今季はキャプテンも務める篠田大輝。決定力のあるサイドバックとして躍動できるか。写真:松尾祐希

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 昌平の新キャプテンとなった篠田大輝(3年)と言えば、決定力を武器に下級生時から名を馳せてきたアタッカーだ。昨季までは須藤直輝(現・鹿島)らを擁するチームにおいて、攻撃の切り札として活躍してきた。

 1年時の高校サッカー選手権では國學院久我山との3回戦(1○0)でアディショナルタイムに決勝弾を決め、昨冬の同大会では高川学園との1回戦(2△2/8PK7)で、ラストプレーで同点に追いつく一撃をヘディングでねじ込んだ。途中出場ながら残したインパクトは強烈。強靭なフィジカルと両足から繰り出すパワフルなショットも大きな可能性を感じさせた。

 しかし、迎えた新シーズン。昨季に続いて背番号9を託された一方で、自身の住処を移すことを余儀なくされた。新たに与えられたポジションは左SB。“攻撃的なポジション”にこだわりを持っていた篠田大からすれば、簡単に受け入れられる出来事ではない。チームメイトも含め、誰もが驚くSBでの起用だった。

「コンバートされたのは新チームが立ち上がって間もない頃。最初に知らされたのは全体ミーティングの際で、(ポジションが知らされる)ボードを見たら自分の名前が左SBに置かれていた。最初は『えっ!?』て思い、凹んだのを覚えています」

 淡々と当時の出来事を振り返った篠田大。今も少なからず、攻撃的なポジションに想いを残す。しかし、自分の口でしっかりと当時の状況を説明できるのは、新たなポジションで手応えを感じているからに他ならない。今季の初戦となった4月10日のプリンスリーグ関東・2節の東京Vユース戦では、自信に満ちたプレーでチームの勝利に貢献した。

 不慣れなポジションでのプレーはまだ片手で数えるほど。しかし、東京V戦では破壊力のある仕掛けで何度も攻撃に参加し、高いポジションを取る姿はウイングと見間違えるほどだった。

「自分がパスを受けたら、相手は遅れた状態でケアに来る。あとは自分の間合いでかわせばチャンスになるので楽しい」とは篠田大の言葉。昨季まで最前線で発揮していた攻撃センスはポジションが変わっても健在で、37分には左サイドを打開してチャンスを生み出す。「昌平入学後に最も成長したのはドリブル」(篠田大)。本人が自信を持つ形からサイドを抉り、ゴール前に走り込んだ実弟・翼(2年)の先制弾をお膳立て。また、守備でもフィジカルの強さやハードワークを見せる。相手のクロスに対して身体を投げ出して防いだのは、一度や二度ではない。2-0で初陣を飾った昌平において、攻守で“左SB・篠田大”が今季のストロングポイントになる可能性を示した。
 
 篠田大の左SBの起用について、チームメイトも手応えを口にする。GK西村遥己(3年)は言う。

「大輝が最終ラインにいることで余裕ができるし、安心感がある。シュートが打てる選手が左SBにいると怖い。9番を付けているので左SBのポジションで点取り屋を続けてほしい」

 では何故、藤島崇之監督は篠田大を配置換えしたのか。その理由をこう明かす。

「推進力がある選手。アタッカーで昨季までやっていたけど、(高校卒業後を含めて)将来的に生きるポジションや良さを生かせる場所がどこかを考えた時にSBだと感じた。両足で蹴れる選手なので、そこもプラスに働くと感じている」

 元々、藤島監督は昨季のシーズン前にも篠田大をSBに置くプランを模索。最終ラインにもタレントが揃っていた影響でアタッカーでの起用を継続させたが、プロを目指すのであれば適正ポジションはSBだと考えていた。その中で今季は前線のバランスや最終ラインのタレント性を踏まえた上でコンバート。その決断が篠田大の可能性を引き出すことになった。

 思い返せば、内田篤人も高校3年次にサイドハーフからSBにコンバートされ、日本代表やヨーロッパの舞台で活躍した。内田と同じように、高校ラストイヤーで守備面やポジショニングを学んでいけば、高卒でのプロ入りも見えてくる。今からでも遅くはない。新たなチャレンジは始まったばかりだ。

取材・文●松尾祐希(フリーライター)