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ヴェゼルそっくりの試作車 上海で

text:Kenichi Suzuki(鈴木ケンイチ)editor:Taro Ueno(上野太朗)

ホンダは、2021年4月19日から中国上海において開催された「2021年上海モーターショー」において「ホンダ SUV e:protoyupe(イー・プロトタイプ)」を世界初公開した。

【画像】そんなに似ている? 新型ホンダ・ヴェゼルとSUV eプロトタイプ【比べる】 全126枚

これは、中国におけるホンダ・ブランドとして初のEVのプロトタイプだ。このプロトタイプをもとにした量産車を2022年春から発売するという。


新型ホンダ・ヴェゼル(左)/ホンダSUV eプロトタイプ(右)    AUTOCAR JAPAN

中国において、今後5年間で10機種のEVを投入するとアナウンスするホンダとして、これが第1弾モデルとなる。

ここで、驚いたのはホンダSUV eプロトタイプの姿だ。

顔つきこそ、ラジエター前をふさいだEVらしいものだが、全体としては日本で4月23日に発売されたばかりのヴェゼルにそっくりなのだ。

薄くボンネットの上側に張り付くようなヘッドライトをはじめ、ボディサイドをフロントからリアまで突き抜ける1本のプレスライン、窓の形、左右につながるリアのストップラインのデザインまで、どう見てもヴェゼルと同じだ。

その姿を見る限り、ホンダSUV eプロトタイプは、新型ヴェゼルと車体を共有しているとしか思えない。

一方で、日本で発売されている新型ヴェゼルは、エンジン車とハイブリッド車の2本立てで、EVは存在しない。

しかし、中国の発表を考えれば、ヴェゼルにはEV版をリリースすることが可能なのだろう。

では、日本においてヴェゼルは、EVモデルをリリースするのか? それとも、さらなる派生モデルが誕生するのだろうか?

日本向けにヴェゼルをベースにした、どんな電動車両が可能となるのかを予想してみたい。

ヴェゼルのピュアEV あり得る?

まず、中国向けと同じ、ヴェゼルのピュアなEV版の可能性だ。

中国で売られるくらいなのだから、当然、日本で販売することも可能なはず。

エンジン車とEVを同じ車体で実現するのは、すでにプジョー208や2008、マツダのMX-30という先達もいる。

ヴェゼルが同じように販売されるとしても、おかしなことはない。

ましてや、車体中央の下部に燃料タンクを置くセンター・タンク・レイアウトのヴェゼルであれば、その燃料タンク部分を電池に置き換えることも可能なはず。

つまり、電池を搭載しやすいのだ。

しかし、日本におけるEVの販売状況は甘くはない。

日本でEV厳しく PHEV版なら?

一般法人日本自動車販売協会連合会が発表する「燃料別販売台数(乗用車)」を見ると、ホンダeを昨年秋に発売したホンダのEV新車登録台数は、2020年中は月間200台以下であり、2021年になると1月124台、2月91台、3月57台と尻すぼみだ。

同じくMX-30 EVを2021年1月に発売したマツダも1月こそ月間97台を登録したものの、2月は29台、3月は12台と苦戦している。


マツダMX-30 EV    マツダ

こうした状況を鑑みると、新型ヴェゼルのEV版の日本発売は難しいのではないだろうか。

しかし、別の方策もある。ヴェゼルのPHEV(プラグインハイブリッド)版だ。

現在の、ヴェゼルのハイブリッドに搭載されている電池を大きくして、充電用のプラグを追加する。これは、見方によっては、発電用エンジンを搭載するEVともとれる。

いわゆるレンジエクステンダー付きEVだ。

特にホンダのe:HEVというハイブリッドシステムは、エンジンの働きの中心が発電で、駆動をもっぱらモーターに任せるというもの。非常にEVに近いのだ。

これをPHEV化すれば、その性格は、ハイブリッドというよりもレンジエクステンダー付きEVの方に近くなる。

こうした手法は、近く投入されるマツダのMX-30EVのレンジエクステンダー付きに近いものだ。

ピュアEVとして搭載する電池容量が少なめに感じても、発電用エンジンを搭載しているのだから、使い勝手は逆に良いというわけだ。

かつてのBMW i3も採用した方法だ。

ヴェゼルのPHEV化は容易なはず

実際にヴェゼルのPHEV化は容易なはずだ。

ちょうど、SUV eプロトタイプが発表された上海モーターショーで、ホンダは「BREEZE PHEV」を発表している。


トヨタRAV4 PHV    トヨタ

これは、いわゆるCR-Vの2モーター式ハイブリッドをPHEV化したもの。今年の後半に発売するというから、技術的には完成の域にある。

つまり技術的には問題ないのだ。

そして、日本においては、EVよりもPHEVの方が馴染み深い。

すでに三菱アウトランダーPHEVとエクリプス・クロスPHEV、トヨタRAV4 PHVが発売されており、どれもEVより数多く売れているのだ。

「2030年の四輪車販売数の3分の2を電動車に置換する」と言うホンダなのだから、電動車車両は中国に限らず、日本においても続々と登場するはず。

その1つとして日本ではヴェゼルPHEVが登場すれば、きっと話題となることだろう。