離婚が決定した夫婦「これまで暮らした家」の壮絶な後始末

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離婚の際夫婦で築いた財産は原則的に折半することになりますが、不動産の場合は現金と異なり、簡単に分けることができません。そのため、売却してお金を分ける、あるいは片方が相手の持分を買い取るのが一般的ですが、ローン残額がある場合は一筋縄ではいきません。また、よく考えずに放棄してしまうと、結果的に損をする場合もあるため注意が必要です。事例をあげながら選択肢を探ります。

生涯の愛を誓ったが、離婚に…マイホームはどうなる?

マイホーム取得のタイミングは、結婚と同時に、あるいは結婚後に夫婦で力を合わせてお金を貯めてから…など、家庭の方針によってさまざまです。いずれにしろ、夫婦で話し合ったうえ、お互いのライフスタイルに合った物件を選ぶことになるでしょう。

しかし、人生はなにがあるかわかりません。幸せを誓ったはずの夫婦が「離婚」へと発展してしまったら、マイホームは「終の棲家」ではなくなります。夫婦それぞれ思い入れがあり、手放しがたい資産でもあるマイホームは、離婚時の財産分与の協議上、どんな扱いをされるのでしょうか。

(※写真はイメージです/PIXTA)

夫婦で築いた財産は、原則「折半」だが…

不動産を購入したら、物件の引き渡しと同時に所有権移転登記を行うのが一般的です。

不動産の所有権登記は、原則として購入資金を出資した人の名義になります。近年は夫婦共働きの家庭も増えてきましたが、夫婦のいずれか一方が働き、もう一方は家庭に留まり家事をするという家庭もまだあります。

夫婦ともに収入があり、購入資金も2人で出し合えば、所有権登記は夫と妻の共同名義にできます。一方、夫婦のうち片方しか働いていない場合は、働いている人の資金で購入することになりますから、不動産登記は当然、出資した人の単独名義になります。

では、離婚の際の財産分与と所有権登記とは関連性があるのでしょうか?

●夫または妻の単独名義の場合

離婚する際、夫婦の財産は折半するのが原則です。たとえマイホームの所有権が夫婦いずれかの単独登記だったとしても、そのルールは変わりません。「全額支払ったのに折半は不公平だ」と単独名義人が納得せず、財産分与の話し合いが進まない場合は、家庭裁判所で離婚調停を行うことになります。

離婚における不動産の財産分与の方法は2つあります。ひとつは不動産業者に依頼してマイホームを売却し、その売上金を夫婦で折半する方法、もうひとつは夫婦の一方がもう一方の権利(不動産持ち分)を買い取り、マイホームの所有権を得る方法です。

売却の場合は売上金で処理できるので簡単ですが、権利買い取りの場合は複雑で、マイホームの時価がわからないと価格を確定できません。夫婦それぞれが「適正」と主張する価格に乖離があっては、解決まで時間がかかってしまいます。権利買い取りの方向で協議する場合は、不動産鑑定士等の専門家に査定評価を依頼した方が賢明です。

●夫婦2人の共同名義の場合

夫婦の共同出資で購入したマイホームであれば、資金を出し合った割合で所有権を登記することになります。たとえば、5,000万円の住宅をそれぞれ2,500万円ずつ出し合って購入した場合、登記簿には「夫1/2、妻1/2」と記載されます。

または妻が頭金の500万円だけ支払い、夫が4,500万円分の住宅ローン返済債務を負った場合、登記簿には「夫9/10、妻1/10」と記載されます。このような夫婦2人の共同名義であっても、マイホームの取り扱いは「財産折半」の原則に従い、売却して折半するか、一方の持ち分を買い取るかになります。

●住宅ローンが残っている場合は?

しかし、住宅ローンの返済が絡んでいる場合は話が違ってきます。

もしマイホームの査定価格がローンの残債額より安くなってしまったら、足りない金額を補填しないと、登記簿にある金融機関の抵当権が外せないため、売却は困難になります。また、ローン債務者でない元妻が住み続ける場合、元夫に代わってローンを支払うことになるため、ローン契約を元妻名義で新たに組み直さなければなりません。

ローン契約時には支払い能力の審査があり、固定収入をもたない専業主婦では新規契約は難しいでしょう。協議の上、夫が離婚後もローン支払いを継続するという解決法もありますが、赤の他人がいつまでも律儀に支払いを続けてくれるとは考えられません。

ローンを嫌って放棄すると「損をする」場合も

元配偶者に「残っているローンの支払いはするから、家の権利を無償で譲ってください」という提案をされたとしましょう。それを受け、「たしかに、これから数十年間ローンに縛られるにはイヤだ」と考えたとして、即時に「では、譲ります」と承諾していいものでしょうか? 答えは「No」です。

建物が古いからといって、必ずしもローン残債より安く評価されるとは限りません。鉄道駅や商業施設開業などに起因する周辺環境の魅力向上によって、土地と建物を併せた査定評価が予想以上に高額となる場合もあるのです。

「ローン支払いを続けられるかどうか自信がないから、マイホームは相手に譲る」と安易に財産分与の権利を放棄しては、あとで後悔することになりかねません。

 こんなケースもある…財産分与で権利を放棄してはいけなかった例

★購入時の価格:5,000万円(住宅ローン利用)

★ローン金利を含めた支払い総額:5,460万円(固定金利0.5%・返済期間35年)

★離婚時のローン残債:2,260万円(ローン返済20年目時点)

★離婚時の査定評価額:3,500万円

上記のケースでは、5,000万円で購入したマイホームが、20年後に3,000万円以上の査定評価を得ています。

ローンを含めた支払い総額から離婚時(購入から20年後)の残債を引くと、すでに半分以上の支払いを終えている(5,460万円−2,260万円=3,200万円)ことが分かります。加えてローン残債より査定評価額の方が高いので、この段階で売却すれば1,000万円以上の利益が出る(査定評価額3,500万円−残債2,260万円=1,240万円)ことも分かります。

立地等によっては、決して珍しい話ではありません。ローンの支払いを嫌って簡単に財産を放棄してしまったら、損することは明らかです。

「査定評価」でマイホームの真価を知る

査定評価額がローン残債と権利買い取り額を上回る場合は、売却でプラス資産になる可能性もあります。とはいえ、住み慣れた場所を失うのは不安でしょうし、新たに賃貸住宅を借りるとしても、以前と同じ生活レベルが保てるか分かりません。

経済的に余裕があるなら、そのまま住み続けてもいいですが、そうなれば、離婚した相手とともに暮らした家のローンに縛られ続けることになりますし、よくも悪くも思い出深い場所に止まることになりますので、その点は熟考することをお勧めします。

住む場所が変わる不安はあっても、心機一転して新たなステップへと進みたいという人は、思い切って「売却」するのも手です。不動産会社に査定評価を依頼し、想定以上の価格が出るようなら強気の価格で売り出して現金化するのです。

もちろん、周辺環境や建物の状態によって、希望の結果が出るとは限りませんが、プロの査定結果を精査しながら、買い取るのか売却するのか、後腐れないようにしておくことが大切でしょう。