最近まで「おしどり夫婦」を演じていた(AFP=時事)

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 米マイクロソフト創業者で世界一の慈善活動家であるビル・ゲイツ氏(65)とメリンダ夫人(56)の離婚をめぐり、米メディアから不穏な情報が流れている。離婚の理由には、少女売春ネットワーク経営で有罪判決を受け、勾留中に首つり自殺した富豪、ジェフリー・エプスタイン元服役囚(享年66)とビル氏の交友があったというのである。

【写真】一見、典型的なセレブカップルに見えていたエプスタイン元服役囚とマクスウェル被告は少女売春組織の元締めだった

 これは政治やポップカルチャーを専門にするリベラル系ニュースサイト「デイリー・ビースト」の特ダネだ。エプスタイン氏は、ドナルド・トランプ前大統領、ビル・クリントン元大統領ら米政財界の大物、さらにはエリザベス英女王の次男、アンドルー王子との交流もあった大物食いの元ヘッジファンド経営者。クリントン氏などは、エプスタイン氏のプライベートジェット「ロリータ・エクスプレス」で26回もバージン諸島などにある別荘に招待されていたとされる。

 表は富豪、ところが裏の顔は、未成年の少女ら数十人をセレブたちに周旋していた売春業者だった。2019年7月には、ニューヨーク大陪審が「少女たちを性的に搾取した罪」で禁固45年の有罪判決を出し、同氏は収監された。そして、1か月後の8月、拘留施設内で自殺したのである。

 エプスタイン氏は自らも少女相手にセックスを楽しむ一方で、元交際相手のギレーヌ・マクスウェル容疑者(58=2020年11月にニューヨーク検察が起訴)をパートナーに「少女売春ピラミッド」(ニューヨーク・ポスト紙)を築いて荒稼ぎしていた。ギレーヌ容疑者はメディア王の娘で英米社交界で顔が広く、アンドルー王子は彼女の邸宅で当時17歳だったバージニア・ロバーツさんを紹介されたという。英大衆紙には、王子がこの女性の腰に手を回す写真が暴露されて大騒ぎになった。

 そのエプスタイン氏とゲイツ元夫妻はどのような関係にあったのか。「デイリー・ビースト」によれば、ビル氏が最初に同氏に会ったのは2011年。エプスタイン氏の愛人、エバ・アンダーソン・ドュビン氏のマンハッタンの家だった。紹介したのはゲイツ財団に籍を置くボリス・ニコリク、メラニー・ウォーカー両博士。2人ともマサチューセッツ工科大学(MIT)のメディアラボの客員研究員を兼務していた。そのMITメディアラボは、エプスタイン氏から52万5000ドル(約6000万円)の資金を受け取っていたが、少女売春が明るみに出たことで、当時所長だった日本人の伊藤穣一氏が辞任している。

 初対面から2013年までに、ビル氏はエプスタイン氏と数回会っている。そして、メリンダ氏がエプスタイン氏に会ったのは2013年9月のこと。ゲイツ元夫妻の知人が証言する。

「その日、夫妻はピエア・ホテルで行われた『ラスカー・ブルームバーグ公共サービス賞』の授賞式に出席、マイク・ブルームバーグ市長(当時)と一緒に写真を撮った日でした。そのあとエプスタインと会ったのですが、メリンダは初対面から生理的に不快感を持ったようです。場所はマンハッタンのエプスタインの家だったそうです」

 エプスタイン氏は、すでに少女買春で有罪判決を受けた過去があり、のちにトランプ政権で労働長官を務めたアレキサンダー・アコスタ検事と司法取引を結んで、「夜だけ刑務所で過ごす」という異例の扱いを受けたこともあった(アコスタ氏はその事実が発覚して長官を辞任した)。メリンダ氏が、そうしたエプスタイン氏の過去を知っていた可能性は高い。ビル氏には、「あんな男とは二度と付き合わないでほしい」と懇願したとされるが、ビル氏はその後も会っていた。

 ビル氏は2019年9月、エプスタイン氏との関係について「デイリー・ビースト」の記者に聞かれて、こう答えている。

「私はニューメキシコにもフロリダやパームビーチにも(エプスタイン氏と一緒に)行ったことはない。彼の周りにいる人間の中には『もし献金が欲しいならエプスタインは多くの金持ちを知っているぞ』と言ってくる者はいた。彼と会う時はいつも第三者が同席していた。私が知る限り、彼からは1セントも寄付金などもらっていない」

 それではなぜ何度も会っていたのか。ビル氏に少女買春の疑いがあるかはわかっていないが、敬虔なカトリック教徒のメリンダ氏にとっては、エプスタイン氏の存在自体が不快だったことは想像に難くない。

「彼女が名門デューク大学院でコンピューターサイエンスを学び、最初に就いた仕事は少年少女に数学やコンピュータープログラムを教えることだった。未来ある少年少女を食い物にするエプスタインのような男は許せなかっただろう」(メリンダ氏の大学院同窓生)

「ニューヨーク・タイムズ」(5月8日付)は、「財団の運営をめぐってかなり前からゲイツ元夫妻は対立していた」と報じた。女性の地位向上や健康に重点を置きたいメリンダ氏に対し、ビル氏は気候変動と次世代型原子炉開発に執心していたという。ただし、それだけが離婚理由とも考えにくい。メリンダ氏がエプスタイン氏を嫌っていたならば、なぜビル氏が1セントも寄付を受けていない同氏にそこまで執着したのか。ビル氏は黙して語らない。

■高濱賛(在米ジャーナリスト)