日本は本当に先進国?ワクチン接種「英国と日本」の決定的な違い

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ワクチン接種が進まない理由は…ロンドンからのレポート

1月からワクチン接種がスタートした英国。4月中旬頃からは、それまでは毎日のように流れていたコロナ感染死亡者数のニュースを聞かなくなったという。英国在住30年の三浦マイナリ順子さんのレポートです。 

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英国のワクチン接種率は世界をリードしており、3493万人の人が1回目を終え、2回目の接種を受けた人が1629万人を突破した(5月5日現在)。 英国の人口は約6800万人なので、国民の半数以上が1回目を、約5人に1人が2回目の接種を完了したことになる。つまり、全人口の半数近くが抗体を持ったということだ。しかし、英国で13万人近くがコロナウイルスで亡くなっており、逆に日本の死者は1万人あまりというのも事実だ。

手際が良くないはずの英国が…

日本に比べて、何かにつけて手際が良くないはずの英国だが、今回のワクチン接種プログラムは速やかに着々と進められている。筆者のまわりの人たちにも接種可能の通知が届き、飛び上がって喜んだ人が何人もいると聞く。

英国の接種システムは実によく運営されていて、各会場では多くのボランティアの人の助けをかりながら、全てが機能的に行われている。その手際の良さは、会場に入ってから出るまで約20分で終了するという具合。英国在住の日本人で予防接種を受けた友人たちは皆、口を揃えて「イギリス、やればできるじゃん!」と言っている。なんでも30分以上待たされるのが当たり前の英国なのに、だ。

スムーズにワクチン接種が進むワケ

今回のワクチン接種を管轄しているのは、NHS (National Health Service/国民健康保険)というイギリス政府が運営する国民保険サービスで、税収などの一般財源によって賄われている医療機関だ。英国では、医療が原則無料で提供されていて(処方薬、歯科、眼科検診を除く)、国民のほかに6ヵ月以上滞在する留学生や駐在員などの外国人にも登録が義務づけられている。

そして、加入者には「NHS 番号」が与えられ、加入者全員が最寄りのGP(General Practitioner/家庭医又はかかりつけ医)に「携帯電話の番号」と「メールアドレス」を登録することになっている。

今回のワクチン接種で活躍したのがこの組織と仕組みだ。

友人Kさんの場合。GPから携帯テキストと手紙でワクチン通知が来た。そして、1回目だけでなく2回目も、携帯電話で一度に予約が完了。接種会場として、最寄りの大きな病院の隣に簡易的に作られたプレハブの建物がワクチンセンターになっていたそうだ。

接種当日は、予約の時間に会場に行き、順番が来るまでプレハブの外で数人と行儀よく並んで待つ。順番が来たら建物に入る前に用意された新しいマスクに取り替え、手を消毒して会場に入る。接種されるワクチンの種類は事前に知らされず、接種直前に「注射はアストラゼネカです」と言われる。承諾する場合はそのまま接種、もし別種のものが希望ならば、その日は打たずに帰されるそうだ。接種後は経過観察のため、運転をする人は15分、徒歩で帰る人は5分会場内で待たされる。

「ロンドンオリンピックの時のボランティアもすごいと思ったが、コロナのワクチン接種会場のボランティアの人たちはそれ以上にオーガナイズがすごい」と友人の一人は絶賛していた。

接種後は、全員が「接種証明カード」をもらう。ただし、今の段階では、この証明カードを見せることで、何かができる、できない、どこかへ行ける、行けないという規律はまだない。そして、あくまでもワクチン接種することは義務ではないので、たとえNHSで働く人でも自分の意思で決めることができる。

各人のパスポートにワクチンを接種済みの証明を貼りつける、という話も出たが、すぐその後に注射を打たない人に対し公平ではないと、反対を訴える嘆願書の署名メールが筆者にも送られてきた。

フレキシブルな対応

今現在、英国で承認されている新型コロナウイルスのワクチンはアストラゼネカ、ファイザー、モデルナの3種。いずれのワクチンも2回打たなければならない。しかし、2回目は1回目ワクチン接種から、12週後までに接種すればいいことになっている。

英国でも日本同様に、ワクチン接種の順番は高齢者から案内が送られることになっているが、その前に医療従事者、ケアホームの住人と関係者が年齢に関係なく接種が行われた。そして次に「エッセンシャルワーカー」と呼ばれる人たち、基礎疾患を有する人への接種が優先的に進められてきた。政府は4月の中旬までに、これらの人たちに加え50歳代の人たちの1回目の接種を全て完了したと発表した。

4月27日以降は42歳までの人にワクチン接種の案内が送付されている。同時に、今まで実例がないということから認められていなかった妊婦への接種も、本人が希望した場合に許されるようになった。

予定では、7月末までに全成人の1回目の接種を完了できるようにするらしい。

英国からみた現在の日本の姿

これだけ英国が迅速にコロナ予防接種を行えることができた理由のひとつは、スマートフォンの普及と、それをNHSや政府が大いに活用したところが大きいと思う。

このSNSオンラインシステムの活用は、日本とイギリスに違いがあると感じざるを得ない。もちろん、携帯を持っていない、オンラインが使いこなせない、オンラインと繋がっていない、GPやNHSに登録していないひとたちもいるので、漏れがあるかもしれないということを考える必要はあるが。

接種開始から4ヵ月ほどで国民の約半数以上のワクチン接種が完了した今、ワクチン接種が一向に進まない故郷からのニュースを聞くたびに、英国に暮らす日本人の間では「本当に日本は先進国なのだろうか」と疑問の声が上がっている。

英国に比べ日本のワクチンの接種率が低いのは、ワクチンの供給量の問題だけではなく、古いものを捨てきれず、そして新しいことを導入するのに時間がかかることが理由のように見える。すぐに決断と行動しなければいけない今、ぐだぐだと考えている時間はないのだと、歯がゆく思えてしまうのは私だけはないはずだ。

コロナワクチンの効果がみえはじめ、天気もそろそろ良くなってきた英国。この先すべてを楽天的に考えることはできないが、ボリス・ジョンソン首相が掲げた英国内コロナ対策のロードマップは、今のところ順調に進んでいると言えるだろう。

取材・文・写真:三浦-マイナリ順子(Junko Miura-Mainali)
英国在住30年。ロンドンを拠点にテレビ、雑誌、広告など日本のメディアでエネルギッシュに外への発信を10年ほど行ってきたが、ヨーガを先祖代々行う夫との結婚を境に180度方向転換。今はヨーガ講師とドゥーラ(産前〜お産〜産後の妊婦さんを継続してサポートをする女性)として人の内面へと目を向け、各人がその時の最大を引き出す道案内の役目をしている。