新型コロナウイルスのパンデミックによりリモート授業や在宅勤務が増加し、Zoomのようなビデオ会議ツールの需要が急増していますが、日本だけでなく世界中で「Zoom疲れ」という言葉もささやかれるようになってきました。そんなZoom疲れに陥りやすいのは、男性よりも女性であるという研究結果が発表されています。

Nonverbal Mechanisms Predict Zoom Fatigue and Explain Why Women Experience Higher Levels than Men by Geraldine Fauville

https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=3820035



'Zoom Fatigue' May Finally Have an Explanation, And It's Affecting Women More

https://www.sciencealert.com/we-may-have-found-one-of-the-main-reasons-for-zoom-fatigue-and-it-s-affecting-women-more

Zoom疲れ」に関する実態調査を行ったのは、スタンフォード大学の心理学者であるジェフ・ハンコック氏ら研究チーム。調査によると、「Zoom疲れ」の主な原因のひとつは、研究者が「mirror anxiety(鏡の不安)」と呼ぶ、鏡に映った自分自身を見つめ続けなければいけないという精神的負担にある模様。

Zoomをはじめとするビデオ会議ツールでは、ビデオ通話の中に映る自分自身を見なければいけないため、1日何時間もZoomを用いた会議が行われると、「mirror anxiety」により精神的な疲労がたまってしまうというわけです。



さらに、「Zoom疲れ」の影響には男女差があることが明らかになっています。調査では1万322人の被験者に対してZoomの影響をアンケート形式で質問しています。その結果、女性の約7人に1人(13.8%)がZoomでの会議後に強い疲労を感じていることが明らかになりました。

研究を行ったハンコック氏は、「Zoom疲れに関しては、女性がより影響を受けるという事例を聞いたことがありましたが、実際に定量的なデータでそのことを示したのは今回の研究が初めてです。そして、Zoom疲れが起こる理由を知っていることは、より重要なことです」と語っています。

ハンコック氏ら研究チームは別の研究で開発された指標「Zoom&Exhaustion Fatigue(ZEF)」を用いて被験者のZoom疲れを評価しました。なお、ZEFを用いたZoom疲れの評価は、以下のページから誰でも行えます。

Online Survey Software | Qualtrics Survey Solutions

https://stanforduniversity.qualtrics.com/jfe/form/SV_5w2JruIAQzOgiTI



Zoom疲れの原因のひとつとして挙げられているのは「mirror anxiety」ですが、これが唯一の要因というわけではありません。女性がZoom疲れを感じる要因としては、カメラの画角内に収まり続けなければいけないことに「閉じ込められている」と感じる点や、女性の方が男性よりもビデオ会議が長くなる傾向にあり、通常は通話中に休憩がない点などが挙げられています。

過去の研究によると、女性は鏡を見るときに自分自身に集中する傾向が強く、Zoomでビデオ会議を行っている際も同様の心理作用が働くものと研究チームは推測しています。ハンコック氏は「性別による差は、複数の異なる研究にわたり確認されています。そして、他要因を加味した上でも、性別による差は見られます。これは本当に一貫した発見です」とも語っています。

また、研究チームによると性格・年齢・人種によってもZoom疲れに影響が出る模様。特にZoom疲れを感じるのは、内向性の高い人、若い人、不安を感じがちな人、有色人種などです。



Zoom疲れへの対策として、研究チームはビデオ会議を行わない日を設けたり、一部の会議では音声のみで行うように変更したりすることを挙げています。

なお、研究チームは「世界が新型コロナウイルスのパンデミックが起きた後の時代に移行したため、今後は仕事がリモートと対面のハイブリッドとなる可能性が高くなります。そして、Zoomによるさまざまな負担が不平等に発生することを考えると、心理的な負担を削減しながらビデオ会議のメリットを最大化することが重要となります」と論文を締めくくっています。