「報告・連絡・相談」が滞る職場と、徹底される職場の違いとは?(写真:saki/PIXTA)

「報・連・相」は「報告・連絡・相談」の略称で、仕事の基本中の基本。ですが、近年、報告や連絡を怠る社員や、自分の意見を言わない社員が増えてきたとも言われています。一体なぜ「発言することに消極的な社員」が増えたのか? ビジネスコンサルタントの大塚寿氏の新書『自分で考えて動く部下が育つすごい質問30』から一部抜粋・再構成してお届けする。

「報・連・相」は「報告・連絡・相談」の略称で、仕事の基本中の基本として広く知られていますが、部下や後輩からの報告、連絡を前提としているという欠点があります。

というのは、上司や先輩が忙殺されている時、「私に話しかけないでオーラ」が漂って、とても「ちょっといいですか〜」とは話しかけられないという事情もあるのです。

気の小さい部下、心配性の後輩などは、報告や連絡のタイミングを逸してしまったり、報告や連絡をするのを躊躇したりして、ついには能動的な報告すらしなくなってしまいます。

問題は、そういう雰囲気をつくりだしてしまった上司や先輩の側にあります。

部下に「報連相」を促す方法

一方、そういった背景があるわけではないのに、報告、連絡に消極的な人もいます。その理由も、上司から根ほり葉ほり聞かれたくない、ネガティブな報告をして叱られたくないといったことから、「報告をするのが単に面倒」というものまであります。

そうした双方の場面で効果があるのは、「何かある?」と、上司、先輩の方から報告や連絡を促す方法です。報告を促したうえで、その報告に対し「それで〇〇さんは、どう思う?」と問えば、自然な流れで部下の発言まで促されるわけです。

この方法は特に上司、メンバー全員が仕事に忙殺されていて、皆の気持ちに余裕がない時に威力を発揮します。忙しい時ほど「報・連・相」や情報共有が疎かになってミスやトラブルが多くなりますから、特にテンパっていそうに見える人、しんどそうな人には上司の方から「何かある?」と部下の発言を求めるコミュニケーションを促すべきなのです。

そうすることによって、スケジュールの遅延、トラブルの報告、そのことに対する本人の意見を聞けることになります。ミスや障害を未然に防いだり、障害の規模を最小限にとどめたりすることが可能になるのです。

さらに、「何かある? 今なら5分くらい聞けるけど」と、「今なら5分くらい聞けるけど」と付け足すと、5分ですむように端的なコミュニケーションに努めてくれるので、効率的な対話になります。整理されたコミュニケーションにすることを目的に、あえて「5分」と区切っているのです。

さて、「報・連・相」のうち、相談はともかくとして、報告と連絡は、本来組織の人間としてしなければならない義務といってもいいでしょう。

しかし、頭では義務と分かっていても、30年前も報告や連絡を怠る部下は珍しくはありませんでしたし、自分の意見を言わない部下も大勢いました。

上司に実践してほしい「攻めの報・連・相」

昨今は、その数もウエイトも増加傾向にあるのも事実です。SMAPの「世界に一つだけの花」がヒットした2002年頃から、日本特有の同調圧力もゆるくなってきたのか、「あえて自分の意見を言わなくてもいいのでは」と思う人も増えたのです。そうした時代に育った「ゆとり世代」、「悟り世代」と呼ばれる世代に、特にその傾向が強いと指摘する人もいます。

そうした環境であればこそ、上司の方から報告と連絡を促す「攻めの報・連・相」をぜひとも試して欲しいと思います。

特にマイナス情報はできるだけ早い報告や連絡を受けたいものですが、その意に反して時すでに遅しというパターンが後を絶ちません。

例えばあるSIer(システムインテグレーションを行う業者のこと)では「2分の1の法則」という、「プロジェクトメンバーの2分の1が『ヤバイ』と感じている時は、必ずトラブルプロジェクトになる」という法則があるそうですが、問題が表出するまでは絶対に沈黙しているそうです。

なぜなら「ヤバイ」という報告をするのは“仲間を売るに等しい”というメンタリティーがあるため、最後まで沈黙を貫くのだそうです。

仲間を守るためにマイナス情報を報告しないとか、その報告がまるでリークであるかのような認識は、結果的に会社に損害を与えてしまう悪しき習慣ですから、マネジメントでその悪循環を断ち切って欲しいと思います。

それには具体的な報告を求めて、さらに各論での意見を求めることです。「〇〇さん、△△△の件、どうなってる?」と、具体的な報告を上司の側から求め、さらにその報告から得られた情報に基づいて、「△△△の追加分を予算内に収めるための方法について、〇〇さんの意見は?」といった感じで。

意見を求める際、意見はあるのに伝えてこない部下に関しては、総論で尋ねると一般論的な返答になってしまう危険性があるので、さらに突っ込んだ各論で訊くのがミソです。ただしいきなり各論からでは、部下が返答に窮してしまうかもしれないので、総論的な質問を振ってから、各論に落とすという方法が好ましいかもしれません。

さらには日常的に、「△△△の件、〇〇さんはどう思ってる?」「△△△について、〇〇さんの意見はどんな感じ?」と、発言を促す「攻めの質問」を習慣づけておくと、チーム内に、意見を出さざるを得ない雰囲気が漂い始めます。「攻めの報・連・相」の亜流といってもよいでしょう。

その返答が「ええ、まあ、特に……(ありません)」的なものにならないように、上司に振られたら必ず自分の明確な意見を言わなければならないというルールを、あらかじめ伝えておくという手もあります。

「否定的な論評」はできるだけ避けること

「3秒ルール」といって、「上司や先輩からの問いかけについては、必ず3秒以内に自分の意見を言わなければならない」というルールを徹底している会社を、私は知っています。不思議なもので、その会社の社員の頭の回転は速く非常にクレバーですので、やはり効果があるに違いありません。


部下や後輩から出た意見をさらに掘り下げる関連質問はいいとして、意見そのものに対する否定的な論評は避けた方がいいでしょう。「〇〇さんはなんでいつも、そう否定的な意見ばっかり言うんだ……」とか「もっと現実的なアイデアはないか……」と、意見そのものを論評してしまうと、意見を言うこと自体をヤブヘビと感じてしまうので、逆効果になってしまいます。

また、個人的な判断基準や気分で報告や連絡をしない人については、言い方というより、なぜ報告、連絡が必要なのかを、しっかりと伝えるようにしましょう。

その意義や目的を伝えるのはもちろんですが、それを怠ることによってどのような事象やトラブル、障害が起きるかということを、実例とともに語る方法が効果的です。

具体的には、「私たちの部門は、常に情報を共有していかないと他部門や顧客に迷惑をかけるし、個人ではカバーしきれない実害を生み出すので、そこは注意しよう」といった言い方になります。