約442万台の車両が東京都で登録・届出されている

 世界に誇る大都市「東京」。推定人口は1396万人。その中心部である23区内はJR山手線がグルリと一周しているのに加えて、縦横無尽に地下鉄が整備され、タクシーやバスなどもひっきりなしに道を走るなど公共交通機関が発達している。

 そのため東京でクルマを持つ必要はなく、運転免許さえ不要という声もある。たしかに東京で一人暮らしをしているような大学生や若い世代にとってクルマを持つということは非現実的に思えるだろう。

 しかし、東京にクルマがないのかといえばそんなことはない。ドライバーであれば都内の渋滞には日々悩まされているだろうが、東京には多くのクルマが登録されている。

 自動車の保有についてのデータを持つ、一般財団法人 自動車検査登録情報協会の発表している数値によると、国内全体と東京の保有台数は以下のとおり(2021年1月末現在)。

 都内ではクルマは不要といいつつ、約442万台の車両が東京都で登録・届出されているのだった。とはいえ、日本の人口はおよそ1億2557万人であり、東京の人口はそのうちの11.12%にあたる。

 日本全国の保有台数に対する東京の比率が5.36%というのは、たしかに東京ではクルマが持ちづらい、不要と考えている住民が多いという証左であろう。まして、ここでいう保有台数は個人保有に限った話ではなく、業務用も含んでいることを考えると、たしかに東京ではクルマが持ちづらいと感じる人が多いということは、数字からも想像できる。

 実際、都心部の一等地ともなると月極駐車場にかかるコストが二桁万円というところもあり、前述したように公共交通機関も整備されている。タクシーもすぐに乗ることができる環境であることを考えると、移動の手段としてはマイカーを持つよりもなんらかの公共交通機関を適宜利用するほうが優位なのは間違いないだろう。

二輪は多いが軽自動車はかなり少ない

 ただし、東京といってもじつはかなり広く多様性がある。

 東京都の発表によると、エリア別の人口は23区が965万5266人、市部が422万4446人、郡部が5万5951人、島部が2万4573人(2021年1月 推計値)。一口に東京といっても23区を除くとクルマを持つためのさまざまなコストは下がるだろうし、公共交通機関の整備状況も変わってくるのでマイカーを持つことのベネフィットは大きくなる。まして島部においてクルマは必需品といえるだろう。

 ところで、東京の保有台数のデータで注目したいのは全国に対する二輪車の比率が高いことだ。駐輪場も問題もあるが、意外に都内では二輪車の機動性は高く評価されているのかもしれない。たしかに23区内でも古い街並みのエリアは道も狭く、そもそも自動車の運用が想定されていないと感じる場所も少なくない。

 とはいえ軽自動車の新車販売でみると、東京は非常に少ない(2021年3月で5086台、全国比は2.80%)。23区内でマイカーの維持コストを払えるようなユーザーは軽自動車を買わないというイメージ通りの結果となっている。

 結論としてまとめると、「東京でクルマが持てない」という言い方もあるが、乗用車だけでも314万台ものクルマが存在しているのだから、絶対数でいえばクルマを持っている人は少ないわけではない。とはいえ、一人当たり保有台数でみると全国平均を下まわるように、クルマを持ちづらい傾向にあるのも数字が示している。

 少なくとも23区内など公共交通機関が整備されているエリアに限れば「東京ではクルマを持たない」ほうがスマートなライフスタイルといえる。マイカーを持たず、必要に応じてシェアリングするような楽しみ方が都市型カーライフの新しいスタイルといえるのだ。