昨年、“北海道の職人、伊藤製作所の4代目伊藤慧太が作る高品質の中華鍋”が中国で大ヒットした。伊藤製作所という会社も、伊藤慧太なる職人も存在せず、写真に写る“職人”は中国人俳優。つまり、全てニセモノだ。(イメージ写真提供:123RF)

写真拡大

 昨年、“北海道の職人、伊藤製作所の4代目伊藤慧太が作る高品質の中華鍋”が中国で大ヒットした。伊藤製作所という会社も、伊藤慧太なる職人も存在せず、写真に写る“職人”は中国人俳優。つまり、全てニセモノだ。

 商品のページを見ると作務衣を着て、ひげをたくわえた“職人風”の人物が微笑んでいる。また、日本語で書かれた説明書きなどもあり、いかにも本物そっくりだ。後にこの商品が完全に中国製であることが暴露され、広告に載せられた職人も存在しないことが明らかにされた。商品を購入した消費者は、代金の返金などを要求しているが、未だに返金されていない。

 この問題について、10日付けの台湾メディア商周が、なぜこれほど日本の「ニセモノ職人」の商品が多いのかを分析し、ニセモノがこれほど人気なった2つの理由を挙げている。

 理由の一つは、中国人が“職人業”のようなプロの精神へのあこがれを持っている、という点。裏を返せば、そうした“匠の精神”には、中国ではなかなか出会えないから、希少価値が高まるとも言えそうだ。

 さらに、もう一つの理由は「消費者はストーリーに魅力を感じる」という点。商品の背後にあるストーリーは、その商品をさらに魅力的にし、人を惹きつける。ストーリーを物語るようなキャッチコピーや写真により、そうした神話が徐々に現実味を帯びていく、というわけだ。ちなみに、現在中国では「愛国的」なストーリーを持つ商品が多数出現し、新たな切り口の「ストーリー性のあるマーケティング」が人気になっている。

 一度成功したビジネスモデルは、次々と模倣され続ける。このニセ日本人職人問題は、今後も後を絶たないだろう。(編集:時田瑞樹)(イメージ写真提供:123RF)