医薬品産業は第14次五カ年計画の中で何度も取り上げられる産業だ。オリジナルでリーディングテクノロジーの研究開発としても、産業システム構築の新たな柱としても、医薬品産業は常に厚い期待を寄せられている。科技日報が伝えた。

この産業の「危険性」は誰もがよく知っている。巨額の投資や高いリスクといった単純な言葉では、オリジナル新薬をめぐる「九死に一生」の過酷さを言い表すことはできない。

中国科学院計算技術研究所哲源図霊ダーウィン実験室の趙宇(ジャオ・ユー)副室長はデータを用いて、「世界のデータ統計を見ると、新薬開発の成功率は従来の10%から現在の2-3%に下がった。この確率は『九死に一生』よりも低く、50件の開発のうち成功にこぎ着けるのは1件だけということになる」と述べた。

こうした状況の中、医薬品業界はリスクの低いイノベーションの後追いにより傾くようになった。たとえば、PD1(免疫チェックポイント阻害薬)関連の研究プロジェクトは、2018年のノーベル賞受賞後にさらに頻繁に開発されるようになった。CAR-T療法は米国のカーター元大統領の黒色腫の治療に成功したことで評判になり、製薬会社が次々とこの分野に乗り出すようになった。

研究開発資源がイノベーションの後追いに一気に押し寄せることで、中国の医薬品分野では「供給側」の問題が突出することになった。ハイレベルの良薬や新薬は著しく不足し、低レベルの模倣薬が過剰に出回っている。

医薬品産業を駆動して真のイノベーションの道を主体的に歩むようにさせるには、科学研究機関、製薬会社が新薬開発プロセスにおける「弱点」を解決して、イノベーションの主体がオリジナルイノベーションのもつ「うまみ」を十分に味わえるようにしなければならない。

効果的な臨床試験に失敗することが新薬開発の失敗の主な原因であり、業界ではその負のイメージから「死の谷」と呼ばれている。「死の谷」に足を踏み入れて直面する最大の困難は、理論的には明らかに効果的にターゲットをつかまえているのに、なぜか人体内では効果がみられないということだ。

現在行われている臨床試験段階のプラン設計、対象者の選択には、無計画性という問題がある。中国科学院計算技術研究所西部高等技術研究院の張春明(ジャン・チュンミン)副院長は、「実際、既存の発表された大量の論文の中にこうした問題への答えが含まれているが、分量がものすごく多く、人の力ですべて分析するのは難しい」と述べた。

逆に言えば、すべての文献を読んで理解すれば、答えは見つかるということだ。しかし人の力だけではなかなか成し遂げられない。

趙氏は、「去年1年間だけでも、検索でヒットする新型コロナウイルス関連の論文は0本から11万本に増えた。これだけのボリュームの内容を把握しようとしても、人の力では到底やり通せない」と述べた。

しかし、スーパーコンピューターの人工知能(AI)を利用すれば可能になる。張氏は、「中国科学院高性能コンピューター研究センターにある中国製スパコンを利用して、研究開発チームは世界で発表された生命科学のすべての論文からデータを抽出し、これを知識に変えた。全データとAIのアルゴリムの生成モデルに基づいて、医薬品のデジタル研究開発プラットフォームを構築した」と説明した。このプラットフォームはどのような働きをするのだろうか。たとえば、患者の遺伝子発現データなどを分析して、患者一人一人の遺伝子を医薬品デジタルプラットフォームで細胞内のエピソードと関連づけ、シグナルの伝達経路の活性化をシミュレーションし、その患者の体内のシグナル伝達が理論通りに活性化されるかどうかを前もって判断でき、さらには臨床試験薬の特定の患者の体内における作用や効果を前もって予測することができる。