累計生産2億枚を突破したシャープの不織布マスク

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 かれこれ1年以上に及ぶコロナ禍生活で、すっかり必需品となったマスク。一時は品薄になり値段が高騰した時期もあったが、現在は山積み状態で値段も落ち着いている。そういえば、昨年春に異業種参入で話題となった「シャープマスク」は今どうなっているのか──。ジャーナリストの山田稔氏がレポートする。

【写真】顰蹙を買ったアベノマスク

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 コロナ禍で迎える2回目の暑いシーズンが迫ってきた。すでに東京では夏日を記録し、外出中のマスクが鬱陶しくなる時季である。この1年間でマスクはなくてはならない存在となった。

 そういえば、昨年の春は全国的にマスク不足が深刻化し、ドラッグストアやスーパーでは、入荷した途端に売り切れるといった事態が日常化していた。そして、元首相の発案で1世帯に2枚配布された「アベノマスク」の評判は散々だった。

 それから1年。マスクの供給は安定し、今では安い中国製マスクから、おしゃれな布マスク、高価な高機能製品まで、さまざまなマスクが手に入る状況になった。あの品薄の狂乱の日々が嘘みたいだ。

再び「不織布マスク派」が増加

 さて、最近はどんなマスクが人気になっているのか。アマゾンの人気ランキングを調べてみた(5月12日時点)。

(1)「超快適マスク プリーツタイプ 30枚入(日本製PM2.5対応)」(ユニ・チャーム)/1436円〜
(2)「GOOD MASKスポーツ用マスク 冷感 ひんやり 3枚組」(GOOD MASK)/1390円
(3)「アイリスオーヤマ 30枚3個セット 普通サイズ やわらか丸耳ひも」(アイリスオーヤマ)/1584円
(4)「アンダーアーマー スポーツマスク ブラック 1枚」/1797円〜
(5)「日本製マスク しっとり抗菌タイプ 洗える4サイズ×9カラー 1枚入り(HYPER GUARD)/1155円

 上位はともに国内メーカーの不織布マスクとなっている。アイリスオーヤマの90枚入り1584円だと、1枚当たり17.6円だ。

 使い捨ての不織布マスクは昨年のマスク不足時には、販売価格が1枚当たり100円と高騰した時期もあった。それに比べると最近では、最安値でみると、1枚当たり3円程度のものまで出回っている。価格的にはずいぶんと手ごろになってきている。

 最近は何回も洗って使える利点やファッション性の高さから、ウレタンや布マスクも人気だが、感染防止効果(吐き出し飛沫量、吸い込み飛沫量)をめぐり、不織布マスクのほうが高いとのシミュレーション結果が報道されたこともあり、再び不織布マスクを常用する人が増えている。

抽選回数53回、累計生産枚数は2億枚突破

 すっかり需給環境が安定したマスクには、さまざまなニーズがあるが、そうした中で気になったのが抽選販売で話題となった「シャープマスク」(シャープが生産する不織布マスク)の近況だ。

 安価な不織布マスクが市場に出回るなか、まだ需要はあるのだろうか。そんな思いから調べていくと、驚いたことに抽選回数は53回(5月12日抽選分まで)に及び、3月25日には生産枚数が累計で2億枚に達していたのだ。

 ちなみにコロナ禍以前、2019年度に日本国内で生産されたマスクの総数は14億8300万枚だった。年度は違うものの、異業種から参入したシャープは、わずか1年間で国内生産の13%以上にあたるマスクを生産したことになる。極めて異例の事態である。

 シャープが不織布マスクの生産に乗り出したのは、昨年のマスク不足の中で、政府(経済産業省)からクリーンルームでの生産要請を受けたことがきっかけだ。3月24日に三重県多気町にある三重工場のクリーンルームで生産をスタートし、11月6日には累計生産が1億枚を突破した。

 12月からは抽選に応募しなくても毎月30枚のシャープマスクが届く「定期便」サービスにも乗り出し、今年3月には企業や自治体向けの大口受注も開始した。それにあわせ、生産量を従来よりも10万枚多い日産80万枚に増加した。この間、「シャープマスク」は、工場がある多気町のふるさと納税の返礼品に採用されている。

顧客は値段よりも「高品質」を求めている

 シャープマスクは通常だと1箱税込み3278円(50枚入り・送料別)するが、現在は税込み2950円になる「生産2億枚突破」の記念キャンペ―ン中(5月31日まで)だ。ちなみにキャンペーン期間中の4月28日に行われた第52回目の抽選販売の応募総数は、なんと948万人超となった(新規だけでなく、過去の応募者も含まれる)。

 昨年の第1回目は約470万人だったから1年間でおよそ2倍に増えたことになる。最近も抽選回数を重ねるごとに応募総数が増えているから、いまだに新規応募者がいるということだ。

 現在はマスク販売1周年記念として、マスク購入者を巣ごもり製品販売の特別サイトに招待するキャンペーンも実施(9月30日まで)しており、さらなる顧客獲得に乗り出している。

 それにしても、ネット通販では有名メーカーの不織布マスクが1枚17円台で買えるのに、通常価格だと1枚約65円のシャープマスクが、なぜ今でも支持されているのか。当事者はどう受け止めているのか、広報担当者に話を聞いた。

「私どもが言うのもなんですが、やはり国産マスクで三重工場のクリーンルームで製造されているということの安心感、そしてウイルス飛沫や微粒子を99%カットするフィルターを採用した品質の高さなどをご支持していただいているのかなと受け止めています」

 値段よりも安心感、高品質を求める客層が確実にいるということをシャープマスクの人気は物語っている。

マスク生産は「あくまで社会貢献」

 ところで、シャープマスクの抽選は過去に応募した分も自動的に抽選対象となるため、当選通知が複数回届くケースも出てきている。そのため、同社はWeb上で「エントリー停止」ができる機能をスタートさせた。その記事に対する読者の書き込みからも、シャープマスクへの利用者の反応がうかがえる。

〈最近マスクはすぐに手に入る状態だが、やはりMADE IN CHINAばかり。CHINA生産のマスクを買う気にはなりません。送料などを含めて高い金額ではあるけれどいち早くマスク生産に取り掛かってくれたSHARPさんには感謝ですね〉

〈救世主が現れた!と思いましたね。昨年マスク不足の折には。わが家も何箱か備蓄しています。最近は当選メールが来ても購入しないこともありますが、変異株も怖いし、次にもし当選メールが入ったら購入しなければ〉

〈初めて当選して購入してから使い続けています。定期便も契約しました。国産だからこその安心感が違います〉

 一方で、こんな注文もある。

〈これから暑くなるので欲しいには欲しいのだが、シャープさん店頭購入できるようにして、お願いします〉

〈個別包装することを要望する〉

 シャープへの感謝から要望までさまざまだが、シャープマスクの記事にこれだけの具体的な反応があるところが、いまだに注目を浴びている証拠だろう。

 シャープは、生産開始から1年が経ったマスク生産について「あくまで社会貢献という位置づけで行っています」(前出・広報担当者)という点を強調していた。電機メーカーのシャープにとって、マスク生産は収益よりも、企業ブランドを高める価値のほうが大きいのではないだろうか。