのかもしれない。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)