9節を終えたJリーグ。順位表を見て一番驚くのは、鹿島アントラーズの順位だ。筆者がシーズン前、ある媒体のアンケートに答えた予想順位は2位だった。川崎フロンターレにはそれなりに差をつけられるだろうが、2位の座は死守するのではないか。メンバーの顔ぶれを眺めれば、最悪でも昨季(5位)以上の成績は残すのではないかと予想した。

 昨季は開幕4連敗。7節を終えた段階で、清水エスパルスとともに最下位を彷徨っていた。そこから最終的に5位まで巻き返したわけだ。スタートさえスムーズに切っていれば、単独2位はあったのではないか。そう考えることに無理はないと考え、今季の予想に及んだのだが、成績はこれまで2勝1分4敗の14位。2年連続スタートダッシュに失敗した格好だ。最終的にどこまで順位を挽回するか。なんとも言えないところだが、筆者の期待値が、当初より大きく下がっていることは事実だ。

 なにより肝心のサッカーがよくないのだ。古いブラジル式サッカーを見せられている感覚に陥る。川崎とは正反対のサッカーだ。川崎が採用する4-3-3とは大きくかけ離れた概念の4バック。欧州では滅多に拝むことができない4バックと言えば、おわかりいただけるだろう。つい10年ほど前まで、ブラジルが定番にしていた中盤ボックス型の4-4-2。4列表記にすると4-2-2-2になる。

 2002年から4年間、日本代表の監督を務めたジーコが好んで使った布陣だ。加茂ジャパン(1994〜97年)も、これを用いて戦っている。

 サイドアタッカーの枚数が両サイド各1人の4バック。各2人揃っている4-3-3、4-2-3-1、中盤フラット型4-4-2との違いだ。近いのはサイドアタッカーが両サイド各1.5人の中盤ダイヤモンド型4-4-2。4列表記にすれば4-3-1-2。あるいは4-1-3-2になるが、この布陣のシェア率も、4-2-2-2同様、世界的に高くない。

 高い位置からプレスが掛かりにくいからだ。高い位置で構えるサイドアタッカーがいないため、相手のサイドバック(SB)に効率よくプレッシャーを掛けることができにくい。相手にボールを奪われた瞬間、即座に奪い返す態勢にないのだ。

 具体的には4-2-「2」-2の「2」がボールを奪われたその足で、相手SBを追いかける態勢を取ることができない。「2」で先発を飾ることが最も多い土居聖真(左)、ファン・アラーノ(右)と、たとえば、川崎の左ウイング、三笘薫との一番の違いだ。ドリブルを仕掛けて奪われるや、その流れのまま自然に相手を追いかける三笘のような真似ができないのだ。

 サイドアタッカーというより、攻撃的MF。真ん中でプレーするゲームメーカーの色彩が強い選手。三笘と言うより、イメージは4-3-3のインサイドハーフに近い。だとすると、その後ろで構える2人のボランチが重たく感じる。さらにその前で構える2トップも同様に重たく感じる。一方、三笘のようなウイングがいないので、サイドをカバーするのは両サイドともSB1人になる。永戸勝也(左SB)、小泉慶(右SB)に掛かる負担は大きくなる。彼らは、サイドで相手に対し数的不利な状況に陥るので、攻撃に参加する頻度が減る。

 鹿島はサイド攻撃を効かせにくい状況にある。その流れでボールを奪われるので、サイドの守備も弱くなる。サイドを制するものは試合を制するとの格言から、外れたサッカーに陥っている。

 両ウイングがタッチライン際に張って構え、その内側をSBが攻め上がっていく横浜F・マリノスや、川崎が好むサイドの今日的な関係を、絶対に拝めそうもないサッカーだ。

 一見、攻撃的ではある。だが、高い位置から網は掛かりにくい。プレスが効きにくいので1回攻めたら1回守ることになる。その結果、ボールを奪う位置は必然的に低くなる。つまり毎度、ビルドアップを強いられることになる。だが、サイドを使いにくいため、ボールは真ん中をせり上がっていくことになる。周囲からプレッシャーを受けやすい真ん中を、だ。