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トヨタとレクサス最上級車で採用

text:Kenji Momota(桃田健史)editor:Taro Ueno(上野太朗)

トヨタは2021年4月8日、新機能「アドバンスド・ドライブ」を搭載したレクサスLS 500hとトヨタの燃料電池車ミライを4月12日から全国で販売すると発表した。
 
具体的な機能について、トヨタは動画でいくつかの事例を紹介している。詳しくはトヨタのホームページをご覧いただくとして、本稿では概要として触れる。

【画像】新機能「アドバンスド・ドライブ」搭載【ミライ/LSを見る】 全199枚

例えば、同一車線を走行中に、隣の車線の大型トラックとの間隔が狭いとクルマが検知・判断すると、同一車線のなかで大型トラックから少し離れるように走行ラインを変える。


レクサスLS/トヨタ・ミライ    トヨタ

また、高速道路での合流地点で本線内に進入してくる車両がある場合、早めに減速して合流車両との車間距離を保つ。

車線変更や追い越しの場合、ドライバーがステアリングを保持した状態で車線変更先を確認してドライバーから承認を得ると、自動的に車線変更を始める。

その他、ドライバーが体調が悪くなり運転を続けることが難しいと、車内のドライバーモニタリングシステムを通じてクルマのシステムが判断すると、ハザードランプを点滅しながらクルマが自動で減速、また自動でステアリング操作もおこない路肩に一時停車する。

こうした先進技術は、ホンダやスバルでも登場しているが、いったいどれが1番優秀なのか?

なぜホンダより1つ下のレベル2?

今回の発表内容に関して、トヨタはオンライン会議システムを使い報道陣向けに「高度運転支援技術の説明会」をおこなった。

質疑応答の際、「あらためて確認だが……」として「これは(自動運転の)レベル2なのか? 」という質問があった。


ホンダ・レジェンド(自動運転レベル3技術搭載車)

これに対して、トヨタ側は「レベル2だ。われわれとしては、レベルにこだわることなく、お客さまの安心安全を第1に考えた『真の安全』を保つには、人とクルマの気持ちが通い合った仲間のような関係にあるべきだと考えている」として、これまでも推奨している「モビリティ・チーム・コンセプト」という考え方を強調した。
 
トヨタが「レベルにこだわらない」とし、また報道陣側が「なぜ、レベルにこだわらないのか? 」と疑問に感じる背景には、当然のことだが、ホンダが先に発表した世界初の自動運転レベル3の存在がある。

一般的には、レベルが上がれば、より高度な技術が必要になり、その技術を実現したメーカーの技術力や企画実行力が優れていると考えるのが普通だろう。

そのため、2020年(暦年)での世界自動車販売台数で世界一であり、また燃料電池車やコネクテッド技術など世界をリードしているトヨタがなぜ、このタイミングでも自動運転技術では、ホンダのレベルより1つ下のレベル2しか発売しないのかという疑問を抱いてしまう。

いったい、なぜなのか?

そろそろ社会全体が「変わる」とき?

最も大きな理由は、リアルワールドでの、ドライバーの行動や意識を徹底的に検証した結果として、トヨタが目指す方向性が定まってきたからだ。

そもそも、自動運転レベルという考え方は、アメリカの自動車技術会(SAE)、アメリカの運輸省高速道路交通局(NHTSA)、そしてドイツの国立自動車研究所(Bast)など、欧米主導で「自動運転の研究開発を目指すための指標」として、2010年代前半に設定されたものだ。


トヨタ・アドバンスド・ドライブのイメージ    トヨタ

それから数年間はSAE案とNHTSA案という2種類のレベル表示があったが、2016年にSAE案に統一された。

つまり、このレベルという考え方は、あくまでも開発者やユーザーが自動運転に対する考え方を整理するための手段の1つであり、今後レベルの区分などが変わる可能性は否定できない。

今回のトヨタ「アドバンスド・ドライブ」の発表や、先日のホンダ「ホンダ・センシング・エリート」の発表をみていると、「そろそろ自動運転や、高度運転支援システムについて、新しい指標について、社会全体で考えるべき時期ではないか? 」と感じる。

こうした感想や意見を持っているのは筆者だけではなく、実際に各方面と意見交換していると自動車業界関係者の中でも「(自動運転の議論は)そろそろ次のステップに……」という声は数多く聞く。

人とクルマの関係のこれから

今回のトヨタの発表では、トヨタの原点である織機の技術で、豊田佐吉氏が考案した豊田自働織機を紹介し、「働」という「にんべんのついた、自働化」という考え方をあらためて示した。

自働織機では、糸が切れば場合に自働に停止して、人が修繕してから、人が再び機械を作動させる。


日産スカイライン    日産

それまでは「いつ糸が切れるか心配」なので、織機の隣で人がいつも監視する必要があった。そうした人の負担を改善しているが、あくまでも人が判断して織機を使う。

むろん、現代社会においては、自働織機はより高度なシステムが採用され、完全自動化が進んでいるが、これをクルマに置き換えると、人としての「走るよろこび」、「操る楽しさ」として、完全自動化に向かうことに対して、トヨタは素直に疑問を持っているのだと思う。

こうした思いは、ホンダも、スバルも、日産も、その他の日系メーカーも同じであるはずだ。

人が所有する個人のクルマ、いわゆる「オーナーカー」の自動運転または、高度運転支援技術が目指す方向性は、「サービスカー」と呼ばれる公共交通機関として必要とされることとは異なるという考えが、今回のトヨタの発表を通じてあらためて分かったように思う。