大人の勉強はどう進めればいいのか。社会人になってから勉強に目覚めたという原マサヒコさんは、記憶術やノート術などの名著100冊からベストメソッドだけを選んで「最速で結果を出せる勉強法」を築き上げた。その一部を紹介しよう――。(第1回)

※本稿は原マサヒコ『世界一やさしい超勉強法101』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。

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※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mediaphotos

■選択の機会を減らし「ウィルパワー」を温存する

情報化社会のなかで重要なのはとにかく集中すること。では、集中力がどこからくるかというと、額の2〜3cm奥にある前頭葉です。前頭葉が思考や感情をコントロールするわけですが、その力は「ウィルパワー」と呼ばれているとか。

メンタリストDaiGoさんのベストセラー、『自分を操る超集中力』によれば、ウィルパワーには一定の量があり、集中力を使っていくと徐々に減少していくといいます。ではウィルパワーをいかに減らさないようにできるかというと、いくつか工夫があるようです。

たとえば、日々の生活の中で「選ぶ」という機会を減らすことです。有名な話ですが、Appleの創業者であるスティーブ・ジョブズはいつも同じ黒いタートルネックを着ていました。それは、服を選ぶという機会を減らしてウィルパワーを温存していたのです。さすがに毎日同じ服装にするのはマネできないかもしれませんが、7日間の着回しコーディネートを予めハンガーにセットしておくなどすると、ウィルパワーの減少を防ぐことができるはずです。

他にも、意志決定すべきことはなるべくその場で即時に判断していくべきです。後回しにすればするほど、ウィルパワーを消耗して集中力が落ちてしまうからです。

■脳の80%を占める水分の補給を忘れずに

さらに、水分の補給を忘れてはいけません。脳の80%は水でできていますので、水分の不足はそのままウィルパワーの減少に繋がってしまいます。こまめに水分を摂るようにすると、集中力を維持できます。

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同じ水分でも、集中力が高まるからとコーヒーやエナジードリンクを好む人もいるかも知れません。しかし、コーヒーやエナジードリンクの効果を発揮するにはコツが必要です。コーヒーは1日の適量が450mlくらい、エナジードリンクは1日125mlくらいです。これを超えると脳への刺激が過剰になってしまうので要注意です。

また、コーヒーを飲む際にはヨーグルトを一緒に摂ると良いようです。コーヒーを飲むと20分〜30分後にカフェインが効いて集中力が高まりますが、90分から150分で効果が切れて体がだるくなってしまうことがあります。ヨーグルトなどの乳製品を一緒に摂ると、その反動を和らげてくれるといいます。

■カギとなる成功要因「KSF」を見つけよ

転職や昇給のためにと資格を取ろうと思っても、なかなか時間が取れない人も多いでしょう。実業家の本田直之さんが書かれた『レバレッジ時間術』によれば、限られた時間で学ぶ際に重要なのは「KSF」を見つけることだといいます。

事業や業界においてカギとなる成功要因のことを「KSF(Key Success Factor)」といいます。この「KSFを見つける力」というのはビジネス社会のなかでとても重要なものですが、資格を取るとか受験をするうえでも、同様に重要であると考えます。

例えば、同じ大学を受験する場合でも、真面目で学校の成績のいい「秀才」が不合格になる一方で、大して勉強もしていなかった生徒が合格することがあります。これはつまり、KSFを見つけているか否かの差なのです。

■必要な時間はスケジュールから「天引き」

では、試験におけるKSFとはなんでしょうか。1つのカギは、「過去問」でしょう。試験においては過去問を分析して、勉強する範囲をまず絞り込むのが合格の鉄則といえます。しかし、真面目な人は、参考書を全部覚えようとしたりしてしまうので、結局、どれも中途半端になって失敗してしまうのです。

原マサヒコ『世界一やさしい超勉強法101』(飛鳥新社)

試験におけるもう1つのKSFは、「合格最低点ねらい」です。合格をするには基準点があります。その点を上回っていれば合格というラインです。ですから、わざわざ100点満点を取る必要はないのです。6割なり7割なり、最低ラインさえクリアできていれば合格できます。

「過去問」と「合格最低点ねらい」には、いずれも事前に頭を使って時間をかけて取り組む必要があります。しかし、「時間がないから」と焦ってしまい、KSFを見つけることをせず、結局は遠回りして失敗してしまう人が多いのです。

では、時間を作るためにどうすればよいかというと、「天引き貯金」の発想が必要だといいます。お金を貯めるための最も確実な方法は、収入のうちの一定額をあらかじめ貯蓄に回し、残ったお金で生活をするという方法です。それと同じように「時間が余ったらやろう」と思っていても、「いつか」「そのうち」という時はやってきません。重要なのは、やりたいこと・やるべきことのための時間を、あらかじめスケジュールから「天引き」することなのです。

■「いい道具」と「いいコーチ」を揃えよう

社会人の勉強の場合、特にIT機器など新しい道具をいかに使いこなすかが重要になります。忙しいなかでの勉強となると、PCで動画を閲覧したり、スマホで音声を聴いたりして、無理なく効率的に勉強していく必要があるからです。

人間の記憶力や意志の力はさほど大差はありませんから、勉強法において他者より抜きんでるためには「道具」と「やり方」にフォーカスするべきだと、経済評論家の勝間和代さんは『年収10倍アップ勉強法』で書かれています。具体的には、「勉強もスポーツと同じで「いい道具」と「いいコーチ」を揃えたほうが、独学で練習するよりも上達が早い」とか。根性論や努力論ではなく、正しいやり方でスキマ時間を使いながら練習を重ねていくべきだということですね。

■勉強にかかるお金は「投資」だと意識する

「いい道具」と「いいコーチ」を揃えるということは、つまりお金が掛かるわけですが、社会人の勉強というのは特に給料や副業などを考えると「収入」にも繋がっていくわけです。ですから、勉強を続けるための仕組みには惜しみなく「投資」をしていきましょう。投資の目安として、20代であれば月収の5%〜10%ぐらいは投資するべきだとか。仮に月収が25万円であれば、2万5千円を「勉強」もしくは「勉強環境」への投資に使うわけですね。

本や教材などのコンテンツに直接投資することも大事ですが、それに加えて継続するための仕組みや、ラクにできるようなツールにも投資するべきです。少ない時間のなかで勉強をするわけですし、仕事との両立をするためにはできるだけラクなほうがいいですからね。

そうして学びを続けて収入に繋げていき、収入が増えたらまた勉強の投資に使っていく。それを繰り返すことで福利効果が働き、ある日突然、成長曲線が上を向いていくといいます。ぜひ「投資」を意識して勉強を続けていきましょう。

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原 マサヒコ(はら・まさひこ)
プラスドライブ代表取締役
1996年、神奈川トヨタ自動車に現場メカニックとして入社。5000台もの自動車修理に携わりながら、トヨタの現場独自のカイゼン手法やPDCAサイクルをたたき込まれる。現在はWEBマーケティング会社を設立し、クライアント先の現場にてWEBカイゼンやPDCA施策の推進を図りながら“やりきる力”を発揮している。著者に『どんな仕事でも必ず成果が出せるトヨタの自分で考える力』『Action! トヨタの現場の「やりきる力」』などがある。
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(プラスドライブ代表取締役 原 マサヒコ)