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SF90の位置づけを理解しよう

text&photo:Kazuhide Ueno(上野和秀)

フェラーリ初の量産プラグイン・ハイブリッド車(PHEV)として、2019年にデビューしたSF90ストラダーレのオープン仕様「SF90スパイダー」が、この春に日本公開された。

【画像】フェラーリSF90スパイダー/ストラダーレ【細部まで見る】 全181枚

SF90は、これまでの内燃8気筒ミドシップ2シーターとは別ラインとなる、電動ミドシップ2シーターというポジショニングが与えられた。


システム統合出力1000psを発揮するPHEV「フェラーリSF90スパイダー」。    上野和秀

ちなみにSF90ストラダーレという車名は、SF=スクーデリア・フェラーリ設立90周年を祝ったストラダーレ(ロードカー)という意味で、F1で培われた技術を投入した最先端のPHEVスーパースポーツである。

SF90ストラダーレのオープンバージョンとなる「SF90スパイダー」は、2020年11月12日にマラネッロで発表され、今年4月に日本で披露。

お披露目されたSF90スパイダーは、ライティングで印象が変わる新色のジアッロ・モンテカルロのボディカラーが目を惹いた。

SF90スパイダーのフェラーリ内での位置づけは、ハイパフォーマンスで走りが楽しめるモデルとされ、F8スパイダーと812 GTSの上位に位置する。

リトラクタブル・ハードトップ詳細

ここであらためてSF90スパイダーを説明すると、SF90ストラダーレをベースにルーフをリトラクタブル・ハードトップ(RHT)化したオープンモデル。

往年のF355スパイダーのようにフラットデッキのフルオープンにはならず、キャビンの後方には360スパイダーに始まるロールバーを内蔵したフェアリング状のカウルが備わる。


フェラーリSF90スパイダーのリトラクタブル・ハードトップ。ルーフオープンまでの一連の動作も撮影することができた。    上野和秀

エクステリア・デザインはフェラーリ・スタイリングセンターの手によるもので、これまでにない新たなスパイダーの姿を示している。ボディサイドからキャビンを包み込むような造型とされ、これまでにない一体感のあるスタイリングが特徴といえる。

RHTの開閉時間は14秒で、タウンスピードであれば走行中の開閉も可能だ。

RHT本体はアルミニウム製で、耐候性・遮音性に優れた快適なキャビン空間を得ている。

一般的なRHTでは150〜200Lの格納スペースが必要だが、SF90スパイダーでは巧妙な設計により100Lとコンパクトに。また、多くのRHTシステムに対して40kgの軽量化を実現。

デザインを細かく見てゆくと、458スパイダーで廃止されたエンジンフードのウインドウが復活し、再びエンジンをショーアップするようになった。

パワートレインは共通

SF90スパイダーのパワートレインは、SF90ストラダーレと共通だ。

ミドに積まれる新開発の4L V8ツインターボは、新設計の燃焼室とセンターインジェクションを採用し780psを発揮。


フェラーリSF90スパイダーのフロントラゲッジ。    上野和秀

電動モーターは左右の前輪に1基ずつと、リアはエンジンとギアボックス間に1基が配され、3基合計で162kW/220psの最高出力を発揮。システム合計で1000psに達する。

エンジンには8速デュアルクラッチ・ギアボックスが組み合わされ、リバースは前輪の電動モーターが担当するため機械的なギアは備わらない。

駆動方式は前輪を電動モーターが駆動するオンデマンド4WDとされ、トルクベクタリングが行われることにより最適なトラクションと操縦性を実現。

Eドライブ・モードを選べば電動モーターだけで25kmの走行が可能で、住宅地で早朝深夜の出入りに役立つ。

動力性能は最高速度340km/h、0-100km/h加速2.5秒はSF90ストラダーレと変わらないが、0-200km/h加速は0.3秒増しの7.0秒となる。

アセット・フィオラノも選択可能

サーキット走行車両として機能を極限まで高めたいオーナーに向けて、サーキット用のセットアップが施される「アセット・フィオラノ」がラインオプションで用意されている。

その内容は、サーキット走行に最適化されたダンパーと、ハイダウンフォースを発生させるカーボン製リアスポイラー、Sタイヤといえるミシュラン・パイロット・スポーツ・カップ2で構成。

このほかカーボンとチタンを各部に用いて21kgもの軽量化が施され、運動基礎性能を高めている。アセット・フィオラノ・パッケージの価格は631万4000円となる。

日本価格、納車時期について

気になるSF90スパイダーの日本における基本価格は5856万円。

ベルリネッタのSF90ストラダーレに比べ、516万円高となる。すでに受注を開始しており、デリバリー時期は今年末からを予定しているという。


フェラーリSF90スパイダーの内装。    上野和秀

フェラーリのオープンモデルと比較すると、812 GTSの4523万円、F8スパイダーの3657万円の上に位置することが分かる。

現在購入できるハイブリッドのスーパースポーツは、少量生産のハイパーカーを除くと、フェラーリSF90のほかマクラーレン・アルトゥーラ、ホンダNSX(2020年モデルの日本仕様は終売)の3択と言える。

分かり易くパワーと価格で比べるとSF90スパイダーが1000ps/5856万円、アルトゥーラは680ps/2965万円、NSX(2020年モデル)が582ps/2420万円と、SF90のパフォーマンスと高価さが際立つ。

しかし、数億円したラ フェラーリを上回るパフォーマンスを備えることを考えれば、SF90はあながち高いとは言えまい。

また、このカテゴリーはカスタマーがそれぞれのブランドへのこだわりがあるだけに、一般車のように単純に価格やパワーだけで決められないものがある。

SF90スパイダーは「買い」か

視点を変えてリセールバリューで検証してみよう。

SF90は購入額こそ大きいが、フェラーリというブランド力の高さと流通数の少ないPHEVという希少性から、売却時の残価の高さが期待できる。


フェラーリSF90スパイダー。    上野和秀

フェラーリの値落ちの少なさを示す具体的な例を挙げると、10年落ちの458イタリアが認定中古車では今も新車時本体価格の8割強。458スパイダーは、3000万円以上のプライスタグが付くという事実がある。

また458スパイダーからRHTが採用され、販売台数がそれまで主流だったベルリネッタと逆転した。

その流れは現在も続いており、SF90でもスパイダーが人気になることが予想される。

こうした流れからSF90でも、スパイダーがベストバイといえよう。手放すときの値落ちもミニマムで済むことを考えれば「買い」の1台といえる。

ただし、手にするのは簡単ではない。現在SF90は世界中からオーダーが殺到し、フェラーリを複数台購入した実績あるカスタマーでも、納車まで1年半以上も待つ必要があるという。

極みの1台は簡単には手に入らないようだ。