大企業勤務「そんなに給料もらってないよ」の謙遜は本当か?

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中小企業と大企業、働くならどちらか。そんな選択肢があったなら「給料がいいから大企業」と答える人も多いでしょう。「大企業=給料もいい」という世間一般的なイメージは本当か、考えていきます。

大企業と中小企業…国際的に賃金格差が大きい日本

2020年4月1日から大企業で施工された同一労働同一賃金。今年の4月1日からは、中小企業においても適用されるようになりました。

同一労働同一賃金、厚生労働省では以下のように説明しています。

同一労働同一賃金の導入は、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者) と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。

同一企業内における正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消の取組を通じて、どのような雇用形態を選択しても納得が得られる処遇を受けられ、多様な働き方を自由に選択できるようにします。

出所:厚生労働省ホームページより

日本には現在、非正規雇用者は現在、2200万人弱いるといわれています。総務省『労働力調査』によると、「自分の都合のいい時に働けるから」を理由に、積極的に非正社員を選んでいます。一方で「家計の補助、学費を得たいから」と、非正社員になっている人が20%弱います。このような人にとって、同一労働同一賃金は、正社員と非正社員との格差是正につながると期待されています。

正社員と非正社員との格差のほかにも、男性と女性の格差、地域間の格差など、働いていると様々なところで格差を感じるものです。その一つが、企業規模による賃金格差です。

大企業勤務、給料も当然…(※画像はイメージです/PIXTA)

日本は世界的にみても、企業規模による賃金格差が大きい国になります。労働政策研究・研修機構『データブック国際労働比較2019』によると、大企業の賃金を100としたとき、中小企業の賃金は以下の通り。

【企業規模による賃金差異】

イギリス 104.2
デンマーク 100.4
フィンランド 100.3
オランダ 96.2
イタリア 88.5
ドイツ 68.7
日本 67.6
アメリカ 61.8
ノルウェー 60.7

「大企業勤務=給料が高い」と言えるのか?

――給料がいいから、できるだけ大きな会社では働きたい

――安定しているし、待遇もいいから、できるだけ大きな会社がいい

そんな大企業に対する信頼は、日本においてまだまだ強いように感じます。

厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』によると、所定内給与*(男女計、学歴計)の平均は30万7700円で、「55〜59歳」で36万8600円、概算年収では「50〜54歳」で590万4400円とピークを迎えます。

*きまって支給する給与のうち所定外労働給与以外のもの。 「所定外給与」(超過労働給与)は、所定の労働時間を超える労働に対して支給される給与や、休日労働、深夜労働に対して支給される給与のことであり、時間外手当、早朝出勤手当、休日出勤手当、深夜手当等

【年齢階級別 平均所定外給与額】〜19歳 17万9600円
20〜24歳  21万2100円
25〜29歳 24万4600円
30〜34歳 27万4400円
35〜39歳 30万5200円
40〜44歳 32万9800円
45〜49歳 34万7400円
50〜54歳 36万8000円
55〜59歳 36万8600円
60〜64歳 28万9300円
65〜69歳 25万7400円
70歳〜 24万7900円

事業規模別にみていきましょう。従業員1000人以上企業の平均所定内給与は33万8400円。100〜999人企業で30万2600円、10〜99人企業で27万8000円。概算年収では、順に562万4000円、477万5300円、410万9700円と、企業規模の差で150万円ほどの差が生じています。

――やはり、中小企業よりも大企業か……

このように思った人も多いでしょうが、もう少し深堀していくと、違う印象を受けるかもしれません。

年齢階級ごとに所定内給与額の分布を見ていきます。第1・十分位数(データを小さい順に並べた際、下位10%)では、1000人以上企業と10〜99人企業で、最も差が大きくなるのは「25〜29歳」で2万6100円。ほかの年代を見ても、平均値ほどの差は見られません(図表1)

[図表1]第1・四分位数で比較する、年齢階級別大企業と中企業の賃金カーブ 出所:厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』より作成

次に第1・四分位数(データを小さい順に並べた際、下位25%)では、1000人以上企業と10〜99人企業で最も差が大きくなるのは、「40〜44歳」と「55〜59歳」で3万2500円。下位10%のみを見た場合よりは差が大きくなっていますが、平均値ほどの差は見られません(図表2)

[図表2]第1・四分位数で比較する、大企業と中小企業の賃金カーブ 出所:厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』より作成

中央値ではどうでしょうか。1000人以上企業と10〜99人企業で最も差が大きくなるのは、「50〜54歳」で8万8300円。下位25%と比較すると差は大きくなってきました(図表3)

[図表3]中央値で比較する、大企業と中小企業の賃金カーブ 出所:厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』より作成

さらに第3・四分位数(上位25%)で、最も差が大きいのが「50〜54歳」で16万2400円、第9・十分位数(上位10%)で最も差が大きいのも「50〜54歳」で23万7200円にもなります(図表4、5)

[図表4]第3・四分位数で比較する、大企業と中小企業の賃金カーブ

[図表5]第9・十分位数で比較する、大企業と中小企業の賃金カーブ 出所:厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』より作成

このように見ていくと、大企業勤務の一部の高給取りが、平均差を広げている、つまり大企業勤務だからといって、たくさんの給与をもらっているとはいえないということです。同一規模内の中で大きな格差が生まれているのです。

――あいつ、大きな会社で働いていて羨ましい

そんな羨望の眼差しを向けていた相手が、実は思ったほど給料をもらっていない……そんなことも珍しくないかもしれません。