【高安 雄一】韓国が、日本より先に「コロナ不況から回復」していた…! 日韓に差がついた「意外な理由」

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日本でも韓国でも、コロナウィルス新規感染者は、対策を強めると減少傾向となるものの、対策を弱めると増加傾向になる状態であり、収束にはまだ時間がかかりそうな状況である。

そのようななか、日韓とも、景気については昨年の前半には大きく後退したものの、その後は回復に転じている。そしてこの日韓に共通する動きについて、特に韓国での景気回復が顕著である。

今回は景気の動きを敏感にキャッチすることができる指標である、鉱工業生産指数と景気動向指数から、コロナ禍の中でも着実に回復する景気の様子を確認したい。

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重要な指数が変化している…!

鉱工業生産指数は世間にはその存在があまり知られていないが、景気をウオッチする専門家の間では最重要な指標のひとつであり、これは日本でも韓国でも同じである。

簡単に説明するならば、製造業全体でどの程度の量の製品が生産されたかについて把握できる指標である。日本も韓国も製造業がGDPに占める割合はそれほど大きいわけではないが、サービス業と比べ景気の動きに敏感であるとともに、関連産業が広く、結果的に産業全体に影響が波及することから、この指標は重要なのである。

韓国の鉱工業生産指数はコロナ禍の前は緩やかな増加傾向にあり、2015年を100とした場合の指数は、コロナ禍直前の2019年12月の値は111.3であった(季節調整値。以下同じ)。しかしコロナ禍の下で鉱工業生産指数は急速に低下し、2020年5月には95.6にまで低下し生産活動の萎縮が鮮明となった。

ただし2020年5月を底として、鉱工業生産指数は増加に転じ、コロナウィルス新規感染者が拡大するなど第3波が韓国を襲った2020年11月以降においても増加の勢いが止まることはなかった。

そして、先月末に公表された2021年2月の鉱工業生産指数は115.7と過去最高となった。つまり韓国は何度もコロナウィルス感染拡大の波に襲われているが、それにもかかわらず生産活動の回復、ひいては景気回復は止まることなく堅調な動きを示したことを意味する。

日本の鉱工業生産指数の動きはどうであろうか。日本の指数はコロナ禍直前の2019年12月の数値が97.9であったが、韓国同様2020年5月には78.7にまで急落した。しかしその後はおおむね一貫して回復したのは韓国と同様であり、2021年2月には95.7にまで高まった。

しかし日韓の違いは、韓国がコロナ禍直前の数値が111.3、直近の数値は115.7であり、直近の数値が4.0%高水準である。つまり、現在の水準は、コロナ禍以前から完全に回復したといえる状況である。一方、日本はコロナ禍直前の数値と比較して直近の数値は2.2%低く、完全には回復に至っていない。

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景気動向指数でも…

次に景気動向指数を見てみよう。景気動向指数とは、景気の動きに敏感な複数の指標を合成して作成するが、景気の動きと一致する一致指数、景気の動きに数カ月先に動く先行指数、景気の動きより数カ月遅れて動く遅行指数がある。今回は一致指数の動きを確認する。

一致指数の動きでであるが、韓国ではコロナ禍直前の2019年12月の数値が2015年を100とした場合113.4であったが、コロナウィルス感染拡大が始まるとともに低下が始まり、鉱工業生産指数と同様2020年5月には最低値となった。しかし、その後は回復に転じ、直近の数値である2021年2月には114.3と、コロナ禍以前の水準を回復した。

日本の景気動向指数の動きはどうであろうか。景気動向指数を見ると、コロナ禍以前の2019年12月には94.9であったが、韓国同様、コロナウィルス感染拡大により低下し2020年5月には73.4にまで低下した。その後は上昇に転じ、最新値の2020年1月には90.3にまで戻したが、コロナ禍直前の数値にまでは戻っていない点は鉱工業生産指数と同様である。

なぜ差が出たのか

日韓の景気を鉱工業生産指数と景気動向指数から見てきた。この結果から、韓国の景気はコロナ禍以前の水準に戻ったが、日本の景気はまだコロナ禍以前には戻っていないといえそうである。

この日韓の違いを説明するキーワードは半導体である。

韓国は日本と比較して経済の半導体への依存度が高く、これまでも半導体の動向が景気を左右してきた。コロナ禍ではテレワークの普及が加速することなどにより半導体需要が急増した。

半導体産業はコロナ禍の下で製造業の勝ち組ともいえるが、韓国は半導体好調の恩恵を最大限享受することにより製造業全体が好調となっている。ちなみに韓国の鉱工業生産指数における半導体の生産指数は、コロナ禍前の2019年12月の216.8から、2021年2月の282.1へ30.1%増となっており、大きく伸びている。

半導体の需要は波が大きく、世界的に半導体需要が不振となれば、半導体への依存度が高い韓国経済は低迷することとなる。よって景気循環の安定といった面からは、半導体への依存構造は必ずしも良いことではない。

しかし、コロナ禍における半導体特需により韓国経済は救われている。半導体特需の恩恵を十分受けることができていない日本の景気が、コロナ禍前の水準に戻るまでにはもう少し時間を要すことになるだろう。