西山茂行さん。ニシノフラワーが桜花賞を制した姿とともに

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「ウマ娘」ブームは本物の「馬主」をも巻き込んだ。

1998年に皐月賞と菊花賞を制したセイウンスカイ、1992年の桜花賞を制したニシノフラワーらを輩出した西山牧場の代表で馬主の西山茂行さんが「セイウンスカイとニシノフラワーの墓参希望の話がいくつか来た」とツイートしたところ、ゲームのファンにたちまちに拡散されたのだ。

2頭とも、競走馬をモデルにした「ウマ娘」がレースを走るアプリゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」に登場する。「墓参」の問いかけもツイッターでバズったことも「ウマ娘」旋風の影響のようだが、「私の知らないところでどんどん話が広がって...」と話す西山さんを直撃した。

「墓参できるか」と問い合わせが

発端となった西山さんのツイートは

「ウマ娘の影響だろうか。セイウンスカイとニシノフラワーの墓参希望の話がいくつか来た。北海道西山牧場の入口にあります。墓参OKですので、事前に西山牧場育成センター事務所へ連絡ください。大歓迎します」

というもので、2021年4月20日に2頭の墓の写真などを添えて投稿した。これが拡散され、23日時点で約1万6000リツイートに達した。西山牧場は北海道日高町にある。

セイウンスカイは2011年没、ニシノフラワーは2020年に没していて全盛期は90年代、それがウマ娘の影響で若い世代にも知名度が広がっている。驚く西山さんは21日更新のブログでも、「ウマ娘」へのオファーについて、

「ダビスタの新しいバージョンみたいなゲームで、『セイウンスカイとニシノフラワーを名前を使わせて欲しい。』との問い合わせがあり、『どうぞ、ご自由にお使いください。』と、何か使用契約書に判をついた」

と振り返っている。

改めて西山さんに話を聞くと、セイウンスカイとニシノフラワーの「ウマ娘」へのオファーを受けたのは2020年の4月だった。当時「ウマ娘がどういうゲームか、詳しい知識はありませんでした」とのことで、オファーに許諾を出した後もそのまま過ぎていたが、ツイートの通りセイウンスカイとニシノフラワーの「墓参」に興味を持つ人が現れた。

まだ実際に北海道にある墓を訪れた人はいない様子とのことだが、「なかなか現地訪問が難しい状況かもしれませんが、ファンの方からのメッセージはいつでも大歓迎です」と話す。

ニシノフラワーは「良家の子女」セイウンスカイは「やんちゃ息子」

「ウマ娘」のような美少女キャラクターが登場するゲームには無縁だったという西山さんは、牡馬も牝馬も「美少女化」されていることに驚きながらも、2頭についてこう語る。

「ニシノフラワーはいわば良家の子女でお嬢様、細い子だけれどものすごい美人。雨が嫌いで、調教がちょっとでも気に入らないと飼葉も食べない。繊細な子だけど、いざレースではものすごく強いんです。
セイウンスカイはニシノフラワーとは全然違う。やんちゃ息子で馬格もしっかりしているし、ゲートにもなかなか入らない。それ以前にトレセンから競馬場に行くにしても馬運車に乗ろうとしない馬で、乗るのに30分、降りるのに30分かかるほどでした。何をするかわからない馬だけど、競走能力は高かった」

そんな2頭が「ウマ娘」ではニシノフラワーは純朴な少女に、セイウンスカイは天真爛漫ながら賢い策士となった。

こうしたムーブメントに西山さんは「もう四半世紀も前の馬の話に興味を持って、語り継いでいってくれるのは馬主としてただただうれしいです」と話しつつ、

「今は2頭の孫たちが頑張っています。僕の頭の中にあるのは、明日の競馬をどうやって勝つか、何をしたらいいのか。過去の馬の思い出にひたっているだけじゃない」

とレースに勝つ意欲は健在だ。

実はセイウンスカイもニシノフラワーも、他のウマ娘を強化する「サポートカード」としてゲームに登場してはいるが、プレイヤーがキャラクターを育てる「育成」対象としては未実装で、いつ育成対象になるかファンは注視している。実装後に2頭そして西山牧場への注目はさらに高まるだろうか。

(J-CASTニュース編集部 大宮 高史)