旦那が家事をいくつかは担当してくれるけど…

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結婚生活約8年の土屋礼央さんが、妻との関係や子どもとの関係を振り返り、相談者のお悩みを解決。そこから見えてきたのは、家庭の中だけではない、人間関係を円滑に進めるヒントだった!

【画像】ごめんなさい正直ナメてました! 主婦をサラリーマンにたとえたらヤバかった

雑誌「ダ・ヴィンチ」で連載されたお悩み相談エッセイ『ボクは食器洗いをやっていただけで、家事をやっていなかった。』から、注目のお悩みと土屋さんの答えをお送りします。家族だからこそ近すぎて逆に難しい人間関係をはぐくむコツ、それは視点の切り替えにあるのかも!?

※本記事は土屋礼央著の書籍『ボクは食器洗いをやっていただけで、家事をやっていなかった。』から一部抜粋・編集しました

■【お悩み】

旦那が家事をいくつかは担当してくれるんですが、クオリティが低すぎるんです。食器洗いとか終わった後の惨状を見ると、イライラします。これならば自分でやった方が良いと思ってしまいます。自分でやってしまった方が良いのでしょうか?(S氏 33歳女性)

■【土屋礼央からの返答】

Sさん、ご相談ありがとうございます。最初に旦那様と男同士の会話をしても良いですか?(この本は何度か奥様方に途中退席をお願いします……)。

僕も食器洗いを担当していて、任務完了後のんびりしていたら「あぁ!もうっ!」と独り言を言っている妻の声を何度か聞いた事があります。この独り言が重要でして、妻がどの部分に不満を持っているか?の情報がその独り言に集約されているので、その独り言を二度と言わせまいと心に誓い、次回からバージョンアップした食器洗いに挑む。この繰り返しをし続ける事で、いつしか妻の独り言は減り、最近はほとんど怒られる事なく食器洗いが出来ております!

家の中は妻の国なのです。妻の法律ルールの下、生活が行われるのです。この考えを旦那さんが持てれば、全てが能動的に食器洗いも更新できます。そして法律は常に改善されていきます。最新の法律の下、行動しなければ、逮捕されますから我々国民の行動も一新しなくてはなりません。特に最初の方は見せしめ逮捕もありますので、最大限の注意を払ってください。

この法こそが家族が円満に暮らしていける秩序なのです。

お皿をしまう場所、印鑑・通帳をしまう場所等々、全てを妻に託している状態であるならば、もうそこは妻の国。

でもおかげで快適に生活が出来てますよね。だから我々が働いてきた給料を妻に手渡すのは、納税だと思えば素直に手渡せます。いつも国を守ってくれてありがとうございます……。

家での旦那は妻のカメラアシスタントであれ。もわかりやすいたとえです。カメアシの方はカメラマンを出し抜いて先回りしてはなりません。あくまでもカメラマンさんが思い描く通りの行動のサポートに徹する事が大事なのです。ケーブルさばきに徹しましょう。家事も同様と捉えております。ですから妻が使いやすいように家を構築していくのが自然な流れです。旦那もその構築の一員なのです。

妻は次、何をしたいと思っているのか?

その為に準備しておく事はないだろうか?

仕事の新人時代・アシスタント時代を思い出します。仕事だといつかは上司になり、そういう時間も減ってくるかも知れませんが夫婦間では一生アシスタント生活です。昇進はありません。追い抜いたらダメなんです。妻にとっての最高のアシスタントを目指すのが人生の喜びの一つ。先ずはこの気持ちになる事がスタートですね。奥様お待たせしました。本題に戻りましょう。実は今回のSさんのお悩みについて妻にどう思うか聞いてみました。

「聞きたい?」

ん?そりゃ聞きたいよ。

「聞かない方が良いかも知れない事もあるのよ」

え?どういう事?最近怒られないじゃん。キチンと食器洗いやってるよ?気になっている事があるなら言ってよ、参考になるし。

「じゃ言うわね」

うん……。

「私が怒っていないとでも思っているの?」

は?

「私だって、これだったら自分でやった方がマシだわ、と何度も思っているわよ」

え?

「あなたは食器洗いをやっているだけ。家事をやってないの」

へ?

家事ってのは、家を快適に綺麗な状態を保つ為にやる事なの。あなたは何にもわかってない」

ちょ、ちょっと……。

「同じ形のコップや食器を積み重ねて水切りかごに入れていくでしょう」

そりゃ、同じ形の方が綺麗に重ねられるし、コンパクトに並べられる。それはそれでこだわっているんだよ。

「それじゃ乾かないの。密閉されて乾かないの」

あ……。

「どうやって食器をしまっているのか?キッチンの床は濡れていないか?後始末は私がやってます。そこまでがキッチンの家事。その通過点が食器洗い。あなたは食器洗いしかしていない。キッチンの家事の為の食器洗いをしてください。食器洗いをしています!エラいでしょ!じゃない」

ものスゴイ量の妻の思っている事があふれ出てきました。

「ちなみに、油汚れとかが落ちていない時も結構あるよ。文句を言っても良かったんだけど、そっと食器を洗う場所に戻しているんだよね」

え?そうなの?知らなかった!でもその時に言ってくれれば良かったじゃん!

「あまりに出来が悪くてイライラするから、もう自分でやってしまおうかしらとも思ったんだけど、あなたを見ていてちょっとずつレベルが上がってきているのはわかっていたから焦るのやめたの」

あら。

「今、怒ってもめて結局自分でやるよりも、今我慢してちょっとずつスキルが上がっているならそれで良いかなと。ここまでくるのに結構な時間がかかったけど、この先、何十年も食器を洗ってくれると思ったら、これまでの時間は短いもんかなと。私も成長したでしょ」

ご配慮ありがとうございます……。よく出来た国王様じゃ……。

Sさんのお悩みのおかげで僕自身もいろいろ学ぶ事ができました。右記の妻から僕への食器洗いのリクエストも頭ごなしに言われたらちょっとムカッとくるかも知れませんが、大変な事を言われるかも……とハードルを上げてから僕の希望で聞いたので、スンナリと受け入れられました。話し合い方って大事ですね。今回妻と改めて話し合った事はとても有意義な時間でした。お互いを尊重しあう話し合い。プライスレスですよ。

まとめますと、

・夫婦で話し合う内容は、旦那のやっていると思っている家事は点であって、線になっていない。線の途中なんだという説明を優しく言う、もしくは大変な重要な事を言うそぶりを見せた後、言う。

・そしてこれから先の結婚生活の長さを考えたら、旦那を育てた方が自分にとって都合が良いと思う。

この2点でしょうか。お互い、わかっているでしょ?は実は怠慢かも知れませんね。骨の折れる作業かも知れませんが、皿が割れるよりはマシです。キッチンと話し合いましょう。

著=土屋礼央/『ボクは食器洗いをやっていただけで、家事をやっていなかった。』(KADOKAWA)