憧れのマイホームが欠陥住宅だったら?

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 マンションを購入する際の選択肢として、立地や広さ、価格はもちろんだが、売り主や施工会社のネームバリューを重視する人も多いだろう。だが、いくら大手企業が手掛けたマンションだからといって欠陥がないとは限らない。住宅ジャーナリストの榊淳司氏が、マンション購入に潜むリスクについて解説する。

【写真】杭打ち偽装で問題になった「傾斜マンション」

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 先日、某週刊誌が財閥系大手不動産会社が売り主となった都心のタワマンが、わりあい深刻な「欠陥住宅」であることを報じていた。じつは私もその記事にコメントを提供したので、取材を受けた段階からあらましを把握していた。

 普通に考えれば「え、本当に?」とつぶやいてしまうような事象である。何年もの間、新築マンションの供給戸数では1位を続けた財閥系大手の不動産会社が売り主で、施工は一部上場の名の知れたゼネコン、という取り合わせ。それが建築基準法を満たさない建材を使用したり、明らかな施工不良と断定できる状態のタワマンを建設し、販売していたのだ。

 そのマンションは建物が竣工してから約2年が経過しているので、すでに多くの人が住んでいる。

「上下左右から様々な生活音が漏れてくる」

 ある居住者は、そう訴えたという。記事によれば、売り主企業は施工不良を認めているという。買い戻しや慰謝料の支払い、補修の提案も行っているようだ。

 多くの人にとっての衝撃は、大手不動産会社が売り主となっているタワマンで、このように明らかな施工不良が露見したことだろう。

 私は首都圏や関西圏で販売される新築マンションの資産価値について、あれこれとモノをいうことを生業としている。時に一般消費者からマンション購入や売却についての相談を承る。

 よく聞かれることは、「どこの会社のマンションを買えば安心できますか?」といったことだ。はっきり言って、今回のような施工不良はどれほど名前が知られた一流企業でも起こり得る。また過去にも例がある。

記憶に新しい「傾斜マンション問題」

 例えば、三井不動産レジデンシャルが14年ほど前に分譲した「パークシティLaLa横浜」の事例がみなさんの記憶に残っているかもしれない。

 住み始めて何年も経ったある日、住棟の接合部で開放廊下の手すりが隣の棟とズレていたことに住民が気付く。調べてみると建物自体が僅かながら傾いていた。

 そのことを元の売り主企業に訴えたが、最初は「地震(東日本大震災)のせいでしょう」などと、のらりくらりとした対応。しかし、専門知識を持った住人の一人がマンションの建築図面と近隣の地質図を照合。支持杭が支持基盤に達していない可能性に気づいた。

 このエビデンスを突き付けられた売り主がボーリング調査を実施すると、確かに何本かの杭が支持基盤に届いていないことが判明。さらに調べていくと、杭工事を請け負っていた会社が工事記録を偽造していたことまで判明してしまった。

 結局、このマンションは全棟が建て替えになった。建て替えが完成したのは2020年の年末。じつに問題発覚から5年以上が経過していた。

売り主が一流企業なら補償もするが…

 今回のタワマンもそうだが、売り主企業は財閥系の名の知れた会社。結局、こういった欠陥住宅と言えるマンションの事例は、一流企業が売り主であっても起こり得るのだ。

 もちろん、高度な建築技術を要するタワマンでも条件は同じ。所詮は人間のやることであり、故意や過失に関わらず不具合は起こり得る。一流企業が売り主だから安心、ということにはならない。

 ただ、一流企業が売り主であるマンションを選ぶ理由はある。一流であればあるほど、彼らは自らの信用やブランド価値を尊重する。一旦自らの非を認めれば、しっかりと補償を行おうとする。

 今回のタワマンの事例でも、売り主企業は新築時の販売価格に1割を上乗せした金額での買い戻しを提案しているという。あるいは、補修工事の間の仮住まい費用も補償する方針であるという。こういったことは財務的なゆとりのある一流企業でなければできないことであろう。

「耐震偽装事件」は購入者が泣き寝入り

 2005年に発覚した「耐震偽装事件」を覚えておられる方も多いと思う。構造計算を行う一級建築士が、顧客であるマンションデベロッパーの歓心を買うために故意に建築コストが軽減できる耐震偽装を行った事件である。

 あの時の売り主企業は、業界でいえば中小クラス。事件発覚後にあえなく倒産してしまった。だから、その売り主のマンションを購入した人々は自力で建て直さざるを得なかったのだ。中には住宅ローンを二重で借り入れた方も多いと聞く。

 あの耐震偽装事件に比べれば今回のタワマンの欠陥発覚や横浜の杭未達の事象は、まだ買い手側に救いがある。割り増しで買い戻してもらえたり、仮住まい中の費用が補償されている。少なくとも、表面的な経済的損失がカバーされているのだ。

新築マンション購入は「ちょっとしたギャンブル」

 しかし、だからといって「売り主が大手だったからよかったね」と済ましていいものだろうか。夢をもってタワマンを購入し、そこに住んだらとんでもない欠陥住宅だったという悲劇を味わったわけだ。1割程度の割り増しでの買い戻しで、その不愉快さや絶望感は贖えるのだろうか。私は大いに疑問に思う。

 では、一般消費者として、こういう欠陥住宅を買わないためにはどうすればいいのか? 私は相談者に対しては、いつも次のように申し上げている。

「新築マンションを購入するということは、ちょっとしたギャンブルですよ。まず、施工不良である可能性があります。大手なら確率は低くなりますが、ゼロということはありません。どんな大手企業でも、過去に施工不良をやらかした実績があります。

 施工不良を避けたいのなら、新築ではなく築10年程度の中古にすればいいいでしょう。施工不良のマンションなら、ほぼ確実に建物の不具合が10年以内に表れます。築10年に満たないのに雨漏りや水漏れが発生していたり、騒音のトラブルが多発しているようなマンションは、ほぼ施工不良と考えていいでしょう」

 マンション購入というのは多くの人にとって一生に何度も経験しないことだ。これに慣れている人など、めったにいない。

「一流企業が売り主だから」とか「タワマンだから」絶対的に安心できるとは限らない。かといって、新築時に施工不良を見抜くのは、たとえ建築の専門家であっても容易いことではないのだ。