「エアコンを付けておけば大丈夫」は間違い!

 子供を保育園から引き取り、急いでスーパーで買い物を済ませてから夕飯の準備をしなきゃ! といったシーンは日常茶飯事という人も多いですよね。

 スーパーの駐車場に到着すると、子供がぐっすりと眠ってしまっていた……。そんなとき、あなたはどうしますか?

「無理に起こすのも可哀想だし、ちょっとぐらいだから、寝かせたまま買い物に行っても大丈夫だよね」と、優しさのつもりで考えるかもしれません。抱っこやベビーカーが必要な乳幼児であれば、「面倒だから」「大変だから」と、あえて置いていこうとするかもしれません。でもそれらは、「児童虐待」と取られる可能性のある行動です。

 もし晴れた昼間であれば、外気温20度ほどだったとしても、車内の温度はあっという間に50度以上になることもあります。取り残された子供は脱水症状や熱中症になり、最悪の場合は死亡してしまう可能性もあるのです。実際、毎年のように車内置き去りによる子供の死亡事故が起こっており、その場合には「保護責任者遺棄致死罪」などの重い犯罪として裁かれます。

「じゃあ、エアコンをつけておけばいいんじゃないの?」という人もいますが、それもNGです。理由はいくつかあり、まず小さな子供は目が覚めた時に保護者の姿が見当たらないと、パニックを起こす可能性があります。手当たり次第に近くにあるスイッチなどを押したりすることで、エアコンがオフになったりエンジンが停止する可能性もゼロではありません。子供がいじらなくても、エンジントラブルや、ガス欠によって止まってしまう場合もあるでしょう。

 また、エンジンはオフにして、アクセサリーモードでエアコンをつけていた場合でも、車種によっては10分、15分など一定の時間が経過するとバッテリー上がり防止のために、オフになる機能が付いていることも。30分後に戻ってきたら、エアコンが切れていて車内が猛烈な暑さだった、という事態は絶対に避けなければいけないことです。

幼児が取り残されていないか検知できるシステムの開発も!

 そして、もし自分でチャイルドシートのベルトやシートベルトを外せる子供だったとしたら、保護者を探そうと勝手に車外に出て、事故や事件に巻き込まれる可能性もあります。

 さらに、自動車盗難や車上荒らし、連れ去りなどの犯罪に巻き込まれるリスクも忘れちゃいけません。子供だけで車内にいる状況は、こうした犯罪者にとっては好都合。建物の裏側、立体駐車場といった人目につきにくい駐車場であれば、なおさらリスクは高まります。

 こうしたさまざまな理由から、たとえ5分だったとしても、子供を車内に取り残すことは絶対にNG。日本ではパチンコ店が「子供の車内放置撲滅キャンペーン」として、子供連れでの来店を断る期間を設けていたり、JAFなどが車内温度上昇の危険性を実験でレポートし、危険性をアピールしたりしています。

 ただ、死亡事故が後を絶たない原因の根底には、やはり子育ての大変さが軽減されないという大きな問題があると考えます。夫婦のどちらかに家事・育児の負担が大きくのしかかってしまうと、車内に取り残してはいけないとわかっていても、「どうしようもなかった」「やらざるを得なかった」という状況に追い込まれている実情も浮き彫りになってきます。買い物の最中に子供を見守ってくれたり、代わりに買い物をしてくれたり、子供を車内に置き去りにしなくてもいい育児環境を構築することも、子供の車内放置撲滅には必要なことだと考えます。

 そして自動車メーカー側としても、この問題をスルーしているわけではなく、日本と同じように社会問題となっている欧州では、クルマの安全性能評価試験「ユーロNCAP」において、2022年から幼児置き去り検知機能が試験対象に追加される見込みとのこと。生体を検知できる独自のレーザーセンサーを活用して、車内に幼児が取り残されていないかどうかを検知できるシステムなどが開発されており、欧州の自動車メーカーが採用することが予想されています。

 どんなに大変でも、時間がかかってしまっても、保護者として子供の命より優先すべきことは1つもないはず。何があろうと、クルマを降りるときには子供も一緒に連れて行くこと。これを今一度、徹底するようにしたいですね。